sugoi

『すごい古書店 変な図書館』祥伝社新書

『すごい古書店 変な図書館』祥伝社新書

井上理津子


「洋服のショップでは『どんなものをお探しですか』と声がかかるし、寿司屋さんでは『今日はマダイ、いいのが入ってますよ』と案内される。本屋さんも、そんなふうだったら面白いのにね」
 飲み屋で、日刊ゲンダイの読書面デスクからそんな話が出たのがそもそものきっかけである。町の本屋さんを訪ね、連載したミニルポが、晴れて一冊になった。

 この本に登場するのは、東京と近郊の古書店85軒(と専門図書館32軒)。
・2代目、3代目が店主の老舗古書店
・「就職しないで生きるには」的に始め、20~40年の古書店
・近年開業したニューウェーブ的な古書店
 おおよそこの3種類だが、図らずも、店主の個性がモノを言う、ひとクセもふたクセもある古書店ばかりだ。

 明治40年創業の秦川堂書店(神保町)には、都道府県別の古地図がずらり。3代目店主が、「“使える古地図”の量はウチがたぶん日本一」とおっしゃり、「入門者におすすめ」と、全国の大正3年の詳細地図(復刻版、1000円)を出してくれた。「我が家のルーツ探し」に求める人が多いそうだ。

 九曜書房(武蔵小山)は、店頭に安価な雑本が並ぶ一見普通の店だが、の帳場付近に、ひとかどの写真集がたんまりと潜んでいた。石元康博の『シカゴシカゴ』などレアものも。店主は、美術館にあってもおかしくないような写真集の数々を目の前で開き、聞けば、縷縷解説もしてくれた。
 去年開店した弥生坂緑の本棚(根津)の店主は、大手花屋からの脱サラ。「植物と古本、どちらも売ります」と、店内には観葉植物と本が共存し、多肉植物グラハラリーフを食べられるカフェも併設している。

 と、ちょっと特異な品揃えの店のことをここに書いたが、絶版になった文庫を揃えた大河堂書店(経堂)、部落や沖縄、在日などが専門の水平書館(神保町)、4階建のビルまるごと古書店の高原書店(町田)など、がっつりと読む本が詰まった店も。パソコン検索システムなどないのに、輪郭を伝えれば、数多ある本の中から「これのことですね」とさっと1冊を取り出してくれた店主も少なくなく、私は「さすが」とうなりっぱなしだった。

 そんなこんなが、1軒ずつ見開きに収まり(自分で言うのもなんですが)読みやすい本に仕上がった。この本を手に、掲載店にぜひ足を運んでほしい。
 本稿を書くにあたって、改めてこの本を通読して思ったのは、店主とお客が本屋さんをつくり、本屋さんが町をつくってきたということ。リアル本屋さんは、町の厚みのバロメーターだと、ひしひしと感じています。



sugoi
『すごい古書店 変な図書館』 著者 井上理津子
祥伝社 定価:800円+税 好評発売中!
http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396115166

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2017年9月25日 第235号

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☆INDEX☆
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1.『戦前期外地活動図書館職員人名辞書』 岡村敬二
2.『蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』紀田順一郎
3.「埴原一亟 古本小説集」のこと   善行堂 山本善行

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━━━━━━━━━━━【自著を語る(189)】━━━━━━━━━━



『戦前期外地活動図書館職員人名辞書』 

                        岡村敬二



 今年の7月に、標題の人名辞書を刊行することができた。満洲の図
書館を中心に調べ始め始めてから30年、戦前期外地の図書館職員や
資料室職員の人名辞書を作成しようと作業を始めてからは16年ほど
経過している。校正の間にざっと数えてみると、採録した人名は、
総数で2700名ほど、なかでは満洲・満洲国関係が約1200名と一番多
く、あとは朝鮮720名、台湾480名ほど、北京上海の中国大陸、樺太、
南方と続く。



続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3376

『戦前期外地活動図書館職員人名辞書』 岡村敬二 著
武久出版 定価:4,000円+税 好評発売中!

http://www.bukyu.net/



━━━━━━━━━━━【自著を語る(190)】━━━━━━━━━━


『蔵書一代』

                      紀田順一郎



文筆業という仕事を選んでほぼ半世紀、その間に不要になった本や
資料は随時処分してきたが、最後に約三万冊がのこった。その断捨
離をめぐってのドタバタや、蔵書の関する論考を配したのが、近著.
『蔵書一代』(松籟社、八月刊)である。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3384


『蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』
紀田順一郎 著 松籟社 定価:1800円+税 好評発売中!
http://shoraisha.com/main/company/index.html


━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

「埴原一亟 古本小説集」のこと

                     善行堂 山本善行


 例えば、漱石の『門』や『明暗』、鴎外なら『青年』や『雁』、
志賀直哉なら『暗夜行路』など、古典とも言うべき名作を読み返す
愉しみは、かけがえのないものであるが、ときには評価の定まって
いない誰も知らない忘れ去られた作家の作品を、こっそりひとり愉
しむのもまた読書の醍醐味ではないだろうか。
 そのようにして、加能作次郎や中戸川吉二を読み、嘉村礒多や宮
地嘉六を読んだ。そして三年ぐらい前に埴原一亟に出会った。最初
に読んだのは、文芸復興社の『埴原一亟創作集』で、これが良かっ
た。他の作品集が最初だったらこれほどまで埴原にのめり込まなか
ったかも知れない。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3390

『埴原一亟 古本小説集』著者 埴原一亟 撰者 山本善行
夏葉社 価格:2200円+税 好評発売中!
http://natsuhasha.com/news/hanihara/


━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『広辞苑はなぜ生まれたか―新村出の生きた軌跡』新村 恭 著
世界思想社 本体2,300円(税別) 好評発売中!
http://sekaishisosha.jp/cgi-bin/search.cgi?mode=display&style=full&code=1703

『すごい古書店 変な図書館』 著者 井上理津子
祥伝社 定価:800円+税 好評発売中!
http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396115166


━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━


10月~11月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init


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日本の古本屋メールマガジンその235 2017.9.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:小野祥之
編集長:藤原栄志郎

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2017年9月8日 第234号

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      古書市&古本まつり 第55号
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━━━━━【9月10日~10月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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第83回 彩の国 所沢古本まつり(埼玉県)

期間:2017/09/06~2017/09/12
場所:くすのきホール
西武線所沢駅東口前 西武第二ビル8階総合大会場

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藤沢有隣堂・4階古書フェア(神奈川県)

期間:2017/09/07~2017/09/20
場所:有隣堂藤沢店4階ミニ催事場 
藤沢市南藤沢2-1-1フジサワ名店ビル7F

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2017/09/07~2017/09/10
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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第31回 古本浪漫洲 Part 4

期間:2017/09/09~2017/09/11
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
   新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:http://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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第31回 古本浪漫洲 Part 5(300円均一)

期間:2017/09/12~2017/09/14
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
   新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:http://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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趣味の古書展

期間:2017/09/15~2017/09/16
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

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第19回 沖縄県産本フェア 2017(沖縄県)

期間:2017/09/15~2017/09/24
場所:デパートリウボウ 7F リブロ・リウボウブックセンター
   沖縄県那覇市久茂地1-1-1)

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2017 高遠ブックフェスティバル

期間: 2017/09/16~2017/09/18
場所:長野県伊那市高遠町 旧北條ストアー・ほていや・
   高遠図書館前・町内古 書店店舗・街角本棚多数

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第38回 鬼子母神通りみちくさ市

期間:2017/09/17~2017/09/17
場所:雑司が谷・鬼子母神通り
URL:http://kmstreet.exblog.jp/

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第81回シンフォニー古本まつり(岡山県)

期間:2017/09/20~2017/09/25
場所:岡山シンフォニービル1F 自由空間ガレリア
岡山市北区表町1-5-1

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和洋会古書展

期間:2017/09/22~2017/09/23
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

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五反田遊古会

期間:2017/09/22~2017/09/23
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4 

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第2回 小倉駅ナカ本の市(福岡県)

期間:2017/09/22~2017/10/01
場所:小倉駅ビル3階 JAM広場(JR小倉駅3階 改札前)

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中央線古書展

期間:2017/09/23~2017/09/24
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2017/09/28~2017/10/01
場所:JR浦和駅西口徒歩5分 さくら草通り マツモトキヨシ前

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西部展古書展

期間:2017/09/29~2017/10/01
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9  

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古書の日即売会(名古屋)

期間:2017/09/29~2017/10/01
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12

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京都まちなか古本市(京都府)

期間:2017/09/29~2017/10/01
場所:京都古書会館 1F 京都市中京区高倉通夷川上る福屋町723

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城南古書展

期間:2017/10/06~2017/10/07
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第17回 四天王寺 秋の大古本祭り(大阪府)

期間:2017/10/06~2017/10/11
場所:四天王寺 大阪市天王寺区四天王寺1-11-18

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第20回 天神さんの古本まつり(大阪府)

期間:2017/10/06~2017/10/10
場所:大阪天満宮 大阪府北区天神橋2丁目1番8

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杉並書友会

期間:2017/10/07~2017/10/08
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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第48回 古書籍販売会(熊本県)

期間:2017/10/11~2017/10/16
場所:熊本・鶴屋百貨店 本館6階催事場
熊本市中央区手取本町6-1

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2017/10/12~2017/10/15
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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倉庫会(名古屋)

期間:2017/10/13~2017/10/15
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5丁目1-12

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洋書まつり

期間:2017/10/13~2017/10/14
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 
URL:http://blog.livedoor.jp/yoshomatsuri/

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さいおん古本まつり(沖縄県)

期間:2017/10/14~2017/10/15
場所:牧志駅前広場「さいおんスクエア」
ゆいレール牧志駅前広場・カーゴス前
沖縄県那覇市安里2丁目1番1号

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日本の古本屋メールマガジンその234 2017.9.8

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
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【発行者】
 広報部:小野祥之

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jinmei

『戦前期外地活動図書館職員人名辞書』のこと

『戦前期外地活動図書館職員人名辞書』のこと

岡村敬二


 今年の7月に、標題の人名辞書を刊行することができた。満洲の図書館を中心に調べ始め始めてから30年、戦前期外地の図書館職員や資料室職員の人名辞書を作成しようと作業を始めてからは16年ほど経過している。校正の間にざっと数えてみると、採録した人名は、総数で2700名ほど、なかでは満洲・満洲国関係が約1200名と一番多く、あとは朝鮮720名、台湾480名ほど、北京上海の中国大陸、樺太、南方と続く。

この辞書の特色をあげてみると次のとおりである。
1.外地の図書館や資料室に勤務した職員について、「館長」から「製本手」「小使」まで、判明した人物全員を採録したこと
2.大学の附属図書館長を含め、図書館や資料室に実際に身を置いた人物を採録したこと
3.判明した事績については、分量を規定せず字数を気にしないで記述したこと
4.煩瑣になることをおそれず本文中に出典や記事の年月を記したこと
5.取次の口座を持った版元からの出版であるが、自費によったこと
などである。このうち1の「判明した人物全員を採録した」したというのが、なんといってもこの辞書の一番の特色であると思う。

本書の「はじめに」でも書いたように、図書館の運営は館長一人の力ではなく職員全員の総力によるものであること、さまざまな職種の職員が研究会に属しまた発表などもおこなっていること、職種はその後の昇進などで変更があること、といった理由によっているが、最大の理由は、「採録される人物」「採録されない人物」という格差を回避したいと考えたことである。もちろん人名事典にかぎらず、事典の採録項目は編集責任者の編集会議で決定され、制御される。そうしないと取りとめがなくなってしまうからだ。

だがわたしはこの辞書においてはあえて、「選ばれる」「選ばれない」という判断をしないでおこうと考えたのである。この辞書が対象にしている外地の図書館員など、もともと資料が少ないことから、どうしても資料がみつかる人物、実績が明らかな人物、そして書き手の関心ある人物になりがちである。今回自分が編集する辞書については、こうした差をなくして、すべて、名前を見つけた人物はともかく全員を採録するのだ、と心に定めて編輯し始めたのであった。

そのことは、3の「分量の多少を気にせず記述する」ということとも繋がる。またそれを可能にしたのは、5の「自費による出版」という形態をとったことである。つまり、編纂者が好きに編集し、出版することができたということになる。
このことについてはご批判もあろう。だがわたしはそれが良かった、と今でも思っている。



jinmei
『戦前期外地活動図書館職員人名辞書』 岡村敬二 著
武久出版 定価:4,000円+税 好評発売中!
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zousyo

『蔵書一代』

『蔵書一代』

紀田順一郎


 文筆業という仕事を選んでほぼ半世紀、その間に不要になった本や資料は随時処分してきたが、最後に約三万冊がのこった。その断捨離をめぐってのドタバタや、蔵書の関する論考を配したのが、近著.『蔵書一代』(松籟社、八月刊)である。

 いったい蔵書処分の最終段階は、持ち主がこの世を去ってから実施されるものと相場がきまっているが、私の場合は生前に否応なく、蔵書に「さよなら」を告げざるを得なかったのだから、あまり例を見ないと思われる。すべての本が運び去られた後の書庫たるや、見るも無残な、荒廃した空間でしかなく、ポオの「生きながらの埋葬」を連想させられた。まさか八十歳を過ぎて、これほどの悲哀を経験しようとは思わなかった。

 愚痴はこのくらいにして、本書の反響について記したい。七月のはじめに書店の店頭に並んで、現在までに二ヶ月経過したが、そのあいだ地味ではあるが、絶え間なく反響が続いている。最初のうちは知り合いや一般読者からの感想が多かったが、あとになるほど書評が増えはじめた。すべてに共通していることは、「切ない」「身につまさえる」ということばが含まれていることで、自らの蔵書について、いま重大なことが起ころうとしていることに、気がついているのだろう。

「賢い処分方法」を教えてくれた方もある。国文学のT教授は、定年で研究室を出るにあたり、蔵書を何冊かづつ学生に与え、残りを古書店に処分したという。そのほか書斎をカフェ型の図書館としたり、愛好家仲間を集めてオークションを行ったり、という例もある。

 まだ私より十歳も若い評論家のH氏の場合は、余力のあるうちにと、近く完成する某社の文化施設に全二万冊の蔵書を寄贈しようと、このほど目録を作成したという。
 思えば私は五十代のころから、自分の考えや生き方を反映した蔵書を、一つのまとまりとして受け入れてもらえる施設はないものかと考えてきたが、業績の乏しい者にはムシのよい願望にすぎなかったようだ。しかし、ある程度以上の学者や研究者に関しては、その蔵書や資料類を公的にまとめて継承するようなアイディアはあってもよいのではあるまいか。昔とちがって、蔵書の散逸と再構築というリサイクルの過程にはロスも多く、全体として学問そのものが細分化し、スケールダウンしていくことに手を貸しているような気がしてならない。蔵書問題は複雑で、その根は深い。



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『蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』
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furuhon

「埴原一亟 古本小説集」のこと

「埴原一亟 古本小説集」のこと

古書善行堂  山本善行


 例えば、漱石の『門』や『明暗』、鴎外なら『青年』や『雁』、志賀直哉なら『暗夜行路』など、古典とも言うべき名作を読み返す愉しみは、かけがえのないものであるが、ときには評価の定まっていない誰も知らない忘れ去られた作家の作品を、こっそりひとり愉しむのもまた読書の醍醐味ではないだろうか。

 そのようにして、加能作次郎や中戸川吉二を読み、嘉村礒多や宮地嘉六を読んだ。そして三年ぐらい前に埴原一亟に出会った。最初に読んだのは、文芸復興社の『埴原一亟創作集』で、これが良かった。他の作品集が最初だったらこれほどまで埴原にのめり込まなかったかも知れない。

 さてそうなると、他の作品も読みたい。古本の検索ができる「日本の古本屋」でも探すが、なかなか揃わなかった。でも地道に一冊ずつ集めて、自分が新発見したような気持ちになって読み続けた。すると、本にできたら楽しいだろうと思うようになった。

 私はこれまでに、撰者として黒島伝治の『瀬戸内海のスケッチ』、上林暁の『星を撒いた街』と『故郷の本箱』を出してきたが、埴原一亟もこのあとに続けたいと思うようになった。でもまず、名前が読めないではないか。一亟を(いちじょう)と読むことから説明しないといけないのだから、今のような出版状況では最も出しにくいものだろう。

 夏葉社の島田潤一郎くんに、会うたびに、埴原良いよ、埴原凄いよ、埴原読んでよ、と言い続けていると、一年ほど前に「出しましょうか」と、ちょっと不安な感じではあったが、ゴーサインが出た。
 決まってからは、私の方が不安になった。みなさんに読んでもらえるような本に出来るか、なかなか自信が持てなかった。作品選びは楽しいのだが、読み返すたびに、独りよがりではないかと自分に問いかけた。

 古本小説を中心にする、抒情的な短篇も入れたい、他の作品も読みたくなるようなものも選びたい、だんだんと内容も決まってくる。そして解説も書き上げ、カバーのデザインも決まり、校正者の手にも渡り、一冊の本が出来上がった。
 あとは、読み手のみなさんが、どのように埴原一亟の小説を読んでくださるのか、ということになる。その声がそろそろと届きはじめている。
 



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『埴原一亟 古本小説集』著者 埴原一亟 撰者 山本善行
夏葉社 価格:2200円+税 好評発売中!
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2017年8月25日 第233号

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1.『触媒のうた』-宮崎修二朗翁の文学史秘話―が生まれるまで。
        今村欣史

2.本の数だけ、人生がある 『青春と読書』編集長 加藤啓一

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

━━━━━━━━━━━【自著を語る(188)】━━━━━━━━━━

『触媒のうた』-宮崎修二朗翁の文学史秘話―が生まれるまで。

                        今村欣史


 宮崎修二朗という人がある。現在95歳。ご健在である。
頭の大きな人である。そこにぎっしりと良質の脳みそが詰まってい
る。抜群の記憶力の持ち主。安易に使いたくはない言葉だが、この
人にこそふさわしい、博覧強記。その宮崎翁、若き日の柳田国男に
こう言われたという。「キミ勉強が足りませんね!」。柳田を直接
取材したジャーナリストは、もう日本中探しても宮崎翁をおいてな
いであろう。



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『触媒のうた―宮崎修二朗翁の文学史秘話』 今村欣史 著
神戸新聞総合出版センター刊 定価:1,800円+税 好評発売中!
http://kobe-yomitai.jp/book/396/


━━━━━━━━━━━【編集長登場(17)】━━━━━━━━━━

本の数だけ、人生がある

              『青春と読書』編集長 加藤啓一



集英社の読書情報誌『青春と読書』は、1966(昭和41)年9月に創
刊されました。2018年に創刊50周年を迎える小社の『週刊少年ジャ
ンプ』の2歳年上になります。
毎月20日発売、バッグにすっぽり収まるA5判サイズの小社刊行書籍
のPR誌として定着しております。誌面構成は、新刊情報をメインに
著者インタビュー、対談、書評、そして連載小説、エッセイなどを
掲載しております。過去には、作者の新境地を切り開く、椎名誠
『岳物語』、さくらももこ『もものかんづめ』などの話題作、第144
回直木賞受賞作の木内昇『漂砂のうたう』などの意欲作が本誌連載
作品から刊行されております。

続きはこちら
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『青春と読書』 集英社
毎月20日発売 本体83円+税
http://seidoku.shueisha.co.jp/seishun.html



━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━



『戦前期外地活動図書館職員人名辞書』 岡村敬二 著
武久出版 定価:4,000円+税 好評発売中!
http://www.bukyu.net/


『蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』
紀田順一郎 著 松籟社 定価:1800円+税 好評発売中!
http://shoraisha.com/main/company/index.html


━━━━━━━━━━【映画公開のお知らせ】━━━━━━━━━


映画
 『パターソン』


映画ホームページ http://paterson-movie.com/


■ストーリー
ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソン
(アダム・ドライバー)。彼の1日は朝、隣に眠る妻ローラ(ゴル
シフテ・ファラハニ)にキスをして始まる。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=3351

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

9月~10月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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 【バックナンバーコーナー】
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=20

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 次回は2017年9月中旬頃発行です。お楽しみに!
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*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の全国の古書店に ☆*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

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日本の古本屋メールマガジンその233 2017.8.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:小野祥之
編集長:藤原栄志郎

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2017年8月11日 第232号

■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■
 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
        古書市&古本まつり 第54号
       。.☆.:* 通巻232・8月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回の配信になりました!

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛けください。
次回メールマガジンは7月下旬に発行です。

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━━━━━【8月10日~9月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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藤沢本町古本200円均一セール(神奈川県)

期間:2017/04/11~2017/08/31
場所:藤沢本町トレアージュ白旗ショッピングセンター2F 
「女子文具」会場内  藤沢市藤沢2-3-15

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柏マルイ古本市(千葉県)

期間:2017/07/22~2017/08/30
場所:柏マルイ7階イベントスペース 千葉県柏市柏1-1-11

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第11回 丸善博多店 古本まつり(福岡県)

期間:2017/08/04~2017/09/03
場所:丸善博多店 特設会場  
   福岡県福岡市博多区博多駅中央街1番1号 JR博多シティ8F 

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阪神夏の古書ノ市(大阪府)

期間:2017/08/09~2017/08/15
場所:阪神百貨店 梅田本店 8F催事会場 大阪市北区梅田1-13-13

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第26回東急東横店 渋谷大古本市

期間:2017/08/10~2017/08/15
場所:渋谷東急東横店 西館8階催物場

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京都古書研究会40周年記念
「第30回下鴨納涼古本まつり」(京都府)

期間:2017/08/11~2017/08/16
場所:下鴨神社糺の森 京都府京都市左京区下鴨泉川町59

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書窓会(通称マド展)

期間:2017/08/11~2017/08/12
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

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札幌ブキニスト(古本市)in チカホ (北海道札幌市)

期間:2017/08/11~2017/08/16
場所:札幌地下歩行空間・憩いの広場(西)

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真夏の東京蚤の市

期間:2017/08/19~2017/08/20
場所:大井競馬場 東京都品川区勝島2-1-2 
東京モノレール:大井競馬場前駅徒歩2分
URL:http://tokyonominoichi.com/2017_summer/

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2017/08/24~2017/08/27
場所:JR浦和駅西口徒歩5分 さくら草通り マツモトキヨシ前

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ぐろりや会

期間:2017/08/25~2017/08/26
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 
URL:http://www.gloriakai.jp/

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オールデイズ(名古屋)

期間:2017/08/25~2017/08/27
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12

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好書会

期間:2017/08/26~2017/08/27 
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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第31回 古本浪漫洲 Part 1

期間:2017/08/31~2017/09/02
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2 TEL03-3354-6111
URL:http://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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東京愛書会

期間: 2017/09/01~2017/09/02
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

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反町9月古書会館展(神奈川県)

期間:2017/09/02~2017/09/03
場所:神奈川古書会館1階特設会場 
横浜市神奈川区反町2-16-10

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杉並書友会

期間:2017/09/02~2017/09/03
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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第31回 古本浪漫洲 Part 2

期間:2017/09/03~2017/09/05
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:http://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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第31回 古本浪漫洲 Part 3

期間:2017/09/06~2017/09/08
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:http://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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藤沢有隣堂・4階古書フェア(神奈川県)

期間:2017/09/07~2017/09/20
場所:有隣堂藤沢店4階ミニ催事場 
   藤沢市南藤沢2-1-1フジサワ名店ビル7F
 
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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2017/09/07~2017/09/10
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9
 
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紙魚之會(しみのかい)

期間:2017/09/08~2017/09/09
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第31回 古本浪漫洲 Part4

期間:2017/09/09~2017/09/11
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:http://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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第31回 古本浪漫洲 Part 5 (300円均一)

期間:2017/09/12~2017/09/14
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:http://www.kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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趣味の古書展

期間:2017/09/15~2017/09/16
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

━━━━━【映画『パターソン』上映のお知らせ】━━━━━━
          
妻にキスし、バスを走らせ、愛犬と散歩する、いつもと変わらない日々。
それは美しさと愛に溢れた、かけがえのない物語。
ニュージャージー州パターソンに住む、バス運転手パターソンの7日間の物語。

8月26日(土)より全国順次公開です。

上映予定はこちらからどうぞ。
 
映画配給会社 ロングライド
http://paterson-movie.com/

☆★☆★☆★☆[公開記念キャンペーン開催]☆★☆★☆★☆

映画の公開にあわせて8月12日(土)より「日本の古本屋」で
特集コーナーを設置します。

また、8月25日(金)配信予定のメールマガジンに、この映画の
招待券プレゼント(ペアで5組)がありますので、お楽しみに!
※応募者多数の場合は抽選となります。

特集第1弾 8/12-8/25 映画「パターソン」公開直前!
『ジム・ジャームッシュの詩心とアメリカ詩人』&
『ニューヨークインディーズとヨーロッパ映画』

特集第2弾 8/26-9/8 映画「パターソン」公開記念!
『ビートニクとアメリカ文学』&『名画座、名画と名優たちの思い出』

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 【バックナンバーコーナー】
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_category.php?catid=2

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 次回は2017年8月下旬頃発行です。お楽しみに!
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*゜*.:*☆ 本を売るときは、全古書連加盟の古書店で ☆*.:*゜*
全古書連は全国古書籍商組合連合会(2,200店加盟)の略称です

https://www.kosho.or.jp/buyer/list.php?mode=from_banner

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日本の古本屋メールマガジンその232 2017.8.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:小野祥之

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本の数だけ、人生がある

本の数だけ、人生がある

『青春と読書』編集長 加藤啓一


 集英社の読書情報誌『青春と読書』は、1966(昭和41)年9月に創刊されました。
2018年に創刊50周年を迎える小社の『週刊少年ジャンプ』の2歳年上になります。
毎月20日発売、バッグにすっぽり収まるA5判サイズの小社刊行書籍のPR誌として定着しております。誌面構成は、新刊情報をメインに著者インタビュー、対談、書評、そして連載小説、エッセイなどを掲載しております。過去には、作者の新境地を切り開く、椎名誠『岳物語』、さくらももこ『もものかんづめ』などの話題作、第144回直木賞受賞作の木内昇『漂砂のうたう』などの意欲作が本誌連載作品から刊行されております。

さて、1966年の創刊から時代は移ろい、いま、わたしたちが暮らしている中で、「青春」というワードに出会うことはあるでしょうか。小誌創刊の高度経済成長期は、テレビドラマも歌謡曲も小説も「青春」に埋め尽くされていました。誰もが恥ずかしいとも意識することなく、「青春」を声に出して語り合っていました。いまの若者(いや高齢の方も含めて)のスマホ依存のように「青春」に依存しておりました。成功も失敗も「青春」のせいにしていました。創刊50年を超える歴史の中で、もしかしたら、「青春」はもう古臭いからという理由で『青春と読書』のタイトル変更の話が出たことがあるかもしれません。しかし、先人たちへの感謝を込めて、よくぞ『青春と読書』の誌名を変えずにいてくださいました!と言いたい。初恋の頃の甘酸っぱい気持ち、挫折した時のやり場のない怒り、悲しみ、それは、年齢に関係なく、誰もが共有できる「青春」の思い出です。

そして、幸福感を増幅させてくれる「読書」との出会い、絶望感から這い上がらせてくれる「読書」の力。まさに、本の数だけ人生があります。
詩人サミュエル・ウルマンの言葉に「青春とは人生のある時期をいうのではなく、その人の心の様相をいう」があります。すなわち、「青春」は永遠です。「読書」も読み方に紙と電子版の違いはあっても、「読書」の本質は不変です。
毎月、お手元に届く『青春と読書』から、あなただけに見える「青春」を探し出してください。

                                『青春と読書』編集長 加藤啓一



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Copyright (c) 2017 東京都古書籍商業協同組合

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 『触媒のうた』-宮崎修二朗翁の文学史秘話―が生まれるまで。

 『触媒のうた』-宮崎修二朗翁の文学史秘話―が生まれるまで。

今村欣史


 宮崎修二朗という人がある。現在95歳。ご健在である。
頭の大きな人である。そこにぎっしりと良質の脳みそが詰まっている。抜群の記憶力の持ち主。安易に使いたくはない言葉だが、この人にこそふさわしい、博覧強記。その宮崎翁、若き日の柳田国男にこう言われたという。「キミ勉強が足りませんね!」。柳田を直接取材したジャーナリストは、もう日本中探しても宮崎翁をおいてないであろう。

柳田とはもちろん日本民俗学の開祖ともいうべき巨人。その巨人の自叙伝『故郷七十年』の誕生に大きな関りを持ったのが若き日の宮崎修二朗翁である。柳田邸に聞き書きに入って二日目に、「キミ勉強が…」の叱責だったと。
 その後、宮崎翁は数々の作家や詩人、画家などの文人と交流を持ち、作品を発掘し紹介。日本の文芸と出版文化の興隆に力を注いでこられたのだった。
 そんな人が、わたしがマスターをする店、「喫茶・輪」の常連客となり、わたしに文学談義をしてくださるようになったのである。

翁は自己宣伝を嫌う人であった。文学民俗学関連の著書は50冊を超えるが、ご自分の手柄になるようなことは一切書いておられない。しかし、わたしにしてくださる話は、これまでどこにも発表されていない秘話がふんだんに出てくるのである。それは日本の文学史にとっても貴重な証言だったりする。放っておけばそれらは空のかなたへと消え去ってしまい、あまりにも惜しい。そこでわたしは翁のお許しを得て記録させていただくことにしたのである。それが8年前のことであった。そしてある程度たまった時にある月刊誌に連載を始めた。聞いた話に関連する本を読み込んで裏付けを取り、あるいは現地に足を運んで確かめたりと、一話一話取材を進めた。時には思いがけない発見があって胸躍る思いをしたこともある。そのようにして5年余りの連載の結果、生まれたのがこの『触媒のうた』というわけだ。

 宮崎翁と直接交流のあった文人の一部を挙げておこう。
 柳田国男、阿部知二、有本芳水、足立巻一、内海信之、中河与一、富田砕花、陳舜臣、島尾敏雄、椎名麟三、田辺聖子、野坂昭如、石上玄一郎、辰野隆、杉本苑子、幸田文、伊藤整、竹中郁、小野十三郎、白川渥、初山滋、久坂葉子、秋田実、川内康範、杉山平一、高島敏男、谷澤永一、須田刻太、中川一政、ほか多数。
 作家、出久根達郎氏はこの本を「宮崎氏の口跡を巧みに写している。従って、人物像が鮮明で、生き生きしている。拾われているエピソードが、どれも面白い。ひと口にいうと、楽しい文壇意外史である」と評してくださった。読んだ人に決して失望感を与えることはないと自負している。



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『触媒のうた―宮崎修二朗翁の文学史秘話』 今村欣史 著
神戸新聞総合出版センター刊 定価:1,800円+税 好評発売中!
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