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メールマガジン記事 シリーズ古書の世界

北陸古本案内 その2

北陸古本案内 その2

オヨヨ書林 山崎 有邦

 前回は石川県の古本屋について書かせていただきましたが、今回はお隣、富山県の古本屋の紹介です。

 東京から金沢に引っ越した数年の後、富山市・岩瀬の古道具屋・スヰヘイ社さんから、ミニ古本市へのお誘いを受けました(その古本市の、男の子が本を読んでいるイラストは、現在、細野晴臣の本の表紙や、雑誌『POPEYE』のイラストなどでも活躍されている富山出身の漫画家・堀道広画伯でした)。富山の護国神社で毎月第1日曜に骨董の蚤の市が立ち、以前そこで何度か古美術や焼き物の古本を並べて売っていたので、その縁だったかと思います。ピアノの演奏会が開かれるくらい雰囲気のよい店内で、売り物のアンティークの本棚や飾り棚を利用させていただいての古本市が楽しくて、一緒に参加した高岡市(富山県)の上関文庫さんと盛り上がり、その勢いで、いまは往事の様な活気がない富山市の街中でもこんな感じの(かつて若者だった自分たちが通いたかった店のような)店舗がやりたいと、共同経営の古本屋を開くことになりました。

 場所は富山市内のメインの商店街から一本入ったところ。家賃は安く、美大卒の若い店主が営む民芸店や、オーガニックの化粧品店など、少し変わった店の集まる長屋。店番は交代。売り上げは折半。店名は『まんが道』という案もありましたが、サイモン&ガーファンクルのアルバム『ブックエンド』から。並べる本はお互いの在庫を持ち寄りました。敷金・礼金を払ったら、本棚を買うお金がなくなって、福井県の松村古書店さんの倉庫で使っていたものを譲っていただきました。スヰヘイ社さんから、開店祝いに帳場用の木の机をいただき、さらに塗装のはげていた店のドアを、青く塗っていただきました。

 いままで古本屋のほとんどなかった商店街に出来た店は、地元の人に重宝がられました。友達の友達で全員が繋がるような小さい街ですので、翌年(2013年)からブックエンドが中心となって始めた古本イベント「BOOK DAY とやま」もすぐに認知してらえ、富山のゴールデン・ウィークの定番イベントとなりつつあります。その頃各地で盛んだったブック・イベントを見よう見まねで始めた第1回は、不忍ブック・ストリートでおなじみの一箱古本市と、当時『本屋図鑑』を出版されたばかりの夏葉社の島田潤一郎さんと、ライター・編集者の北條一浩さんをお呼びしてトーク・イベントを開催しました。

つい昨日のことのようです。BOOK DAY とやまはその後も回を重ね、牧野伊三夫さん、ミシマ社・三島邦弘さん、里山社・清田麻衣子さん、服部みれいさん、関谷武裕さん、ひらのりょうさん、安田謙一さん、菊地成孔さん、柴田聡子さんなど、様々なゲストに出演していただき、いろいろな人や施設を巻き込み、今年の春で8回目を迎えます。古本屋の出店も、富山県内だけでなく、北陸、そして全国各地から集まるようになりました。ポスターは3回目からずっと堀画伯ですが、今回思い起こすと、スヰヘイ社のミニ古本市からのお付き合いになります(早稲田青空古本市の永島慎二先生のような存在でしょうか)。

 前置きが長くなりましたが、このイベントとブックエンド開店がきっかけとはいえないまでも、少しの後押しくらいにはなったかもしれない(そうだったら嬉しい)、富山県でここ数年に新規開店した新しいお店を、紹介させていただけたらと思います。

 デフォー。ブックエンドの3軒隣に出来た絵本の専門店。ショーウィンドウの、月替わりのテーマに沿って並べられた絵本の表紙を眺めるのが楽しみです。

 ジンジャー・ラーメン・ブックス。富山市内、花水木通り。旧ラーメン屋のカウンターをそのまま利用した古本屋。コーヒーは出しても、ラーメンはメニューにありません。店名と看板が前の店のまま。手抜きの店かと思いきや、品揃えは本格的でこだわり有りです。

 ひらすま書房。「ひらすま」は富山弁で昼寝のこと。射水市、旧小杉町の大正時代に建てられた旧小杉郵便局の古い建物を利用した施設「LETTER」の1階にある古本屋。2階はアトリエ。奥ではイベントをやっていることも多い。ミニコミやリトルプレスを中心とした品揃えですが、渋めの古本も増殖中です。Zineなどのワークショップなども開催。

 古本いるふ。岩瀬から滑川に引っ越したスヰヘイ社(現・古道具 スヰヘイ)さんの向かいに、2年前の春にオープン(富山の古本業界の裏にスヰヘイさんの影があちこちに)。デザイン書・美術書・写真集の品揃えは県内随一。2階がギャラリーになっています。各地のイベントにもフットワーク軽く出店。現在、BOOK DAY とやまの実行委員長です。

 コメ書房。店主夫妻が南砺市の散居村へVターン移住。のどかな田園地帯の中の、農家の納屋を改装したブックカフェです。コンセプトは「百姓のくらし」とのことで、1冊ずつ丁寧に選ばれた古本が並びます。かぶらずしサミットなどのイベントも開催。

 古本なるや。高岡市から氷見線で3駅の伏木駅前。店主がジャズ・ミュージシャンでもあります。店も、古本販売だけでなく、ワークショップやライブ、相談支援などに開放されている。品揃えは雑多ですが、なにか見つかりそうなポテンシャルと、店主の人柄か絶妙な居心地の良さを感じさせます。ブログやチラシなど、店主の書く文章も面白い。ジャズと古本て、なんでこんなに相性がいいんでしょうか。

 一番新しい(2年前)、いるふ、コメ書房、なるやは開店時期がほぼ同じですが、品揃えは各店各様で頼もしい。
 店主の数だけ古本屋があり、そういう店を訪ねるのが古本屋巡りの楽しみという、当たり前だけど自分が売る側に回ってからはずっと忘れていたことを、富山で気づかされました。

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BOOK DAY とやまの模様

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ひらすま書房

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コメ書房

オヨヨ書林
https://oyoyoshorin.jp/

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