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世界の古本街見て歩き7 ギリシャの古書街

世界の古本街見て歩き7  ギリシャの古書街

能勢 仁(ノセ事務所)
 文明発祥の地と言われるギリシャには見るものが多い。中でも首都アテネは古い文明と 近代が共存しているので、興味が湧く。観光には事欠かなかった。国際的には名の通った 国であるが、政治、経済、産業、科学で話題になることは少ない。
 筆者は日本書店組合連合会の勉強会に参加して現地に行った。アテネには古い書店、モダ ンな書店、個性的な書店とヴァラエティに富んだ書店の多い街であった。
何といってもメインストリートに真ん中にアテネ大学、右隣りが学士院、左となりに国会 図書館の堂々たる建物が並んでいる。学士院の筋向いにはギリシャ銀行があり、国会図書館 の側面にはオペラ座がある。ギリシャの政治、経済、文化、学術が集まった感じである。
書店も新刊書店、古書店、大学指定教科書店と、日本では見たことのない書店街であった。

 世界に誇る神田神保町には靖国通りとすずらん通りに日本の書店街がある。
 ところが、アテネには平行して三本目の書店街があった。メインは大学通りである。
 第二の通りは、学生が多く下宿している大学裏通りである。裏といっても、立派にすずら ん通りの役割を果たしている。学生は本をよく買うが、よく売ることもする。その受け皿が この大学裏通り書店街である。

 正式名称は一本目の本通りはベニセロウ大通りというが、アテネ大学があることから一般にバネピスティミウ (大学の意) 通りの名称で呼ばれている。二本目の大学裏通りはアカデミアス通りといい、三本目はソロノス通りと呼ばれている。ソロノス通りは出版社 経営の書店である。日本では出版社経営の書店は極めて少ない。オーム社が神田と大阪にある位である。ソロノス通りの書店は大学使用の教科書、参考書を主体に扱っている。直営 販売店である。その書店の前は営業車のオンパレードである。大学納品の仕事で忙しいので ある。店頭のウインドウには、その出版社発行の出版物が展示されている。ウインドウを 覗くだけで法律専門書店、経済、文学、哲学、芸術、言語・・等と分野がわかる。

〇ソロノス通りの店

 上記三本の書店通りは、アテネの中心地シンタグマ広場(憲法広場)から、北の繁華街 オモニア広場(調和の広場) に到る約1kmの通りである。新刊書店、古書店の集積度は 神保町よりもあるのではないかと思う。パリのカルチェラタンの周辺も似ていたなあ!

〇パパソタリオ書店 店内の様子1

 
〇パパソタリオ書店 店内の様子2

 古書店カコイリダースは新刊一番店のエレフセロダキス本店と地域二番店パパソタリオ 書店の間にある。メインの大学通りにあるからわかり易い。店の看板から1932年創業(昭 和7年)というから老舗である。一階・地階の売場で、一階は文芸書、ペーパーバックス 地階は芸術書、専門書売場であった。従業員は少ない。ベトナム・ホーチミン市のスアントゥ書店では5mに一人の女性店員がいる店とは比較にならない。

〇カコイリダース書店  外観

 
〇カコイリダース書店  店内の様子

 
〇カコイリダース書店 店内の様子

 
 アカディミアス通りに大学の使用済み教科書を専門に売っている書店もあった。学生街の中の書店なので、一般客を見ることは少なかった。
 教科書古書店のこの店の価格は統一的であった。最大50%ディスカウントで、多くは30% オフであった。ここで思いだすのが、ロスアンゼルスのUCLAの大学生協書籍売場である。UCLCはアメリカ10大学に入るといわれる名門校である。生協・書籍売場の充実度は高い。9月新学期前の教科書売場は活気に満ちている。新本とユーズド教科書の売場は別である。使用済み教科書の価格設定が面白い。書き込み、アンダーライン、汚損度、破れ等によって価格が異なっていた。最大80%オフである。未使用? 新本に近い教科書は20%オフであった。10%刻みの細かい値付けに感心したものだった。

 大学裏通りにザムボス書店、アンディ書店、エスティア書店など古書店があった。中型書 店である。法律、経済、哲学、詩、建築、文学の古書が多かった。芸術、音楽に力を入れて いる書店もあった。

 ギリシャの書店で感じたことであるが、女性、こどもの数が少ないことであった。小生の訪問が平日、日中のこともあるかもしれないが、女性の就業率の高さにも拠るのであろう。 書店にはコミックは並んでいない。こどもの少ない原因の一つであろう。総じてギリシャの書店では理工系の本の陳列が少ない。観光産業が主で 他の主要産業が少ないためであろうか。新刊書店には、こどもの本コーナーは必ずあるが、コミックはない。一番店の700坪あるエレフセロダキス本店ですら、コミックは12段しか置いていない。僅か1間幅の陳列であった。

【象徴的書店(エレフセロダキス)】

 筆者が世界700店の書店を訪問しているが、ベストスリーを挙げるとすれば、ロンドン・ウォーターストーンズ・ピカデリー店、東京・紀伊國屋書店本店、それとアテネ・エレフセ ロダキス本店である。紹介してみよう。

〇エレフセロダキス本店 店内の様子1


〇エレフセロダキス本店 店内の様子2


 アテネ大学斜め前にある、九階建て、約700坪売場、エレベータ3基、店頭従業員約60 名の書店である。一階が詩集フロアであることは、如何にもギリシャらしい。しかし 古書店ではない。書店街の核の店として、多くの読者をこの通りに呼んでいる。

【フロアガイド】
 1階 新刊、ベストセラー、詩学、伝記書
 2階 CD,SF,現代文学、大衆文学、アート、写真集、グラフィックコミック12段 辞書、参考書
 3階 実用書、婦人実用書に力点
 4階 こどもの本売り場、遊戯? 広場あり、滑り台もある
 5階 理工書、専門書
 6階 社会科学、人文科学書
 7階 喫茶室 デラックスな椅子80席 利用者多し
 8階 地図、ガイドブック 全世界対応
 9階 管理事務室

〇エレフセロダキス本店 4階の様子

 
〇エレフセロダキス本店 4階こどもの本売場の様子


 【アテネの書店の特徴】
  1. 二階を使用している書店が多い
  2. 喫茶を経営している書店が多い
  3. レジキャッシャーは座って応対する店が多い
  4. インフォメーションコーナーは各店とも充実している
  5. アテネの書店にはコミックはない

以上

 
能勢 仁
1933年(昭和8年)千葉市生まれ。慶應義塾大学文学部卒業、高校教師を経て、多田屋常務取締役、JBB取締役(平安堂FC部門)、アスキー取締役、太洋社勤務。1996年ノセ事務所設立。主な著書に「明治・大正・昭和の出版が歩んだ道」(出版メディアパル刊)、「本のことがわかる本・1~3巻」(ミネルヴァ書房)、「商人の機微」(中央経済社)など30数点。

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