本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』を創刊して南陀楼綾繁 |
11月に『ヒトハコ』という雑誌を創刊した。A5判で80ページ、うち16ページがカラーだ。特集は「一箱古本市の楽しみ」で、店主さん、主催者、助っ人さんなどさまざまな立場でこのイベントに関わっている人たちの声を集めた。星座占いでベストセラーを出している石井ゆかりさんには、石巻の一箱古本市に毎年参加する理由を書いていただいている。 そのほか、私小説好きのミュージシャン・世田谷ピンポンズのエッセイ、富山の〈ひらすま書房〉、熊本の〈古書汽水社〉の開店までの手記、京都府の長岡天神で開催されている「天神さんで一箱古本市」の徹底レポート、ブックイベントをめぐるメール対話、長野と佐賀で生まれた「本のある宿」のことなど、すべてのページが「本」に関する記事で埋まっている。 2005年に私たちが谷中・根津・千駄木で「不忍ブックストリートの一箱古本市」をはじめてから10年以上が経ち、全国各地に広がった。本誌巻末に載せたリストによれば、今年1~8月だけでのべ80か所以上で開催されている。そこで、ブックイベントが開催されている町や、そこに関わる人や店のことを紹介する雑誌をつくりたいと考えた。 私ひとりがアイデアを出すのでは面白くないと、創刊号では盛岡、富山、京都、高松、鹿児島に住む5人に「地域編集者」になってもらった。彼らと私のプランをもとに、企画を固めていった。この地域編集者は次号では別の地域に住む5人にチェンジするので、毎回異なる地域が登場することになる。 発行してから1か月半。発行直後から反応がよく、書店でもブックイベントでも売れている。発売元のビレッジプレスでも在庫がなくなったため、増刷することになったのは、まったくの予想外だった。地域編集者や執筆者に古本屋、雑貨店などの店舗を営む人が多く、熱心に売ってくれたことも大きい。 創刊記念として、年内に西日本(高松、倉敷、福岡、熊本)、北陸(金沢、富山、新潟)、西日本(大阪、京都、兵庫)、北海道(札幌、千歳、知床)を回る私のトークツアーも開催した。雑誌を売るためでもあるが、同時に、次号に関わる人や、取り上げたいネタを探す旅でもある。すでに何人か登場してほしい人が見つかっている。 読書は孤独な営為だが、その体験を共有したいという欲求も人にはある。『ヒトハコ』は、この二つをともに大事にする雑誌でありたい。次号は、ブックイベントのシーズンである来年春に出すつもりだ。こんな人、こんなテーマを取り上げてほしいという声を、編集部までぜひ寄せてください。 サイト http://hitohako-magazine.wixsite.com/hitomag メールアドレス magazine.hitohako@gmail.com
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