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メールマガジン記事 シリーズ古書の世界

神田古書店街 前編

神田古書店街 前編

神田古書店連盟 矢口書店 矢口哲也

 メルマガ読者の皆様初めまして。メルマガ読者の皆様なら千代田区神田が世界でも最大級の本の街として知られていることはご存知だと思います。出版社、印刷所、取次(出版物卸業者)、製本所、新刊書店、古書店などが集まり本の街と呼ばれています。

 神田の地名の由来はその昔各国に一か所ずつ大神宮の御供米を植える田が設定され、これを神田と称したそうです。それで武蔵国の供米田は今の神田にあったといわれています。江戸時代の武家屋敷町に明治時代多数の大学が開校されたことで古書店が増え神田古書店街が生まれたと聞いています。

 明治30年代に入り古書店が増えてきて古書市場が次々に作られるようになりました。日露戦争に勝ったことで外国人留学生が増え古書の需要が増々高くなりました。留学生の中には中国人も多く、周恩来も神田の地で学んだそうです。そのため留学している中国人たちのために神田界隈に中華料理店が出来始め、今ではカレーや喫茶・和食・洋食などグルメの街になりました。勿論学生たちのお腹を満たす安くて美味しいグルメもたくさんあります。この頃路面電車が開通し各地から神田に人が来る様になりました。最盛期は神保町交差点に7つの系統の市電(都電)が走りました。都電は昭和40年代初めに路線撤去になるまで神田をとても交通の便のいい場所としてくれました。さて、このように古書店が増え市場も増えてくると新しく古本屋を始めた人たちが市場に買い入れに来ます。しかし馴染みの人たちでの取引が多く、新しい業者は不利な事も多かったそうです。そんな中で模範となる市場を作り、会員相互の親睦、長く務めた店員を奨励し、会において表彰したらいいのではないかという機運が高まり、明治43年に組合の前身である神田書籍商同志会が創立されました。

 神田は元々火事が多かったようですが、明治25年と大正2年に起きた火事は大きかったそうです。大正2年の火事で神保町は焼け野原になり新たに多くの古書店が進出することとなりました。
その後第一次世界大戦がはじまり大戦景気(第一次世界大戦の影響で参戦国でありながら、本土が戦地圏外であったため輸出が増え好景気になった)になると、人手不足になり始めました。空前の好景気で利益が増え店舗拡張するも、世間の人々は地味な商売人になりたがらない。そこで店員に休日を与えようという声が多くあがりました。定休実行には同志会あたりが実行しないと難しいとの声が上がりましたが、神保町その他一部同業者のみの実行では不利が伴う。そこでもっと大きな組織を作る必要が出てきたので、大正9年に東京古書籍商組合が設立されました。その間好況により国民全般が書画骨董の収集をはじめ、学校・図書館も図書購入などで古書業界は賑わいました。そこで、古本の市もそれまでは様々な場所を借りて行っていましたが、種々の不便が伴うので古本屋の交換売買の為に一定した会場を持ちたい願いも自然に起こり、大正5年に東京図書倶楽部が竣工します。のちに東京図書倶楽部で神田の古書店の運営する市場が始まります。戦後になり地方の同業の方に安心して利用してもらえる市場を目指します。先人たちのご努力が実り地方から多くの品物を送って貰うことに成功しました。

 関東大震災や太平洋戦争など壊滅的な被害を受けても、先人たちの頑張りで古書店は再建してきました。そして戦中に東京古書籍商組合から東京都古書籍統制組合に改組します。戦後の混乱の中、協同組合法が発令され昭和22年に現在の東京都古書籍商業協同組合が出来ました。東京図書倶楽部が空襲で焼失し、その跡地に昭和23年東京古書会館が落成しました。昭和42年に2代目となる東京古書会館が落成します。現在の東京古書会館は3代目で平成15年に落成したものです。

 昭和33年頃までいわゆる鍋底景気といわれ日本経済全般が不況でした。当時の新聞などでも『売れない古本』『さびれ行く神田』などの見出しが多くでていたそうです。神保町の古本屋が活気を取り戻そうと千代田区の後押しと岩波書店の協力で、昭和35年に第一回「古本まつり青空掘り出し市」が千代田区の共催で始まりました。

矢口書店
http://yaguchishoten.jp/

神田古書店連盟
http://jimbou.info/index.html

Copyright (c) 2021 東京都古書籍商業協同組合

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