『古本乙女の日々是これくしょん展を振り返って』カラサキ・アユミ |
20代最後の夏、忘れられない夏になった。 「貴女の好きな世界を自由にぶつけてもらって良いですよ」と夢のような機会をいただいて東京古書会館で開催した展示イベント。二泊三日の古本屋行脚弾丸ツアーレポートそして戦利品紹介、昭和のお色気本やカストリ雑誌の展示、“人から見ればただのゴミ”コレクション紹介、そして会場中心には古本屋さんのチラシやショップカードの自由配布コーナーを設けた。挨拶看板も展示のキャプションも全て手描きにこだわってとにかく『小学生の夏休みの自由研究』という心持で臨み、混沌として雑多な展示にしてみた。 準備期間も楽しかった。展示中も楽しかった。来場者の方々の様子を眺めたり交流させていただいたのも楽しかった。トークイベントも楽しかった。とにかく全てが楽しかった。 展示を見ながら声をあげて笑うおじさん、山下清の如き出で立ち(白タンクトップに短パンに草履)のお話し好きなおじいさん、展示物を指さしながら何やら熱く語り合う学生グループ、知的な雰囲気の若いカップル、熱心に撮影をしている女性、作業の合間に汗を拭きながら見学に来てくださった古本屋さん。沢山の古本者がご来場くださり、椅子に座って目の前の光景を眺めているとなんだか不思議な気持ちに包まれると同時に至極幸せな気持ちが湧きあがったのであった。 なかでも、ひと際印象的な方がいらっしゃった。地下で開催されていた即売会の帰りにたまたまイベントのポスターを目にして来場くださった80代の腰の曲がったおじいさん。細い腕には即売会の戦利品の入ったビニール袋が提げられていた。とても重たそうだ。展示会場は東京古書会館のエントランスにある階段をぐるりと登って二階。そんな状態で階段を一歩一歩ゆっくりと登ってこられる姿を目にしているとこちらも少し手に汗を握ってしまった。会場に入ってこられた瞬間思わず「お手の荷物こちらにどうぞ」と声をかける。おじいさんは間髪いれず「いや、結構。大事な本だから自分で持っておく。」と表情を変えずに答えた。そのまま挨拶看板、順路を辿っておじいさんはゆっくりとした足取りでじっくり真剣な顔で会場を見て回ってくださった。そして最後に会場の中央に設置していた各地の古本屋さんのショップカードを一枚一枚丁寧に手に集めていった。会場を出ようとするおじいさんとふと目が合った。 「ここにある物はみんなアナタが集めたの?」 「は、はい!」 「ほぉ。アナタも病気だねぇ。たいしたもんだ。」 「へへ・・・へへへ・・・」 「これ、貰っていきますよ。こんな古本屋があるとは知らなんだ。ばあさんの墓参りに行く時についでに覗いてみるよ。」(古本屋さんのショップカードを手にしながら) 「是非!」 「そいじゃ、ありがとさん。」(また長い階段を一歩一歩ゆっくり降りて行くおじいさん) ・・・なんとはないやりとりかもしれないが私には極上のひと時であった。仏頂面だったおじいさんの表情がほどけた瞬間の可愛さと感動たるや。また一味違った古本趣味の旨味を味わえたのであった。 この文章を打ち込みながら、まだ、あれも書きたいこれも書きたいとイベント中の愉快な出来事を思い出しては手を止めて窓の外の風景を眺めていたりしている。気がつけば涼しい風も吹き始め、いつのまにか秋の気配も感じられるようになった。読書の秋、古本の秋、秋は大好きな季節だ。 思えば展示期間中は灼熱の猛暑だった。そんな暑さの中、ご来場下さった皆様、イベントにご協力くださった皆様、鉄砲玉のような自分を両手で受け止めてくださった古書会館の皆様、イベントを開催するきっかけをくださった皓星社さん、おひとりおひとりに感謝が尽きない。煌めく青春のひと時を、本当にありがとうございました。またいつかこんなわくわくするイベントを是非やりたいなと強く思うのでした。 ![]() カラサキ・アユミ https://twitter.com/fuguhugu 缶バッチを2個セットで10名の方にプレゼント(デザインは選べません) ![]() ご応募はこちら http://www.kosho.ne.jp/oubo2018/20188.html ![]() 『古本乙女の日々是口実』皓星社 価格1,000円+税 http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/furuhonotome/ |
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