「読書人のための知の道しるべ」ミネルヴァ書房 堀川健太郎 |
ミネルヴァ通信「究(きわめる)」は、2011年4月に「読書人のための知の道しるべ」を目指して創刊いたしました。そして、昨年7月号で通巻100号を迎えました。小社で刊行している人文・社会科学を中心として自然科学も含め、分野横断的に連載を現在16本掲載しております。それぞれの分野の編集者の思いのこもった連載、京都ならではの連載を心がけています。
連載をもとに編集し直し、書籍化をしたシリーズ「叢書・知を究める」は、これまで17巻刊行いたしました。そのなかで木村幹先生の『日韓歴史認識問題とは何か――歴史教科書・『慰安婦』・ポピュリズム』は第16回読売・吉野作造賞をいただきました。また猪木武徳先生の『自由の条件』、砂原庸介先生の『新築がお好きですか?』などは、幸い多くのメディアで取り上げていただき、ロングセラーとなりました。 現在の連載では、宇野重規先生の知識人の言葉から日本の知を捉える「西と東と 近代日本知の往来」、白石隆先生、ハウ・キャロライン先生の東アジアから新しい世界地図を見通す現代史「オンリー・イエスタデイ」など話題の連載も多く掲載しております。 この「究」をきっかけにセミナーも含め、読者の方と接する機会が増えました。そこで、改めて読者の方の知的好奇心の高さを感じています。より正確で最新の研究成果を踏まえた教養を、時代を捉えつつもバランスの取れた連載をお届けせねばならないと思いを新たにしています。 小誌創刊の2011年は、3.11東日本大震災が起きた年です。創刊を控え、余震が続くなか東京のある新聞社に小誌のパイロット版をお持ちしたところ、記者の方から「この冊子を被災地に届けたいですね」との言葉をいただきました。活字というものが人と人をつなぎ、生きる活力になるものだと体感しました。また今般のコロナ禍で、家で本と向き合う時間が増えたことで、紙の温かみと情報の蓄積性とともに、生きる力との出会いを届ける本の役割が再認識されたと思っています。 これからも「読書人のための知の道しるべ」となるよう教養を届けるべく一字一字にこだわり刊行してまいります。是非ともお手に取っていただければ幸いです。 『ミネルヴァ通信「究」』毎月1日発行/A5判64頁 ミネルヴァ通信 月刊「究」(KIWAMERU) |
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