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世田谷文学館企画展「やなせたかし展 人生はよろこばせごっこ」2026年6月30日(火)~9月6日(日)

世田谷文学館企画展「やなせたかし展 人生はよろこばせごっこ」
2026年6月30日(火)~9月6日(日)

世田谷文学館 宮崎 京子
 やなせたかし(1919-2013)のさまざまな創作や、多彩な仕事を一覧する初の大規模巡回展です。漫画家、詩人、絵本作家、イラストレーター、デザイナー、編集者など多彩な活動を繰り広げたやなせは、極上のエンターテイナーでもあります。彼は「人を喜ばせること」を、人生最大の喜びとしていました。
 苛酷な戦争体験、家族との別れ、様々な人との出会いに揉まれ、「なんのために生まれて、なにをして生きるのか」を自分に問い続けたやなせが辿り着いたのは、かっこ悪くても、本当に困っている人に一片のパンを、「あんぱん」を与えられるヒーロー像です。
 本展は、2026年に香美市立やなせたかし記念館アンパンマンミュージアムが30周年を迎えることを記念し、原画約200点を中心に「やなせたかし大解剖」「漫画」「詩」「絵本/やなせメルヘン」「アンパンマン」のテーマで作品を紐解きます。

 展覧会は昨年から全国巡回してきましたが、当館は企画当初から携わり、展示構成を担当しました。原画のほか、原稿、自筆資料、複製原画、愛用品、図書・雑誌を含めた総数約400点の作品・資料を展示しています。展示構成に合わせて設計した展示空間も、東京会場ならではの見どころです。各章ごとに、がらりとイメージの変わる空間を体験いただき、やなせたかしの作品世界を味わっていただければと思います。

 第一章「やなせたかし大解剖」、第二章「漫画 人とのつながり」では、作家の人生を俯瞰し、「おとうとものがたり」(1977年)をはじめとする原画や関連資料をご覧いただきます。初期、戦後の高知新聞社時代のコマ漫画、ニッポンビール(現サッポロビール)の広告漫画「ビールの王さま」(1954年頃、新聞切抜)や代表作の「ボオ氏」(1967年)など、さまざまなタッチの漫画作品を一覧することができます。
 また、第一章では、やなせが旧制中学時代に愛読した雑誌「新青年」掲載の原画が、東京会場限定で展示されています。当館が収蔵する松野一夫の挿絵原画「黒死館殺人事件」(1934年、原作:小栗虫太郎)、竹中英太郎の挿絵原画「鬼火」(1935年、原作:横溝正史)の一部を、横溝正史旧蔵の掲載誌とともにご覧いただけます。
 第三章「詩 うたうように生まれる」では、やなせのライフワークともいえる1973年創刊の雑誌「詩とメルヘン」での、編集者としての仕事にも注目しました。詩の世界を描いたイラストレーション群、詩の言葉とともに描かれた原画など、見逃せない作品が並ぶエリアです。
 やなせは晩年まで詩作を続け、平易な言葉で、自分の思いや日常で感じたことを詩のかたちにして綴りました。作詞の代表作である「手のひらを太陽に」(1961年)は、作曲家のいずみたくに曲を依頼し楽曲として世に出たように、言葉と音楽が結びつくようなところにも、やなせの詩の特徴があらわれています。

 第四章「絵本とやなせメルヘン」では、絵本『やさしいライオン』(フレーベル館、1975年)をはじめとする主な絵本の原画をご紹介しています。本として流通する出版物の印刷では再現しきれない細かなタッチや風合い、原画ならではの魅力を味わっていただきたいです。
 本作は、血のつながらない親子の愛情をテーマにした作品ですが、やなせは絵本ができる以前にも、漫画やラジオドラマ、短編作品などで同じ題材を繰り返し創作しました。1970年には手塚治虫の虫プロダクションで映画化されており、やなせにとって本作が、いかに大切な作品だったかを窺い知ることができます。また、多くの人たちの共感を呼んだ本作は、アンパンマンが世に出るきっかけにもなりました。1969年版の絵本『やさしいライオン』(フレーベル館「トッパンのおはなしえほん」)が好評を得たことから、好きなテーマの絵本を出版できることになったやなせは、アンパンマンの絵本をつくりました。この「逆転しない正義」を体現したヒーロー像であるアンパンマンもまた、やなせがさまざまなスタイルで繰り返し描く物語となりました。

 第五章「アンパンマンの誕生」で最初に目に入るのは、30~50号サイズのキャンバスに描かれたキャラクターたちのアクリル画です。これらの作品は1996年、やなせの故郷である高知県に開館した香美市立やなせたかし記念館アンパンマンミュージアムのために描かれた作品です。漫画や絵本の原画はサイズの小さいものが多いため、天井の高い美術館のギャラリーに映える大きな作品をつくりました。作者だからこそ表現できる、アンパンマンの物語に登場する各キャラクターの象徴的なシーンが描かれており、じっくり鑑賞していただきたいです。
 ほかにも、水彩とペンで描かれた挿絵に、物語の誕生秘話の詩をつけた「アンパンマン伝説」(1997年)、物語の設定やキャラクターの考察が深められた漫画「れんさいまんが あんぱんまん」(1976~1982年)など、見応えのある原画が並びます。「なんのためにうまれて なんのために生きるのか」で歌詞が始まる「アンパンマンのマーチ」の原稿(1988年頃)も展示しています。推敲の跡が残る原稿からは、やなせの思いが伝わるようです。

 最終章はエピローグとして、やなせの「人生はよろこばせごっこ」の世界をご紹介します。晩年のエッセイ作品、歌手活動、パーティー映像などから、やなせの活動の源泉ともいえる「よろこばせごっこ」のマインドに触れます。
 自分の人生を楽しみ、誰かのことも喜ばせる―やなせたかしは94年間の人生をとおして、生涯現役を貫きました。その作品は今なお、私たちに勇気を与え続けています。




〇「ボオ氏」「鳩とトビウオの巻」 1967 年
©やなせたかし (公財)やなせたかし記念アンパンマンミュージアム振興財団蔵


〇「詩とメルヘン」1978-年-8-月号表紙絵「ついにぼくは夜明けの光の矢をにぎったぞ」
©やなせたかし (公財)やなせたかし記念アンパンマンミュージアム振興財団蔵


〇『やさしいライオン』1975-年
©やなせたかし (公財)やなせたかし記念アンパンマンミュージアム振興財団蔵


〇「顔をあげるアンパンマン」 1996年
©やなせたかし (公財)やなせたかし記念アンパンマンミュージアム振興財団蔵



会期:2026年6月30日(火)~2026年9月6日(日)
開館時間:午前10時~午後6時(展覧会入場・ミュージアムショップは午後5時30分まで)
休館日:毎週月曜日※月曜が祝休日の場合は開館し、翌日休館

世田谷文学館
https://www.setabun.or.jp/exhibition/20260630-0906_yanasetakashi.html

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