>千代田図書館企画展示「検閲官-戦前の出版検閲を担った人々の仕事と横顔」2017年1月23日~4月22日千代田区立千代田図書館 企画チーフ 河合郁子 |
私は、千代田図書館にて、企画展示や講演会を通じたコレクション活用を担当しています。今回は、自著ではありませんが、担当した企画展示についてご案内します。 千代田図書館では、内務省の出版検閲に使用された検閲正本を所蔵しており、それらを『内務省委託本』と呼んでいます。内務省委託本や出版検閲をテーマとした企画展示を開催して、今回で4回目になりました。これまでの展示では、検閲正本にのこされている印やコメントなどから、内務省検閲の制度や検閲基準などを読み取って、ご紹介してきましたが、今回は検閲を行ってきた「人」=「検閲官」がテーマです。 近年、出版検閲に関する研究が進み、制度としての側面は徐々に明らかになってきた一方で、個々の検閲官についての研究はほとんど報告されていません。それは、資料がそもそも少なく、また、彼らがどのような人生を送っていたのか、「出版警察報」などの内部文書からではわからないためです。今回の展示では、新発見の資料とこれまで断片的に存在していた情報をつなぎ合わせることで、検閲官の実像にせまりました。 ご覧になった方からは、「検閲官にスポットをあてた展示は初めてで、とても興味深い」「検閲=悪、と思っていましたが、一人ひとりは良識ある人だったのか・・・。左翼青年、文学青年も携わっていたと知り、今まで画一的な見方をしていたと思いました」などの声をいただいています。 展示制作の過程を少しお話しますと。このような学術的で専門性の高い展示を、区立図書館員だけでは準備できません。実は、「千代田図書館『内務省委託本』研究会」という会があり、出版史や文学の研究者に参加いただいて、継続的に調査・研究を行っているのです。そして、調査・研究の成果を企画展示や講演会などを通じて、皆様にお届けしています。この「検閲官」展示も企画の段階から、研究者と図書館の二人三脚で作られたものなのです。 また、研究会の調査・研究から明らかになった新事実について、様々な切り口から報告する「調査レポート」をこれまでに14号発行してきました。図書館内で配布しているほか、図書館ホームページからはPDFデータをダウンロードいただけますので、遠方の方もぜひご覧ください。戦前の出版検閲についての展示やレポートをきっかけに、現在も様々な国で行われている言論統制にも関心を持っていただけたら幸いです。
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