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「ここ“も”愉しい古本屋さん」を編んで

「ここ“も”愉しい古本屋さん」を編んで

月刊「望星」編集部 石井靖彦

 文筆家であり古書大好き人間の岡崎武志さんと会ったとき、「なにかやりましょうよ」と持ちかけた。「そやなぁ、ボクがやるんやったら、やっぱり古本と古本屋さんの特集やなあ」と口を滑らせたので、「じゃお願いします。構成案考えてえてださい」「ヨッシャ!」となり、十月号の特集「ここ“も”愉しい古本屋さん」とあいなった。

 古本屋さんといってもいろいろで、誌面で取り上げるのであれば、強い個性を持ち、古書店の範疇に入りきらないようなところを紹介してみたい――これがこちらの要望。それに対して岡崎さんが半世紀にならんとする古書店巡り人生から、ピックアップしてくれたのが、「古書 日月堂」(東京)、「book café 火星の庭」(仙台)、「盛林堂」(東京)、「古書 善行堂」(京都)である。本当はもっと多くの古書店を取り上げたかったが、マイナー誌ゆえの財力、機動力のなさから仕方ない。

 各店主の話はすべて実におもしろかった。開店に至る経緯、開店後の苦労、やっていけそうという手応えを感じたときなど、話は尽きない。

 ビジネスだから、好きでやっているでは済まないのは当然で、各店、戦略がある。その戦略と自身が好むテーマ、ジャンルがマッチして、かなり個性的な店が誕生したのだと感じた。

 そしてなにより古書の魅力を再認識したのは、モノとしての存在感。いま私たちは、ほとんど画面に現れるものとばかりつきあっていて、それでけっこう事足りていると思ったりしている。毎日、画面からは集中豪雨のように情報が流れ、それがマトモなものならばまだしも、マユツバものだらけでうんざりなのだが、取捨選択し、つきあわざるをえない。

 それに比べ、古本や昔の印刷物は“気品”をまとう。気品と知識がモノとして存在している。紙の生命力の、なんとありがたいことか。紙は偉大――あらためてそう実感した。

 紙媒体は凋落の一途といわれ、明るい材料は皆無のよう。それでも「やっぱり本が好き」「本屋さんが好き」「古本屋さんが好き」という人たちはいる。救いはそれくらいかもしれないが、本がない世の中は暗黒そのもので、想像もしたくない。小誌もご多分に漏れず青息吐息。まあ、それをいっても仕方ないのだが、なにはともあれ紙が持つ永遠性に盛大な拍手を!

 最後に小誌「望星」は一九七〇年に東海大学の創始者・松前重義氏が文理融合を掲げ、学生や保護者向けに創刊した。
「政治に希望なく、経済に曙光見えず、人の心はようやく自暴の域に追い込まれているかのごとくである。しかし私は悲観しない。日本はまだ大丈夫である。努力によっては、絶望のごとく見える燈火も、希望の油を注入して新しき生命の芽生へを見いだすことができる」

 敗戦後、そう書いた松前氏の志を理念としている。八十年近く前の言葉に、今をみるようで、びっくりする。

 
 
 
 

『フローとストック』 月刊「望星」編集長・石井靖彦
(『望星』2018年3月号 古書・品切れ・絶版に宝物あり!)

 


月刊『望星2023年10月号』 ここ”も”愉しい古本屋さん
東海教育研究所刊
税込価格:660円
ISBNコード:4910087131039
好評発売中!
https://www.tokaiedu.co.jp/bosei/contents/2310.html

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