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メールマガジン記事 シリーズ古書の世界

北陸古本案内 その3

北陸古本案内 その3

オヨヨ書林 山崎 有邦

 前々回の石川県、前回の富山県に続き、今回は福井の古本屋を紹介させていただきます。

福井駅前の好文堂。街の本屋としては広めの店内に、文庫・漫画・文芸書・趣味本・郷土史・全集・美術書・アダルトとないジャンルはないくらいまんべんなく網羅された品揃えです。古い雑誌や戦前の本もしっかりと置かれています。集めたというよりは集まって来るというべきかもしれませんが、あらゆる種類の本が密度高く積まれ、全部見るのに2~3時間はかかりそうなボリュームです。駅前ロータリーすぐ向かい。途中下車の価値ありです。

HOSHIDOは、福井駅近くのスナックやバーの入る雑居ビルの一室に、週一日(水曜日)オープンする小さな店です。前のお店のカンターをそのまま利用し、ボトルの並んでいたであろう棚に古本、新刊、CDなどが並んでいます。店主は編集や出版も手がけられています。

現在、福井で店舗営業をしているのはこの二軒くらいとのことで、少し寂しい現状となっています。
福井や石川に限らず、地方の個人商店はどこでも同じかもしれませんが、高齢化や人手不足、売り上げ不振などで廃業したり、店舗営業から日本の古本屋サイト等での通信販売に移行するお店もあります。

Mさんのお店は数年前に高齢のため閉店されました。いわゆる街の本屋で、歴史、小説、マンガ、文庫などど大まかに分類されていました。それを棚ごとに区切り(一番上の段から下の段まで一括)、入札封筒がつけられ、近県の業者を店に集めて、売立て市が行われました。本棚も一緒に持って行っていいよと言われ、当店も含め北陸の各地に貰われていきました。本人はいまでもお元気で、地元のスポーツ大会などで活躍されているそうです。

Iさんも高齢のため店舗を閉店されました。自宅を事務所にしてネット販売は続けられるとのことで、店を、棚や在庫と帳場にあったコタツごと、引き継ぎました(現在の富山の2号店になります)。こちらにお金がないのを知って分割にしていただいたり、ネットですぐにも売れそうな本を「うっかり忘れていったり」と大変お世話になりました。その後も年に一度、忘年会をさせていただいています(Iさんの奢りですが)。

Yさんも、高齢のため店を閉めて、通信販売に移行されました。近県の業者を集めての入札会が開催され、一階の店舗部分で一括、二階の倉庫部分で一括の、二口にわけての大入札会でした。しっかりとした郷土史料の多い一階、ウブ口の未整理品の多い二階ともに、かなりの落札価格となり、当店も入札しましたが下札にも届きませんでした。

Nさんは、老衰でお亡くなりになられました。建物ごと片付けて貸し出すとのご遺族の要請で、石川古書組合の有志で本を整理しました。戦前から続くお店で、かなり古いものも多い店でした。仕分けして、東京と地元の市場に出品しました。

Eさんが入院したと、ご家族の方から組合に連絡があり、倉庫の本を整理することになりました。郷土史を中心に、貴重なものが多く、有志で仕分けし、業者の交換会に出品しました。本も良いものが多かったのですが、書画骨董もかなりあり、そちらは古美術の業者が整理されたそうです。数ヶ月かけて倉庫の本を片付け終えた頃(ハイエース10台分)、自宅事務所の方もとお願いされました。Eさんは、しばらくしてお亡くなりになられたと聞きました。

Sさんは、通信販売専門の店でしたが、親の遺産が入り、数年前、念願のお店を開店されました。スーパーの前で立地はいいけれど、思うように売り上げが伸びず(ただ話しに来るひとは何人もいたそうですが)、しばらくして廃業することに決めたとのことで、片付けを手伝いました。何もなくなってガランとした物件の前を通ることがありますが、次の借り手は現れていないようで、Sさんの字の「金貨買います」の張り紙がそのまま日に焼けています。現在は悠々自適な生活のようで、先日も「大きい買取があって売り先を探している」という頼もしい電話がかかってきました。

Tさんのお店は、2007年3月に起こった能登半島地震の日から開いていません。
揺れが収まった後に恐る恐る店に向かうと、本棚が倒れ、床に本が散乱していたそうです。なんとか人ひとり通れる道を確保したのが限界で、店を続ける気力は残っていなかったとのことでした。隣の倉庫側から出入りし、催事やネット販売は続けているものの、店側のシャッターはずっと開けていないそうです。

本の広場は北陸の古書店が集まって営業していた古本即売所でした。
金沢駅の駅ビルの奥まった場所の、いつ行っても人のいないファーストフード店のさらに奥の迷路のような場所での営業でしたが、それでも一定数の古書ファンに、電車の時間の前後にお寄りいただいていました。北陸新幹線の開通に伴う駅ビル自体の全面リニューアルとともに閉店。地味に好評だっただけに残念です。次の場所を探していますが、手頃な物件がなかなか見つかりません。

店がなくなってしまう話は淋しいものですし、いずれ自分の店もそうなる日が来ると思うとやるせないですが、こんな風に、本自体は業者交換会等で再び次の業者へと循環していくと思うと、少しは安心して、また新しい本を仕入れられそうです。いつの日か片付けをしてくれるであろう古本屋に「こんな売れそうもない本ばっかり溜め込んで」と呆れられないように、ちゃんとした本を仕入れなければいけません。

オヨヨ書林
https://oyoyoshorin.jp/

Copyright (c) 2020 東京都古書籍商業協同組合

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