『極私的原子力用語辞典』について西尾 漠(原子力資料情報室共同代表)
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自己紹介から。本業は反原発運動全国連絡会が発行する『はんげんぱつ新聞』の編集者です。脱原発のシンクタンクとも言うべき原子力資料情報室の共同代表も務めています。
2017年に長崎市で出版活動をはじめた「編集室 水平線」から、『極私的原子力用語辞典』という本を上梓しました。「用語辞典」とは名ばかりで、用語の説明はそっちのけにして関連するスクラップ記事をちりばめた原子力オタクの備忘録です。 スクラップとは切れ端、細切れ、不用品、廃棄物といった意味のようですが、論文などに使われるわけでもなく、ほったらかしておけば消滅するような断片的記事を残しておきたくて本にしました。そのための「仕掛け」が用語辞典です。次のように「まえがき」に記しました。「辞典に加えて事典風の余談を盛った『読む辞典』にしたいと編集室水平線の西浩孝さんには無理をお願いしました。後世に残る論文には載ることのない、インターネットで検索しても出てこないような『スクラップ情報』を、それでも残しておきたいというのが動機です」。 実は以前にも別の形でスクラップを本にしています。個人史に、これまたスクラップ記事を紛れ込ませる「仕掛け」です。2013年に緑風出版から出した『私の反原発切抜帖』の「はじめに」から抜き書きをしてみます。 「水俣病を追いつづけた作品などで知られる記録映画作家の土本典昭さんが1982年に発表された『原発切抜帖』という映画があります。土本さんご自身の新聞記事スクラップから思いつかれたもので、画面に現われるのは新聞の紙面のみ。 土本さんが2008年6月24日に亡くなられる2年近く前に『いままた、約30年分の私の切抜きをもとに、“プルトニウムの出現のスリラー”的映画をつくりたい』とのお葉書をいただきました。再びごいっしょに仕事ができるのを楽しみにしていたのです。残念ながら、それは叶いませんでした。 西尾流のスクラップとしては、スリーマイル島原発事故の後、『技術と人間』の連載コラム『クリティカル・ニュース』欄に原子力開発をめぐる動きの紹介をはじめたことがあります。いわば原発観察記です。備忘録代わりになるので、ありがたい連載でした。本書にも、似たようなことがあります。ほとんど忘れかけていることを何とか残しておきたいということで、引用も、他の人は引用しないだろうというものばかり取り上げています」。 「画面に現われるのは新聞の紙面のみ」という土本さんほど徹底してはいませんが、なんだかスクラップに取りつかれているようです。 貯めこんでいるスクラップは新聞や雑誌、書籍、最近ではインターネット上の記事などいろいろ。古書店さんにもお世話になっています。買いたい古書をネットで注文することもなくはありませんが、原発所在地などで古書店を見つけると地元の本を漁ったりというほうが基本です。水道橋駅の裏にあった、本は並んでいなくてただただ積み上がっている古本屋さんでは時折、電力会社の社史などを入手していました。いまなら公開している諮問委員会の会議資料もありました。 主に原発推進の立場のものを多く集めています。そのまま引用するだけで「突っ込み」をいれるまでもない「ボケ」のような言葉がたくさんあります。 その例を、『極私的原子力用語辞典』から紹介しましょう。 「安全性」という用語では、「安全について定義している国際基本安全規格(ISO/IEC GUIDE 51:2014)によれば、『安全とは許容できない危害が発生するリスクがないこと』とされる」ともっともらしく説明した後で、「あっぱれ」と小見出しを付けてこんな引用。 「内田秀雄前原子力安全委員会委員長が1993年5月10日付電気新聞で言う。『原子力委員の大先輩が私に、「当初は安全の問題など考えなかったからね」と述懐されたことがある」。 調子に乗ってもう一つ。 「JCO臨界事故」の説明は、「1999年9月30日、茨城県東海村にある核燃料加工会社ジェー・シー・オーの東海事業所で起きた日本初の大規模な臨界事故。臨界とは核分裂の連鎖的な反応が一定の割合で続いている状態で、原子炉の中では臨界はふつうに起こっていることだが、原子炉以外の場所で臨界が起こると事故になる。日本で初めて半径350メートル以内の住民265人に避難要請が行われた」。小見出しは「明けまして」で、 「事故の翌2000年、原子力関係者の年賀状が、茨城県東海村の原子力関係者の同人誌『原子力村』29号に載っていた。 八島俊章(東北電力社長)『原子力で悲鳴を上げています』 望月恵一(元動力炉・核燃料開発事業団理事)『原子力は評判悪く滅入ります』 吉川秀夫(元日本原子力研究所総務部長)『本当に新しいスタートがきれるんでしょうか?』」。 はじめに自己紹介をした立場から原発推進を揶揄するような記述が少なからずで怒られそうだけれど(まじめな考察や知識提供もあります!)、当事者たちもほとんど知らないような話も拾っている。読んで赤面して脱原発に宗旨替えをしてくれないだろうか。
西尾 漠(にしお・ばく)
1947年生まれ。 原子力資料情報室共同代表。『はんげんぱつ新聞』副編集長。 東京外国語大学ドイツ語学科中退。広告制作会社に勤務していた1973年、電力危機を訴える広告に疑問をもったことなどから、原発の問題にかかわる。 主な著書に、『原発・最後の賭け』(アンヴィエル)、『原発を考える50話』(岩波ジュニア新書)、『私の反原発切抜帖』『反原発運動四十五年史』(緑風出版)、『原子力・核・放射線事故の世界史』『日本の原子力時代史』(七つ森書館)など。 共著書に、『反原発事典』Ⅰ・Ⅱ(現代書館)、『核のゴミがなぜ六ヶ所に』(創史社)、『脱原発しかない』(第三書館)など。 『はんげんぱつ新聞』見本誌ご希望の方へ反原発運動全国連絡会が発行する『はんげんぱつ新聞』の見本紙を、1部ご提供いただけます。ご希望の方は、反原発運動全国連絡会HP内のお問い合わせフォームより、直接お申し込みください。お申し込みの際は、題名に「日本の古本屋メールマガジン見本紙希望」とご入力ください。 |
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