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世界の古本街見て歩き6 カンボジア・プノンペン古書街とシェムリアップ古書街

世界の古本街見て歩き6 カンボジア・プノンペン古書街とシェムリアップ古書街

能勢 仁(ノセ事務所)
 第二次世界大戦後、アジアでは戦争は終わっていなかった。むしろ被植民地国家のベトナム、カンボジア、ラオス三国は国際戦、内戦で国内は滅茶滅茶になった。ベトナムはアメリカ・ソ連との戦い、カンボジアはポルポト政権による超悪政、ラオスはベトナム戦のとばっちりで国内に200万個以上の地雷が埋められ、今も恐怖に戦いている。

 中でもカンボジアは1975年~79年は暗黒世界であった。ポルポト書記長がクメール共和国を倒し、超悪政を敷いた。教師、医師、大学教授、公務員、資本家、経営者、芸術家、宗教関係者、弁護士、経理士、エンジニア等、良識ある国民の殆どが捉えられ、強制収容所に送られた。200万人が虐殺されたと言われる。筆者がプノンペンを訪れた時の、通訳(当時中学三年生だった)さんが生々しく語ってくれた。彼の父親は小学校校長で逮捕され、面会は許されたという。父親が玉子を食べたいというので、母と持参した。彼の父親はその翌日に亡くなったと語ってくれた。従って、現在のカンボジアには知的DNAはないと言う。

 カンボジアといえばアンコールワットである。筆者は当然、国営だと勝手に思っていたが、そうではなく、一私企業の持ち物であった。そのために、入場者数や経営状態は一切発表されていない。資本家のやり放題だという。最近は国を挙げて観光客誘致に力を入れている場所がある。
 それはシェムリアップにあるトンレ・サップ湖である。プノンペンから北に100kmにある。この湖には水上生活者がいて、水上農園を営んでいて、この人達の生活が観光源になっている。筆者もトンレ・サップに行ったが、SCが湖上にあったのには驚いた。トンレ・サップ湖の玄関はシェムリアップである。交際空港もあり、日本からも就航している。

【プノンペンの古書店】

 カンボジアはフランスの植民地であった。そのフランス文化が今も色濃く残っている。プノンペンの中心地に王宮がある。王宮に通じる道が240通りと呼ばれている。別名フランス通りと言われ、外国人向けの瀟洒なバーやレストラン、エスニック、雑貨店が軒を連ねている。フランス映画館もあった。フランス文化一杯の通りである。フランス人も多い。

<ボストンブックス>

 この通りにボストンブックスはある。フランス文化一色の古書店である。店内はその作りの重厚さ、分類の多岐、陳列部屋の多さ、アカデミックさに驚くばかりである。プノンペンにフランスが生きている感じがした。コーヒーコーナーもあり、広場にレストスペースがあった。若い人達の憩いの場である。それでいて、入りずらい店ではない。フランス通り、周辺が庶民的だからである。

〇ボストンブックス外観


〇ボストンブックス店内1


〇ボストンブックス店内2

<D‘s Books>


 フランス通りにあるD’s書店はなかなかの店である。間口は狭いが奥行の深い古書店である。古書満載なので、店内に居て楽しい。新しい本は表紙陳列、話題書は平台販売と、新刊書店、古書店折衷の商売をしていた。

〇D’s Books外観


〇D’s BOOKS店内1


〇D’s BOOK店内2

<BANTERY SREY BOOK SHOP>

 この書店も珍しい。実用書とこどもの本に特化した店である。建物は立派だが、店内はシンプルである。売り場の店奥に祭壇があったことも珍しい。書棚は12段と高い。上の方の本はどう取るのだろうか?店中央にレジ机、女性一人が店番をしていた。仲卸をしている風な書店である。

〇BANTERY SREY BOOK SHOP店内1


〇BANTERY SREY BOOK SHOP店内2

<フランス書専門店>

 フランス通りらしく、フランス書専門の立派な書店があった。店内はフランス人ばかりであった。男女同数の店内風景である。文芸書、芸術書、本国のベストセラーも並んでいた。
プノンペンにフランス文化ありを感じた。

〇フランス書店店内1


〇フランス書店店内2

<アンコールワット書店>

 アンコールワット入口近くに専門店があった。土産物販売が主であったが、出版物にも配慮が深かった。若いお嬢さんが、愛想よく接客してくれた。日本人にはカンボジア人は好感である。日本に行きたいということからもわかる。絵葉書は勿論であるが、アンコールワットの写真集、画集、文学の多さはこの店ならではである。

〇アンコールワット書店店内1


〇アンコールワット書店店内2

【シェムリアップの古書店】

 最近ではシェムリアップ経由でアンコールワット観光をする多くなったとJTBが言っていた。直行便が多いことと、航空券が買いやすいだからだそうである。

<ボストン・ブックス>

 街の中心地のショッピングセンターの一角にボストンブックスがあった。プノンペンの素晴らしい店のイメージは微塵もなかった。純然たる古書店であるが、店の中で文化性を感ずることは無かった。買取本が多すぎるのか、店内は未開梱の段ボールのオンパレードであった。従業員も少なく、商売の意欲が感じられないことは残念であった。

〇ボストンブックス(シェムリアップ店)1


〇ボストンブックス(シェムリアップ店)2

<USED BOOKS>

 店名を探そうと努力したが発見できなかった。よく整理された古書店で利用者が多かった。陳列、分類もよく、親しみやすい店であった。若い男性が経営者なのか、しきりとお客様と会話していた。店全体のカラートーンがブルーに統一されていることも、店の活気によい影響がありそうである。

〇USED BOOKS(店名不明)1


〇USED BOOKS(店名不明)2

<シェムリアップ・ブックセンター>

〇シェムリアップ・ブックセンター1


〇シェムリアップ・ブックセンター2


〇シェムリアップ・ブックセンター3

 この店は街の中心地にある。観光地なので、レストラン、土産店が多い。そこに立地する書店であるから、観光客を意識した品揃えかなと思いきや、そうではなかった。この店は間口六間×奥行十間の生活館であった。本三分の一、文具三分の一、雑貨三分の一の店である。店頭にはペーパーバックスの古本が並べられていた。参考書、問題集の陳列、販売が面白い。ビニール袋に入れて、例えば英数理をセットにして売っていた。文芸書も売れるが学参が良く売れるといっていた。観光客の店ではなく、地元密着の文化センターである。
フランス文化の名残か。

能勢 仁
1933年(昭和8年)千葉市生まれ。慶應義塾大学文学部卒業、高校教師を経て、多田屋常務取締役、JBB取締役(平安堂FC部門)、アスキー取締役、太洋社勤務。1996年ノセ事務所設立。主な著書に「明治・大正・昭和の出版が歩んだ道」(出版メディアパル刊)、「本のことがわかる本・1~3巻」(ミネルヴァ書房)、「商人の機微」(中央経済社)など30数点。


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