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「文学カレー漱石」

「文学カレー漱石」

コクテイル書房 狩野 俊

 当店は高円寺にある、古本屋と居酒屋がいっしょになった店です。今では珍しくないブックカフェの先駆けとして20年以上に渡り、このような業態の店を営んでいます。文学にちなんだお酒やつまみを楽しみながら、壁にある本を読むことも買うこともできます。当店では1年前から夏目漱石の名を冠した、文学カレー「漱石」というものをお出ししています。そのカレーのことを書かせていただきます。

 日本にカレーという食べ物が入って来たのは明治時代の始め、イギリス から伝わりました。昭和二年にインド人革命家ラス・ヒバリ・ボースが亡命中、庇護を受けていた中村屋の相馬夫妻に振る舞ったカレーが、本格的インドカレーの到来だと言われています。明治大正と半世紀、オリジナルのインドカレーを知らずに創意工夫を重ねて、日本独特のカレー文化を築き上げました。そしてそれは現在も続き、カレーは国民食と言われるまでになりました。
 
 日本の近代文学も、明治以降に輸入された多数の翻訳小説の影響を深く受けいれ、多数の作品を生み出してきました。カレーと文学。一見なんの関係もなさそうなふたつの事柄は日本の近代化とともに、同じような道のりを歩んできたのです。文学カレーはこれらを背景につくりあげました。カレーの中に物語を溶け込ませた、食べる文学と言えるかもしれません。

 文学カレー「漱石」は夏目漱石が食べて「おいしい!」と思ってくれるように作り上げました。大好物だった牛肉をメインの具材にし、生涯胃痛や精神衰弱に悩まされた漱石のこころと身体に寄り添うようにスパイスを調合しました。刺激の強い唐辛子を使わずに、辛みは胡椒で出して、やさしい口当たりに。消化に良いように、野菜は細かく刻んで入れました。

 小説「三四郎」の一説にこんな文章があります。「僕はいつかの人に淀見軒でカレーライスをごちそうになった」淀見軒というのは、実際に本郷四丁目にあった洋食屋だったそうです。値は張るけれど味は良いと評判の店だったと言われています。漱石も通っていたであろうこの淀見軒のような昔懐かしい洋食屋のカレーを目指しました。

 この文学カレー「漱石」は評判も良く、文豪の名を恥ずかしめることなく、遠方から足を運んでくださるお客さまもいらっしゃる人気メニューになりました。そこでこの度これをレトルトカレーとして販売することにしました。発売日は2月9日、漱石の誕生日です。このカレーは原則、本屋でしか買えないカレーです。このカレーが話題になることで、本に興味を持つ人を増やすことも目的のひとつです。遠方の方には「日本の古本屋」で通信販売をいたします。クレジット決済もできますので是非ご活用ください。値段は600円+消費税となります。おいしさにこだわったら原価がたいへんなことになり、高いようですがこれがぎりぎりの価格なのです。

bungaku
コクテイル書房
http://koenji-cocktail.info/
ツイッター
https://twitter.com/cocktail_books

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