企画展「作家・大西巨人――「全力的な精進」の軌跡」のご案内山口直孝(二松学舎大学 教授) |
「日本文学史上の最高傑作の一つ」(阿部和重)、「日本語で書かれた小説」の「ベスト・ワン」(奥泉光)と称される『神聖喜劇』で知られる大西巨人(1916年~2014年)の歩みを直筆原稿や関連資料でたどる企画展「作家・大西巨人――「全力的な精進」の軌跡」を東京古書会館、二松学舎大学の二つの会場で開催します。詳細は、下記の案内をご覧ください。
今回の展示は、大西巨人の資料が二松学舎大学に寄託されたことを記念して企画されたものです。二松学舎大学では、2014年夏から巨人の蔵書約1万1千点の調査を進めてきました。2018年秋には、附属図書館資料センターを発足させ、貴重資料受け入れの環境を整えました。寄託資料は、原稿、草稿類(約8千枚)、ノート、メモ、手帳、日記、執筆資料、書簡、手紙、切り抜きなど段ボール箱で20を超える膨大なものです。全容の把握には相当の時間を要すると思われますが、今回の展示では、現時点で確認できたものを紹介します。ほとんどは、今回が初公開となります。 二松学舎大学会場では、代表作『神聖喜劇』の成り立ちを紹介します。『神聖喜劇』は、戦時下の兵営における抵抗活動を通じて青年知識人の主人公が虚無主義から脱却し、他者との連帯の可能性を感じるまでの過程を描いています。4百字詰め原稿用紙約4千7百枚の大長編小説には、起筆から刊行完結まで25年の歳月が費やされました。会場には、おびただしい推敲の痕跡が残る原稿、草稿、執筆覚え書き、目次案などを展示しました。巨人が一語をもゆるがせにせず制作に取り組んでいたことや作品世界が作者予想以上に拡大していったことを感じていただければ幸いです。今回新たに見つかった未発表作『明暗の軌跡』、『遺書の告発』の草稿もこちらでご覧いただけます。 東京古書会館会場では、第一作『精神の氷点』から未完に終わった『八つの消滅』までの創作の歩みを紹介します。長編『天路の奈落』、『三位一体の神話』、中編『娃重島情死行』、短編『連絡船』などの諸作品、「「仆れるまでは」、「仮構の独立小宇宙」などのエッセイの原稿、草稿、ノートを一堂に集めました。巨人が編集に携わった総合雑誌『文化展望』や日記、書簡、手帳、また、蔵書のうち、しおりの挿み込みや書き込みがあるものを選んで公開します。 一個の作品がそれ自体で完結していることを望み、私小説的な読解を戒めた巨人は、自己を語るのに禁欲的な書き手であり、創作の舞台裏は知られていませんでした。今回の展示によって、書斎における巨人の孤独な営みが「全力的な精進」(『神聖喜劇』)の持続であったことを感じていただければ幸いです。みなさまのご来場をお待ちしております。 会場: 開催日時: 【二松学舎大学会場】2020年2月4日(火)~3月14日(土)10:00~16:00 講演会中止のお知らせ お問い合わせ:二松学舎大学附属図書館 TEL 03-3263-6364 |
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