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五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」

五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」

公益財団法人五島美術館 大東急記念文庫 学芸員  長田和也

 西行(一一一八~一一九〇)は『新古今和歌集』に全歌人のうち最多の九十四首入集し、『百人一首』にも「嘆けとて月やは物を思はするかこちがほなるわが涙かな」という歌が採られている、日本を代表する歌人の一人。西行の特色は、歌のみならず、種々の伝説や、それを表現した美術品の数々も含めて愛好されている点にある。このたび五島美術館では特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」を開催し、西行にゆかりのある作品を約百点展示する(会期中、一部展示替えあり)。

 展示は四部構成。第一部「西行とその時代」は、「一品経和歌懐紙」(国宝 京都国立博物館蔵)をはじめとする、数少ない西行自筆とされる資料や、肖像画、歌集、系図等によって西行に迫りつつ、西行の生きた時代を描いた延慶本『平家物語』(重要文化財 大東急記念文庫蔵)等の作品や後鳥羽院、藤原俊成、定家という同時代の重要人物に関する品々も展示する。

 第二部「西行と古筆」では特別展の柱の一つである古筆を展示する。伝来や鑑定に基づく筆者を伝称筆者といい、「伝○○筆」と表記する。伝西行筆の古筆切(古写本の一部を切裁したもの)は、江戸時代には「白河切」「落葉切」「出雲切」等と名付けられ、愛好されてきた。展示室では現在ばらばらに所蔵されている同種の古筆切が並んで掛けられているのを楽しんでも良し、同じ伝西行筆でも多彩な筆跡のあることを楽しんでも良し。また今回は俊成、定家も系譜に連なる御子左家の流れを汲む冷泉家蔵の古筆切、古写本も展示する。その中にも、冷泉家の伝来をもって伝西行筆とされているものがある。後世における伝西行筆の古筆愛好については、図録の解説や各論も参照されたい。

 第三部「西行物語絵巻の世界」ではもう一つの柱、「西行物語絵巻」を展示する。西行没後に編まれた『西行物語』は武士の家に生まれた西行が出家し、その後各地を訪れながら歌を詠み、「願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月の頃」と詠じた通りに入寂するまでを描いた物語。絵巻の題材となった。今回は精緻を極める鎌倉時代の絵巻から色彩豊かな俵屋宗達らによる江戸時代の絵巻まで、「西行物語絵巻」の諸本を集めた。こちらも、かつては一つだったが現在では各所に分蔵されている絵巻が展示室内で再び揃う感動的な光景を目にすることが出来る。なお図録には、現存する「西行物語絵巻」諸本の全容をうかがうべく、各絵巻の場面一覧表を掲載した。

 第四部「語り継がれる西行」では、主に江戸時代に作られた書物、工藝、絵画の各分野における西行を題材とした作品を展示する。こうした作品が作られた背景として、出版文化の隆盛による西行伝説の浸透が挙げられる。室町時代までに形成された西行像が江戸時代の人々によって享受され、伝統を受け継ぎつつも新たな西行の姿が生み出された。そして西行は明治時代には橋本雅邦「西行法師図」(東京大学駒場博物館蔵)が制作される等、歴史画の題材になった。西行が現代に至るまで脈々と語り継がれ、日本文化の通奏低音となっていることを展示室で実感していただけるものと思う。

 成程、伝称筆者はあくまでも古筆家の鑑定や状況証拠に基づくものであって、結局のところ西行自筆ではないという見方や、絵巻に描かれた物語は所詮作り話であり、西行の「実像」を伝えるものではないという見方もあろう。しかし、書物によって伝えられた種々の伝説が伝記的事実の素朴な実証以上に西行の歌を鑑賞する助けとなることもあるだろう。絵巻に描かれている西行の姿に惹かれて、その歌や伝西行筆の筆跡を愛好し、心の支えとしてきた数多の日本人がいたという事実が、今回展示する作品たちによって裏付けられている。

 現代は、過去の積み重ねの中にある。現在「正しい」とされている価値観は絶対的なものなのか、果たして我々は「進歩」の道を歩んできたのか。展示室の名品の数々は、過去の人々が大切にしてきたものに敬意を持って向き合うことの必要性をも教えてくれるだろう。まずは五島美術館ホームーページで主な展示予定作品をご確認いただきたい。

 
 
 
 


五島美術館特別展「西行―語り継がれる漂泊の歌詠み」
会期:令和四年十月二十二日(土)~十二月四日(日)
その他、詳細はホームページをご覧ください。
https://www.gotoh-museum.or.jp/

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石巻にあった古本屋「三十五反」を追って  【古本屋でつなぐ東北(みちのく)1】

石巻にあった古本屋「三十五反」を追って 【古本屋でつなぐ東北(みちのく)1】

(宮城県・ゆずりは書房)猪股 剛

 私が生まれ育った所は、宮城県石巻市の牡鹿半島付け根にある渡波(わたのは)という街である。石巻の中心街から橋を渡って北上川を越えると、そこから渡波を経由して女川町に至るまでの一帯は水産業の街になる。私は水産業の街が持つ独特の気風に子供の頃から馴染めず、早々に東京へ飛び出してしまった。東北で津波を伴う大きな地震があった時も、地元に戻ろうという気概など起こらず、そのまま神奈川県で古本屋を続けた。生まれ育った家の問題があって石巻に戻り、宮城県古書籍商組合に移転した時には、地元を離れてから既に三十年近くが経っていた。

 二〇二二年現在、石巻という街には昔ながらの古本屋は存在していないはずである。私も実店舗は構えていない。今の石巻の人には、古本屋という商売はなかなか珍しく思えるのではないだろうか。何せ街で見かけないのだから。

 私自身は、昔ながらの古本屋を東京へ飛び出す前からすでに知っていた。街に馴染めない代わりに本に馴染めていた私は、石巻駅近くの路地にあった、ある古本屋に実に足繫く通っていた。店の名は「古本屋三十五反」と言った。

 「三十五反」とは民謡由来で、仙台米を北上川経由で江戸に運ぶのに用いられた千石船の帆のサイズのことである。私が古本屋三十五反に通い始めたのはまだ十代。店の存在を知り、中へ入ってみたのは全くの偶然であった。

 外観は店舗に見えない。古い倉庫のような灰色の建物で、古本屋の文字は大きく出ていたが、出入り口は実に閉鎖的で、ちょっと中を覗いてみようという気にはなかなかなれない構えであった。店内は薄暗かった。帳場の奥を覗くと、なぜか生活感が感じられるお座敷のようなスペースがあった。蔵書はかなりの数があり、これぞ古本屋と言うべき雰囲気で、私は魅了され、十代の心をこの場所で満たしていた。

 当時の私は、店主と話すことがあっても二言三言程度でしかなかった。だから、ここの店主から古書について直接薫陶を受けたということは全くない。しかし、私は明らかにこの店から強い影響を受けていた。上京とほぼ同時に神保町に通い始めたのだから。そしていつの間にか、こうして自分でも古本屋をやるようになってしまった。

 上京後、帰省した折に一度だけ三十五反に行ったことがあるが、ほどなく店はなくなってしまい、今では跡地は駐車場になっている。都会にいる間は、あまり三十五反のことを思い出すこともなかったが、こうして石巻に戻った今、この謎の古本屋のことをちょっと調べてみたくなった。

 地元の図書館で、「弁護士布施辰治誕生七十年記念人権擁護宣言大会関連資料」という本を見つけた。そこに三十五反の店主である櫻井清助氏が文章を寄せていた。そして、自身の経歴のことをほんの少しだけ記していた。

 「一九八一(昭和五六)年、わたしは郷里に三十年ぶりに帰ってきて小さな古本屋を始めた」「年余にして広いところに移り、幼稚園の体育館だったとかでステージが座敷になっていた」「少し落ち着いてから、東京時代に関心を持っていた鴇田英太郎(筆者註:石巻出身の戦前の劇作家)について調べ始めた」

 なんと三十五反の店主櫻井氏は、私と同じく長い間東京にいた人だったのだ。ならば昔の神保町も知っているに違いない。三十五反のあの雰囲気は、昔の神保町の様子を自然に継いだものだったのかも知れない。何だか長年の謎が解けた気がした。

 私も櫻井氏から古本屋の灯を勝手に継いでしまっていた。そして気が付くと、私が三十五反に通っていた頃の櫻井氏よりも、今の私の方が古本屋としての業歴がほんの少し長くなっていた。

 
 

 
 
(「日本古書通信」2022年8月号より転載)

 
 
 
 


『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子著
文学通信刊
ISBN978-4-909658-88-3
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2022年10月25日号 第357号

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1.『全国タウン誌総覧―地域情報誌
  ・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』

                         柴田志帆

2.『増補新版 東北の古本屋』
  ―東北に寄り添った古本屋案内と、古本屋から見た震災記録

                  日本古書通信社 折付桂子

3.「流木記」を語る――「書く」という贖罪について

                         窪島誠一郎

4.「“ととのう”街~神田・神保町・御茶ノ水~」

      『神田・神保町・御茶ノ水Walker』編集長 倉持美和

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━━━━━━━━━━【自著を語る(298)】━━━━━━━━━━

『全国タウン誌総覧―地域情報誌
 ・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』

                           柴田志帆

■『全国タウン誌総覧』の特徴
 戦後から現在までに日本各地で作られてきた、地域の情報を発信す
るタウン誌。私が今回制作した『全国タウン誌総覧』は、そのタウン
誌8,715点をリストアップした目録です。地域で発行・流通するため、
これまで網羅的に探せなかった「タウン誌」「地域情報誌」、さらに
「ミニコミ」「フリーペーパー」「リトルプレス」から、地域に焦点
を当てたものも採録しています。全体を地域別に並べ、創刊・休廃刊
年、刊行頻度といった基本事項のほか、誌名変遷や関連文献、所蔵機
関の情報についてもできるかぎり調査・収録しているところが特徴です。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10237

『全国タウン誌総覧―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』
柴田 志帆 編著
皓星社刊
B5判・上製・632頁
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https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407708/

━━━━━━━━━【自著を語る(299)】━━━━━━━━━━━

『増補新版 東北の古本屋』
 ―東北に寄り添った古本屋案内と、古本屋から見た震災記録

                   日本古書通信社 折付桂子

 東日本大震災から一一年が過ぎた。私の故郷は福島県。神保町古書
街近くの勤務先で、連絡の取れない故郷を案じたあの日を今も鮮明に
覚えている。お世話になった古本屋さんたちも大きな被害を受けた。
震災から三週間後、福島県須賀川市と郡山市に店を持つ、古書ふみく
らさんに取材予約を入れ、単身オートバイで被災地へ向かった。そこ
で見た地震被害も衝撃的だったが、ふみくらさんの実家に避難してい
た楢葉町(当時、原発事故による警戒区域)の岡田書店さんとの出会
いで、私の中の何かが変わった。「地震だけなら家に帰れるんですよ。
問題は原発事故で全く先が見えないということ」といった言葉が胸に
刺さる。こうした証言を記録として残したい、残さなくてはと思った。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10247

『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子著
文学通信刊
ISBN978-4-909658-88-3
四六判・並製・312頁(フルカラー)
定価:本体1,800円(税別)好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-88-3.html

━━━━━━━━━【自著を語る(300)】━━━━━━━━━━━

「流木記」を語る――「書く」という贖罪について

                          窪島誠一郎

 私はこのたび「流木記――ある美術館主の八十年」(白水社)とい
う本を出した。副題が示す通り、この本は太平洋戦争開戦の直前に生
まれた私が、戦後の混乱期から敗戦の対価としての高度経済成長の波
にのり、ほとんど阿鼻叫喚というしかなかった経済戦争の「昭和」を
いかにして生きたかという記録であり、高校卒業後にイチかバチかで
開いたスナック商売が大当りして貧乏生活から脱出し、やがて絵画収
集の趣味が高じて信州上田市の郊外に、大正昭和期の夭折画家や学徒
出陣で出征して志半ばで戦場のツユと消えた戦没画学生たちの遺作を
あつめた私設美術館をつくるまでの足跡を辿った、自叙伝とも私小説
ともつかぬサクセスストーリー(?)なのだが、これまで百余冊の本
を上梓しながら鳴かず飛ばずだった半アマチュア作家の私の作品とし
ては珍しく、あちこちの書評欄で取り上げられたりして(このメルマ
ガも然り)、大いに気を良くしているところなのである。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10281

『流木記 ある美術館主の80年』 窪島誠一郎 著
白水社刊
四六判 258ページ
定価 2,400円+税
978-4-560-09894-3
好評発売中!
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b600629.html

━━━━━━━━━━━【編集長登場】━━━━━━━━━━━━

「“ととのう”街 ~神田・神保町・御茶ノ水~」

    『神田・神保町・御茶ノ水Walker』編集長 倉持美和

このたびウォーカームック「神田・神保町・御茶ノ水Walker」
を発行いたしました。

「○○Walker(ウォーカー)」と言えば、「東京ウォーカー」
が浮かぶ方が多いと思います。

「東京ウォーカー」は、グルメや観光スポット、イベント、
エンタメなどおでかけに役立つネタを紹介するエリア情報誌で、
1990(平成2)年に創刊し、2020(令和2)年に休刊となりました。
「東京ウォーカー」と同時に休刊した「横浜ウォーカー」編集部
にいた私は、現在は「エリアLOVEWalker」ブランドの一つ、「横
浜LOVEWalker」の編集長を務めております。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10254

『神田・神保町・御茶ノ水Walker』
角川アスキー総合研究所 刊
ISBN:9784049111194
定価:990円(税込)
好評発売中!
https://www.kadokawa.co.jp/product/322205000767/

━━━━━━━━━━━【プレゼント企画】━━━━━━━━━━

『神田・神保町・御茶ノ水Walker』を、抽選で10名様にプレゼント致します。
ご応募お待ちしております。

応募申込は下記ページにてお願い致します。
 締切日 10月28日(金)午前10時

https://www.kosho.ne.jp/entry2022/1025.html

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『台湾書店 百年の物語〜書店から見える台湾』
台湾独立書店文化協会 著/郭雅暉・永井一広 翻訳
発行元:エイチアンドエスカンパニー
ISBN:978-4-9907596-9-8
定価:2200円+税
好評発売中!
https://www.habookstore.com/

『日本漢籍受容史―日本文化の基層―』 髙田宗平編
八木書店出版部 発行
A5判・上製・カバー装・696頁+カラー口絵16頁
本体予価9,000円+税
ISBN978-4-8406-2260-8
発行予定:2022年11月25日
https://catalogue.books-yagi.co.jp/books/view/2364

━━━━━━━━━━━━【お知らせ】━━━━━━━━━━━

◆自主映画『ボラン』上映のお知らせ◆

第44回ぴあフィルムフェスティバル in 京都2022
【Aプログラム】
2022年11月19日(土) 12時~
京都文化博物館にて上映
(宇治田峻監督『the Memory Lane』と併映)
https://pff.jp/44th/award/competition-kyoto.html

━━━━━━━━【第62回東京名物神田古本まつり】━━━━━━

◆青空掘り出し市◆
「東京名物・神田古本まつり」、
神田神保町が総力をあげて3年ぶりに開催されます。

【主催】神田古書店連盟
【共催】千代田区
【後援】東京都、千代田区観光協会
【期間】10月28日(金)~11月3日(木・祝)
【時間】10月28日~30日:10時~19時
    10月31日~11月3日:10時~18時
【会場】神田神保町古書店街(靖国通り沿い・神田神保町交差点他)

詳しくは
https://jimbou.info/news/20220915.html

◆特選古書即売展◆
和洋の古典籍、古地図、歴史学、民俗学等の学術書、近現代日本文学の
初版本や草稿、映画、美術、趣味など個性あふれる十数店が出店いたします。

【期間】10月28日(金)~30日(日)
【時間】10時~18時(最終日17時まで)
【会場】東京古書会館地下1階(東京都千代田区神田小川町3-22)

詳しくは
https://www.kosho.or.jp/event/detail.php?mode=detail&event_id=4712
https://tokusen-kosho.jp/

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

10月~11月の即売展情報

※新型コロナウイルスの影響により、今後、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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【発行】
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 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部・編集長:藤原栄志郎

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「流木記」を語る――「書く」という贖罪について

「流木記」を語る――「書く」という贖罪について

窪島誠一郎

 私はこのたび「流木記――ある美術館主の八十年」(白水社)という本を出した。副題が示す通り、この本は太平洋戦争開戦の直前に生まれた私が、戦後の混乱期から敗戦の対価としての高度経済成長の波にのり、ほとんど阿鼻叫喚というしかなかった経済戦争の「昭和」をいかにして生きたかという記録であり、高校卒業後にイチかバチかで開いたスナック商売が大当りして貧乏生活から脱出し、やがて絵画収集の趣味が高じて信州上田市の郊外に、大正昭和期の夭折画家や学徒出陣で出征して志半ばで戦場のツユと消えた戦没画学生たちの遺作をあつめた私設美術館をつくるまでの足跡を辿った、自叙伝とも私小説ともつかぬサクセスストーリー(?)なのだが、これまで百余冊の本を上梓しながら鳴かず飛ばずだった半アマチュア作家の私の作品としては珍しく、あちこちの書評欄で取り上げられたりして(このメルマガも然り)、大いに気を良くしているところなのである。

 だが、この本が読者の関心を惹いたのは、太平洋戦争開戦から八十年を生きた私の波瀾万丈といってもいい人生(たとえば戦時中二歳九日で生父母と離別し、空襲で焼け出された貧しい靴修理職人夫婦のもとで育てられ、その後開業した水商売が当って大儲けしたこととか、戦後三十余年経って再会した父親が何と「飢餓海峡」や「越前竹人形」などのベストセラーで知られる直木賞作家の水上勉氏であったこととか)、あるいはスナック商売のかたわら没頭した絵画収集によって、まがりなりにも一応の自己形成をとげてゆく過程というか、あっちにぶつかりこっちにぶつかりしながら、「昭和」という時代の濁流にのまれて生きた「流木」そのものの運命への共感からきていることも確かな気がするのだが、同時にもう一つ、この物語のタテ軸をなす形で語られている数々の病との戦い、八十歳という老齢にいたった今も、五指をこえる大病をかかえた人間であることへの読者の同情があるようにも思われる。

 七十四歳でおそわれた突然のクモ膜下出血、七十六歳での陰茎ガン(二百万人に一人という確率で発症するきわめて珍しいガンだそうだ)、その翌年に見舞われた間質性肺炎、心臓動脈瘤、さらに三十数年間悩まされつづけているアトピーとならんで根治困難といわれる皮膚病の尋常性乾癬との戦い等々、のりこえてきたその「病歴」のすさまじさにも読者は圧倒されるにちがいない。「流木記」をめくった読者は、筆者である私の奇縁と偶然、不条理と必然のあいだをゆれ動いた八十年に興味をもつと同時に、そうした数多くの病をくぐりぬけてきた強運ぶりにも瞠目するにちがいないのである。

 「流木記」の冒頭は、「二〇一八年八月十日、尾島真一郎はペニスをうしなった」という一行から書き起こされている。
 これは私が(文中では尾島真一郎という仮名を使っているが)、東京慈恵会医科大学附属病院泌尿器科において、担当医師から「陰茎ガン」を宣告されるシーンだが、前段で紹介したように、「陰茎ガン」というのは何百万人に一人というまるでジャンボ宝くじ並みの確率で発症する部位のガンだそうで、私が七十六歳九ヶ月をもって永年慣れ親しんだ己が性器の切除手術をうけるという衝撃的な文章ではじまるのである。その後この本のあちこちにペニスをうしなったあとの私の生活に生じた身体的不具合や、(若い頃ほどではないにしても)日夜性的妄想にかられるたび、悶々烈々とのたうつ竿ナシ男の慨嘆が語られていて切ないのだ。現在信州上田で営む美術館「無言館の運営の苦労や、経済難のために愛蔵していたコレクションを手放さねばならなくなった孤独や喪失感も切々と訴えられているのだが、それより何より老齢の主人公をおそったクモ膜下出血や肺炎、心臓病などの死地からの奇跡的な生還、その「病歴」のトドメをさすようにおそってきた「陰茎ガン」によって、ついにペニスまで喪失するにいたった八十男の哀れが読者の憐憫をさそってやまないのである。

 しかし、この不幸な病との戦いを出来るかぎり包みかくさず、ありのままに綴った「流木記」は、けっして老年にして大事なチンポをうしなった筆者の絶望を語るために書かれた本ではない。私が一番書きたかったのは、そうした幾多の病におそわれつつ戦前、戦中、戦後の時代の激変にもてあそばれ、いかに敗戦(日本人戦死者三百数万人!)の見返りとしての経済成長に自分が救われ、八十歳の現在まで生きのびることができたかという事実なのだった。「ことによると、戦没画学生の美術館をつくったのは、そうした自らにあたえられた時代の恩恵(?)に対するザンゲの気持ちからだったのではないのか」「あの戦争に対して何一つ自省や悔悟の態度をしめすことなく、ただひたすら一億総参加の物欲レースに加わってきた自身の罪滅しのためにつくった美術館が無言館ではなかったのか」

 うまく言えぬが、ことによると己がペニスもろとも行き場をうしない、昭和、平成、令和の袋小路へと追いこまれた一本の「流木」の末路を書くことこそが、この本にあたえられた贖罪の一つではなかったかと自問しているところなのである。

 
 
 
 


『流木記 ある美術館主の80年』 窪島誠一郎 著
白水社刊
四六判 258ページ
定価 2,400円+税
978-4-560-09894-3
好評発売中!
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b600629.html

Copyright (c) 2022 東京都古書籍商業協同組合

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「“ととのう”街 ~神田・神保町・御茶ノ水~」

「“ととのう”街 ~神田・神保町・御茶ノ水~」

『神田・神保町・御茶ノ水Walker』編集長 倉持美和

 このたびウォーカームック「神田・神保町・御茶ノ水Walker」を発行いたしました。

 「○○Walker(ウォーカー)」と言えば、「東京ウォーカー」が浮かぶ方が多いと思います。

 「東京ウォーカー」は、グルメや観光スポット、イベント、エンタメなどおでかけに役立つネタを紹介するエリア情報誌で、1990(平成2)年に創刊し、2020(令和2)年に休刊となりました。「東京ウォーカー」と同時に休刊した「横浜ウォーカー」編集部にいた私は、現在は「エリアLOVEWalker」ブランドの一つ、「横浜LOVEWalker」の編集長を務めております。

 「横浜LOVEWalker」は、「横浜ウォーカー」と何が違うのか? 字面では「LOVE」が加わっただけですが、コンセプトはかなり違います。
まず、定期刊行の紙媒体はありません。WEBやSNS、YouTube放送を中心に展開しています(もちろん雑誌も不定期で発行します)。また、「ウォーカー」はその街に遊びに行く人たちに向けた雑誌で、編集部のスタッフがリサーチ・取材した最新のおでかけ情報を紹介していましたが、「LOVEWalker」は”ジモト愛“をテーマに地域活性を推進することを目的にした地域共創メディアで、 “その街が好きになる”情報を地元の人たちと共に発信しています。※WEBサイト(https://lovewalker.jp/yokohama/)では、地元の人たちが執筆するコラム連載が多数掲載されています。

 そんな「LOVEWalker」のコンセプトも取り入れて製作したのが「神田・神保町・御茶ノ水Walker」です。“地元を愛する人たちと共に”“より深く掘り下げた”企画が、メイン特集の「心がととのう街歩き ベスト25トピックス」です。

 特集タイトルの「心がととのう街歩き」ですが、「神田・神保町・御茶ノ水という3つのエリアを象徴するキーワードを入れたい」という思いがありました。とはいえ、3エリアの特徴はかなり個性的で、一つの言葉でまとめるのは難しく、部内でも何度か話し合いを重ねました。その中で出てきたのが、サウナー効果で一気にメジャーになった「ととのう」という言葉です。きっかけは、神田ポートビルにある「SaunaLab Kanda(サウナラボ神田)」。サウナーの間で話題の場所ということで、リサーチも兼ねて体験しに行くと若い男女の多いこと! 文字通りの“ホットスポット”で、私自身、体も心も“ととのう”ことができました。また、編集スタッフからは、「街を歩いていると、新しいビルの横にすごく古い建物があったりして、その雑然とした雰囲気がなぜか心地よくて落ち着く」という話を聞き、【ととのう(整う、調う)=「きちんとそろう」「調和がとれる」「まとまる」】から、「ととのう」をキーワードに、企画構成を進めていきました。

 ”地元を愛する人たちと共に“という点では、地元企業や地元在住、街づくりを進める方々など、多くの方にさまざまな形でご協力いただきましたが、メイン特集以外でも、コミックエッセイ「気になるスポット調査隊」では、通常では見ることができない「古書交換会」の様子を取材させていただきました。「古書交換会がほぼ毎日行われているのは、世界中で神保町だけ」という話は、ぜひとも多くの方に知ってほしいと思っております。

 「食でととのう」「体験でととのう」「街がととのう」と、若干こじつけに近いものもあるかもしれませんが、ニュースだけでなく歴史やトリビアなど、さまざまな切り口で神田・神保町・御茶ノ水の魅力を伝えておりますので、ご覧になっていただければ幸いです。

 
 
 
 
横浜LOVEWalker(WEB)
https://lovewalker.jp/yokohama/

 


『神田・神保町・御茶ノ水Walker』
角川アスキー総合研究所 刊
ISBN:9784049111194
定価:990円(900円+税)
判型:A4正寸、平綴じ
ページ数:84p
好評発売中!
https://www.kadokawa.co.jp/product/322205000767/

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『増補新版 東北の古本屋』―東北に寄り添った古本屋案内と、古本屋から見た震災記録

『増補新版 東北の古本屋』―東北に寄り添った古本屋案内と、古本屋から見た震災記録

日本古書通信社 折付桂子

 東日本大震災から一一年が過ぎた。私の故郷は福島県。神保町古書街近くの勤務先で、連絡の取れない故郷を案じたあの日を今も鮮明に覚えている。お世話になった古本屋さんたちも大きな被害を受けた。震災から三週間後、福島県須賀川市と郡山市に店を持つ、古書ふみくらさんに取材予約を入れ、単身オートバイで被災地へ向かった。そこで見た地震被害も衝撃的だったが、ふみくらさんの実家に避難していた楢葉町(当時、原発事故による警戒区域)の岡田書店さんとの出会いで、私の中の何かが変わった。「地震だけなら家に帰れるんですよ。問題は原発事故で全く先が見えないということ」といった言葉が胸に刺さる。こうした証言を記録として残したい、残さなくてはと思った。

 古本と本の雑誌である『日本古書通信』でも、伝えられることはあるはず。それ以来、震災・津波・原発事故に負けずにがんばる東北の古本屋さんたちの姿を取材し続け、『日本古書通信』にリポートを掲載してきた。二〇一八年には全古書連加盟の東北の古本屋さん全店を、店舗のある店には実際に足を運び店主に話を伺い地図と写真も付けて案内、無店舗の店もできるだけ特徴がわかるよう紹介した。その古本屋案内と震災ルポをまとめて、小著『東北の古本屋』を作ったのが二〇一九年秋のことである。

 少部数の自費出版であったが、東北の古本屋さんたちから続々と注文が寄せられた。『河北新報』や『赤旗』、雑誌『地域人』に紹介され、岡崎武志氏が『東京新聞』の「二〇一九年、今年の三冊」に選んでくださり、在庫は瞬く間になくなった。思いがけない反応は嬉しかったが、各地の図書館などからの注文に応えられないことが心苦しくもあった。そんなとき、文学通信さんから新版を出してくださるというありがたいお話をいただいた。

 この三年間で新規加入や開店もあれば閉店や廃業もある。旧版の記述も記録として生かしつつ、全面的に修正、加筆、新たに二〇二一年、二〇二二年のリポートも収録した。また、業界用語などには注釈を加え、詳細な索引も付した。私の拙い手書きの地図は描き直して見やすくなり、オールカラーの写真もより大きく配置され迫力が増した。一般の方にも手に取っていただきやすい本に出来上がったと思う。ちなみに表紙は、担当編集者が描いてくれた、あるお店の棚の風景である。どこのお店か、ぜひ読んで見つけていただきたい。

 この三年間はコロナ禍の三年間でもあった。二〇二〇年の春は、東京神保町でも古書街が閉まり、古書市場も古書即売展も休みになり、街がひっそりと静まり返っていた。同じころ東北でも古書市場が開けず、予定していた即売展が中止になったりしていた。ただその後は、宮城県と岩手県では、感染状況を見極めながら、できるだけ古書の灯を消さぬよう、古書店同士のつながりを保つよう、市場を開催している。

 今年の五月二九日には、二年間延期された「第二回松島皐月大入札会」が開催された。モチベーションを保つのが大変だったと思うが、宮城の若い業者を中心にまとまって開催にこぎつけ、宮沢賢治本を筆頭に多様な出品物が落札され好評を博した。企画、運営、目録作成、広報から後片付けまで自店を犠牲にしての開催には、相当な覚悟と苦労があったと思われる。地方では打ち合せに集まるにも距離があって大変なのだ。しかし、宮城の古書店たちは、今度は第二回「サンモール古本市」を盛り上げようと尽力している。昨年から仙台市の老舗新刊書店・金港堂を場として始まった催事。こちらもコロナ禍に負けずに継続されている。

 この力の源は何なのだろう。昭文堂書店さんは「連帯の機運が満ちてきた」と仰る。組合としてのその連帯の力こそ、共に大震災を乗り越えたゆえに生まれた共同体としての力(火星の庭談)なのではないか。阪神淡路大震災を経験した兵庫古書組合の連帯は、今に続くサンボーホールひょうご大古本市を生み出した。東北の業界にも同様に、つながりを大切にという思いが脈々と流れているのだと思う。

 東北の古書店有志が力を合わせるアオモリ古書フェア、より広がりを見せるイービーンズ古書展に加え、組合員以外の店と歩調を合わせた山形の催事も始まった。また、福島県でも組合員有志が、地元の出版社らと共に会津ブックフェアを企画中だ。本との出会いの場が広がっていることが嬉しい。

 東北の古本屋さんを取材して感じたのは、地域に対する思いの深さ、地域の文化を支えているという矜持である。ベテランが「地元の資料は地元にあるべき」と語れば、若手も「地元に根差して地域の方に愛される店に」と目を輝かす。店舗率も高い。原発事故による帰還困難区域だった楢葉町に帰還、開店した岡田書店さんは今年で七年目、しっかり地元に根付いてきている。これこそが本来の“復興”ではないか。こうした郷土への思いに震災の経験が加わり、連帯の意識が強まった東北の古書業界は、きっと今後も長く地元の文化を支え続けてくれるに違いない。紙の力、本の力、そして本と人をつなぐ古本屋さんの力を信じて、これからも本の世界の片隅からエールを送り続けたい。

 
 
 
 


『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子著
文学通信刊
ISBN978-4-909658-88-3
四六判・並製・312頁(フルカラー)
定価:本体1,800円(税別)好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-88-3.html

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『全国タウン誌総覧―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』

『全国タウン誌総覧―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』

柴田 志帆

■『全国タウン誌総覧』の特徴
 戦後から現在までに日本各地で作られてきた、地域の情報を発信するタウン誌。私が今回制作した『全国タウン誌総覧』は、そのタウン誌8,715点をリストアップした目録です。地域で発行・流通するため、これまで網羅的に探せなかった「タウン誌」「地域情報誌」、さらに「ミニコミ」「フリーペーパー」「リトルプレス」から、地域に焦点を当てたものも採録しています。全体を地域別に並べ、創刊・休廃刊年、刊行頻度といった基本事項のほか、誌名変遷や関連文献、所蔵機関の情報についてもできるかぎり調査・収録しているところが特徴です。

■本書を作ったいきさつ
 中学生の頃に知った『本の雑誌』に「地方・小出版よろず案内」(川上賢一)などの記事がありました。これが、私が地方出版物や自主制作の出版物に関心を持ったきっかけです。ですが、タウン誌自体を特にたくさん集めていたり読んでいたりしたわけではなく、『ぴあ』も兄弟デュオ・キリンジの渋谷公会堂ライブ(2003年5月)のチケットをとる際に買ったくらい。一方、大学入学前に『おもしろ図書館であそぶ―専門図書館142館完全ガイドブック』(毎日新聞社,2003年)を購入し、この本で大宅壮一文庫などの雑誌専門の図書館があることを知りました。

 レファレンスツールの専門出版社で働いていた頃は、国立国会図書館に必ずしも全て所蔵されていない類の出版物――地域の雑誌、PR誌、社史・記念誌、文化施設の館報、市民活動団体の刊行物、趣味の雑誌などの書誌情報・目次を一覧するツールを作りたいと思っていました。特に、雑誌の現物確認のために所蔵機関を調べる過程で、1つの館で全号所蔵していることはほとんどなく、複数館の所蔵を確認する必要があることや、文学館や博物館などに図書館では所蔵されていないような雑誌があることに気づきました。そして、『ミニコミ魂』(串間努編,南陀楼綾繁ほか著,晶文社,1999年)や『神保町「書肆アクセス」半畳日記』(畠中理恵子,黒沢説子著,無明舎出版,2002年)を読むうちに、タウン誌などの地域発の雑誌の目録を作ってみたいと考えるようになります。2013年頃から資料を集めてExcelに入力を始めましたが、その後転居・転職などで生活環境が変わったこともあり、しばらく作業を中断していました。

 2020年春、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う飲食店休業・イベント自粛などに伴い、自宅にポスティングされるタウン誌から催事・お店情報が消えました。雑誌自体の休廃刊の動きも加速しそうな気配を感じたので、これまでに刊行されたタウン誌についてまとめておきたいと考え、入力を再開。そしてこの度、雑誌記事データベース「ざっさくプラス」を提供している皓星社とのご縁があり、蓄積したデータを書籍として刊行する運びになりました。

■本書制作に「日本の古本屋」をどう使ったか
 制作過程については「『全国タウン誌総覧』の作り方 ─あとがきに代えて─」に詳しく書きましたが、せっかくなのでここでは「日本の古本屋」の利用について取り上げます。

 1980年代前半頃までに刊行された図書の場合、図書館やオンライン書店などの書誌情報を見ても、概要や目次が分からず、タイトルや分類、件名、注記などを頼りに探す必要があります。同様に、地方雑誌や小雑誌は現在でも既存の雑誌記事索引の収録対象外であることが多く、どの雑誌のどの号に知りたいテーマの記事が載っているかを検索する手段がない状況です。

 そこで、「日本の古本屋」でタウン誌関連の言葉を入れて検索すると、「タイトル」に入っている雑誌の特集名や「解説」に載っている内容情報がヒットすることがあります。『Wander』の「特集:おきなわ雑誌名鑑ふくゎんじぇんぶぁん」や、『あすの三重』の「特集:地域情報誌を考える」などは、こうした検索によって存在を知り、制作に役立てることができました。なお、雑誌の表紙画像が掲載されている場合は、目次や執筆者などの情報からどんな性格の雑誌かを把握する手がかりになります。通常は在庫があるものだけが検索されるようになっていますが、詳細検索からその条件を外せば、これまで登録された出版物のカタログとして使うこともできることは意外と知られていないのではないでしょうか。制作中、コロナ禍での移動自粛や図書館の臨時休館もあったため、求める情報がどこに載っていそうかの当たりをつけ、現物を入手する手段として、「日本の古本屋」が役立ちました。

■おわりに
 近年、雑誌記事索引や所蔵目録のWeb公開、雑誌自体の電子化の動きにより、全国から地域資料にアクセスしやすくなってきました。タウン誌をどう利活用するかについては、本書内の「タウン誌の歴史」で私が触れたほか、近代出版研究所所長の小林昌樹氏による「解説『全国タウン誌総覧』の意義とタウン誌の効能」でも取り上げられています。本書が、調査・研究などにタウン誌がより活用される助けとなることを願っています。

 制作にあたって、可能な限り広く情報を集めましたが、遺漏も当然あるでしょう。今後は、各地域の方々の力をお借りして、追補していきたいと考えています。本書に未収録のタウン誌をご存じの方は、版元の皓星社まで情報をお寄せいただければ幸いです。

柴田 志帆(しばた・しほ)
1984年生まれ、茨城県出身。2007年慶應義塾大学文学部図書館・情報学専攻卒業後、レファレンスツールの専門出版社で書籍編集に従事。現在は、茨城県内の公共図書館で働く傍ら、茨城県出身の女性を応援するフリーマガジン『茨女』の編集に携わる。

 
 
 
 


『全国タウン誌総覧―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』
柴田 志帆 編著
皓星社刊
B5判・上製・632頁
定価:本体15,000円(+税)
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407708/

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2022年10月11日号 第356号

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 。*..*.:☆.:*・日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
 古書市&古本まつり 第117号
      。.☆.:* 通巻356・10月11日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

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━━━━━━━━━【シリーズ書庫拝見7】━━━━━━━━━

国立ハンセン病資料館 患者たちの手で集め、守った資料

                         南陀楼綾繁

 国立ハンセン病資料館の書庫を見たいと思ったのは、YouTubeで観
た一本の動画がきっかけだった。

 今年3月に同館が開催したオンラインミュージアムトーク「図書室
からの招待状~頁をめくり、想いを辿る~」は、図書室職員の斉藤聖
(あきら)さんが閲覧室や書庫を案内し、この図書室の役割を伝える
ものだった。斉藤さんの優しそうな風貌やソフトな語り口が心地よく、
見入ってしまった。

 私はハンセン病については無知だ。映画『砂の器』(野村芳太郎監督、
1974)で、私が偏愛する俳優の加藤嘉がハンセン病患者の老人を演じ、
故郷を追われ、各地をさまよう場面が印象に残っているぐらいだ。ち
なみに、松本清張の原作にはこういった描写はない。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=10202

南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」
の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、
編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

国立ハンセン病資料館
https://www.nhdm.jp/

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「コショなひと」始めました

東京古書組合広報部では「コショなひと」というタイトルで動画
配信をスタート。
古書はもちろん面白いものがいっぱいですが、それを探し出して
売っている古書店主の面々も面白い!
こんなご時世だからお店で直接話が出来ない。だから動画で古書
店主たちの声を届けられればとの思いで始めました。
お店を閉めてやりきったという店主、売り上げに一喜一憂しない
店主、古本屋が使っている道具等々、普段店主同士でも話さない
ことも・・・
古書店の最強のコンテンツは古書店主だった!
是非、肩の力を入れ、覚悟の上ご覧ください(笑)

コショなひと 大屋書房 後編

YouTube 東京古書組合
https://www.youtube.com/channel/UCDxjayto922YYOe5VdOKu9w

━━━━━【10月11日~11月15日までの全国即売展情報】━━━━━

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

※現在、新型コロナウイルスの影響により、各地で予定されている
即売展も、中止になる可能性がございます。ご確認ください。
お客様のご理解、ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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TOKYO BOOK PARK 吉祥寺

期間:2022/05/20~2022/10/30
場所:吉祥寺パルコ2階 武蔵野市吉祥寺本町1-5-1

https://twitter.com/TOKYOBOOKPARK

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第2回 サンモール古本市 in 金港堂(宮城県)

期間:2022/09/29~2022/11/06
場所:金港堂本店 仙台市青葉区一番町2-3-26

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第22回 四天王寺 秋の大古本祭り(大阪府)

期間:2022/10/07~2022/10/12
場所:大阪 四天王寺境内内 大阪府大阪市天王寺区四天王寺1-11-18

http://kankoken.main.jp/

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第27回八王子古本まつり

期間:2022/10/07~2022/10/11
場所:JR八王子駅北口ユーロード特設テント

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横浜市歴史博物館・古書フェア(神奈川県)

期間:2022/10/12~2022/10/23
場所:横浜市歴史博物館1階エントランス(入館無料エリア)
   横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン「センター北」駅より徒歩5分
   https://www.rekihaku.city.yokohama.jp/

http://kosho.saloon.jp/spot_sale/index.htm

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ぐろりや会

期間:2022/10/14~2022/10/15
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

http://www.gloriakai.jp/

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本の散歩展

期間:2022/10/14~2022/10/15
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4
   JR山手線、東急池上線、都営浅草線五反田駅より徒歩5分

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フィールズ南柏 古本市(千葉県)

期間:2022/10/14~2022/11/02
場所:フィールズ南柏 モール2 2階催事場  柏市南柏中央6-7

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京都まちなか古本市(京都府)

期間:2022/10/14~2022/10/16
場所:京都古書会館3階  京都市中京区高倉通夷川上ル福屋町723番地

https://kyoto-kosho.jp/

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平井のはみだし古本市

期間:2022/10/15~2022/10/23
場所:平井の本棚 2階 イベントスペース 江戸川区平井5-15-10
   総武線平井駅北口下車30秒

https://hirai-spheniscidae.peatix.com/

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秋の路面古本市 【第2回】(広島県)

期間:2022/10/15~2022/10/16
場所:広島PARCO本館1F 店頭  広島市中区本通10-1

https://hiroshima.parco.jp/pnews/detail/?id=20505

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ア・モール古本市(北海道)

期間:2022/10/20~2022/10/25
場所:アモールショッピングセンター1階センターコート 住所:北海道旭川市豊岡3条2丁目2‐19

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洋書まつり Foreign Books Bargain Fair

期間:2022/10/21~2022/10/22
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

http://blog.livedoor.jp/yoshomatsuri/

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好書会

期間:2022/10/22~2022/10/23
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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秋の路面古本市 【第3回】(広島県)

期間:2022/10/22~2022/10/23
場所:広島PARCO本館1F 店頭  広島市中区本通10-1

https://hiroshima.parco.jp/pnews/detail/?id=20505

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第101回シンフォニー古本まつり(岡山県)

期間:2022/10/26~2022/10/31
場所:岡山シンフォニービル1F  自由空間ガレリア

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2022/10/27~2022/10/30
場所:さくら草通り(JR浦和駅西口 徒歩5分 マツモトキヨシ前)

https://twitter.com/urawajuku

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特選古書即売展

期間:2022/10/28~2022/10/30
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

https://tokusen-kosho.jp/

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第62回 東京名物 神田古本まつり

期間:2022/10/28~2022/11/03
場所:神田神保町古書店街(靖国通り沿い・神田神保町交差点他)

https://jimbou.info/news/20220915.html

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杉並書友会

期間:2022/10/29~2022/10/30
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第46回 秋の古本まつり―古本供養と青空古本市―(京都府)

期間:2022/10/29~2022/11/03
場所:百萬遍知恩寺境内 京都府京都市左京区田中門前町103

http://koshoken.seesaa.net/

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東京愛書会

期間:2022/11/04~2022/11/05
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

http://aisyokai.blog.fc2.com/

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オールデイズクラブ古書即売会(愛知県)

期間:2022/11/04~2022/11/06
場所:名古屋古書会館 名古屋市中区千代田5-1-12

https://hon-ya.net/

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古書愛好会

期間:2022/11/05~2022/11/06
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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新橋古本市

期間:2022/11/07~2022/11/12
場所:新橋駅前SL広場

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2022/11/10~2022/11/13
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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趣味の古書展

期間:2022/11/11~2022/11/12
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

https://www.kosho.tokyo

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日本の古本屋メールマガジンその356 2022.10.11

【発行】
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 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部・編集長:藤原栄志郎

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国立ハンセン病資料館 患者たちの手で集め、守った資料  【書庫拝見7】

国立ハンセン病資料館 患者たちの手で集め、守った資料 【書庫拝見7】

南陀楼綾繁

 国立ハンセン病資料館の書庫を見たいと思ったのは、YouTubeで観た一本の動画がきっかけだった。

 今年3月に同館が開催したオンラインミュージアムトーク「図書室からの招待状~頁をめくり、想いを辿る~」は、図書室職員の斉藤聖(あきら)さんが閲覧室や書庫を案内し、この図書室の役割を伝えるものだった。斉藤さんの優しそうな風貌やソフトな語り口が心地よく、見入ってしまった。

 私はハンセン病については無知だ。映画『砂の器』(野村芳太郎監督、1974)で、私が偏愛する俳優の加藤嘉がハンセン病患者の老人を演じ、故郷を追われ、各地をさまよう場面が印象に残っているぐらいだ。ちなみに、松本清張の原作にはこういった描写はない。

 しかし、この連載を担当してくれている晴山生菜さんが代表を務める皓星社は、『ハンセン病文学全集』全10巻(2002~2010)をはじめ、ハンセン病関係の書籍を多く刊行している。しかも、動画に登場する斉藤さんはもともと皓星社の縁で同館に関わるようになったというのだ。

 晴山さんによれば、近年、ハンセン病資料館の活動は活発になっており、展示や外部への発信も盛んだという。私のようにYouTubeをきっかけに、同館に関心を持つ人も多いのだろう。2022年7月には来館者総数50万人を達成するなど、新型コロナウイルス禍であることを差し引いても来館者は増加傾向にあるようだ。そのような情報を手がかりに、私にとっては未知の世界を訪れてみよう。

清瀬駅からハンセン病資料館へ

 7月1日、清瀬駅からバスに乗る。商店街を抜けると、そこから先は国立看護大学校、救世軍清瀬病院、東京病院など、医療関係の施設が目に付く。昔は「病院銀座」と云われていたそうだ。

 「ハンセン病資料館」というバス停で降りる。道を渡ってすぐのところにあるのが、国立ハンセン病資料館だ。ハンセン病問題に関する正しい知識の普及啓発によって偏見・差別の解消をめざす目的で、1993年に「高松宮記念ハンセン病資料館」として開館。2007年に国立ハンセン病資料館となった。同館の奥は、国立療養所多磨全生(ぜんしょう)園の敷地になっている。

 ハンセン病は古来、「癩(らい)病」と呼ばれ、差別の対象となってきた。1907年(明治40)には「癩予防ニ関スル件」が公布され、全国を5区域に区分し、各地に公立療養所がつくられた。1909年(明治42)に設立された全生(ぜんせい)病院が、のちに多磨全生園となる(以下、ハンセン病の歴史については『国立ハンセン病資料館常設展示図録2020』を参照)。

 1931年(昭和6)には、「癩予防法」によって、すべての患者を強制的に療養所に隔離できるようになった。これにより、1934年(昭和9)に20歳で全生病院に入院したのが、北條民雄である。北條は川端康成に小説を送ったところ激賞され、『いのちの初夜』が文學界賞を受賞するが、二十三歳で亡くなる。

 北條はこの地にやって来たときの心境を、『いのちの初夜』でこう綴っている。
「一時も早く目的地に着いて自分を決定するより他に道はない。尾田はこう考えながら、背の高い柊の垣根に沿って歩いて行った。(略)彼は時々立止って、額を垣に押しつけて院内を覗いた」(田中裕編『北條民雄集』岩波文庫)

 全生病院の敷地は3メートル近いヒイラギの垣根と堀で囲まれていた。ヒイラギは一般社会と患者の世界を隔てるものであり、患者の脱走を防ぐものでもあった。

 ハンセン病は、「らい菌」という細菌に感染することで引き起こされる感染症の一種だ。戦後、プロミンという特効薬によって、回復する患者が増えていった。しかし、国は従来通りの隔離政策を続け、多くの人が治った後も故郷や家族のもとに帰ることができず、療養所で亡くなった。

 現在、全国に国立13、私立1のハンセン病療養所があるが、入所者の高齢化などにより、その人数は年々減少している。

国立ハンセン病資料館外観。

病と差別に関する資料群

 ハンセン病資料館の図書室は2階にある。入り口で斉藤聖さんが迎えてくれる。動画と同じく、柔らかい人柄だった。
「皓星社にいた大学の後輩から、ここで資料をデータ化する仕事を紹介されました。当時はハンセン病については何も知らなかったです」と話す。前任者の退職に伴い、2021年に正規の職員となる。働くうちに、ここにある資料が他に替えがきかない、貴重な資料であることが判ってきたという。「本好きの自分にとっては天職みたいな職場ですね」と笑う。

 早速、閲覧室の奥にある書庫に案内していただく。

 図書室の蔵書数は現在3万6000点。そのうち書庫に収蔵されているものは約2万点だ。日本十進分類表(NDC)で配列されるものと、特殊分類の資料がある。後者のうち「H」が付くのは全国のハンセン病療養所や海外の療養所、関連団体・施設に関する資料だ。各療養所の年報や周年誌、報告書などが並ぶ。全生園関連では開院当初から発行されている『統計年報』とともに、『予定献立表』『国内諸行事プログラム』などとテプラ(印字機)で作成されたタイトルが貼られ、製本されたものもある。これらは後述する山下道輔さんらの手になるものだ。

「図書室の資料には図書資料と文書資料があります。図書資料は書籍や雑誌、ファイル類などで、文書資料は公文書や書簡などです。後者は別の収蔵庫に入っています。ただ、このように合本された一部の文書資料は図書資料扱いになることもあります」と、斉藤さんが解説する。

 療養所関係で重要なのは、各療養所が発行する機関誌だ。全生園では1919年(大正8)に『山桜』が謄写版で創刊。1952年に『多磨』と改題し、現在も発行されている。これらの雑誌には園内での患者の生活や感情が反映されており、利用度も高い。そのため、閲覧室に開架されている。

 このほか、1953年に成立した「らい予防法」への反対闘争や、1996年に同法が廃止された後に行なわれた国家賠償請求訴訟(2001年に国が控訴断念)に関する資料も並んでいる。新聞記事をファイリングしたものも多い。

 また、ハンセン病に限らず、水俣病、同和問題など、病と差別に関する資料を広く集めている。

ハンセン病資料館閉架書庫内

全生病院発足当時の『統計年報』

「ハンセン病」の一言を追いかけて――患者作品から週刊誌まで

 一方、NDCで配列された資料では、やはり、494.83(ハンセン病)が最も多い。海外の研究書も多い。次に多いのは900番台の文学で、療養所内で短歌、俳句、詩、小説などの創作活動が盛んだったことを示す。それ以外では、ハンセン病者が療養した草津温泉に関する本や、被差別、天皇制、人権問題に関する本が目に付いた。

 タイトルに「らい病」「ハンセン病」と入っていない本でも、どこかに記述があれば、スタッフ用の検索システムでヒットするようになっている。

 雑誌の棚には学術誌のほか、ハンセン病関連記事が載った一般誌もある。熊本ホテル宿泊拒否事件(2003)のルポが載った『女性セブン』、実在の回復者をモデルとした「すばらしきかな人生」掲載の『ビッグコミック』など。

 別の棚には、写真家の趙根在(チョウグンジェ)さんの蔵書約4000冊が並んでいる。趙さんは1961年に全生園を訪れたことから、全国の療養所で患者を撮影。指先に知覚麻痺のある視覚障碍者が舌で点字を読む様子を撮った写真が印象深い(『この人たちに光を 写真家趙根在が伝えた入所者の姿』国立ハンセン病資料館展示図録)。1997年に亡くなった後、寄贈された蔵書にはハンセン病関連はもちろん、歴史や民俗、文学に関する本も含まれる。本人が残したメモや付箋もそのままにされている。

 また、一番奥の棚にはマイクロフィルム化された資料の原本が、中性紙の箱に入れて保存されている。いずれも貴重なものばかりだ。その中には園内で子どもたちが通った「全生学園」の児童文芸誌『呼子鳥』(1934年創刊)や、映画『砂の器』の脚本もある。

 書庫を一通り見終えて、これまで知らなかったハンセン病の世界に、本を通じて少しだけ触れられた気持ちになった。

1928年から英国で発行されている研究雑誌『Leprosy Review』の合本

趙根在旧蔵書

マイクロフィルム化された資料の原本。

児童文芸誌『呼子鳥』。表紙の版画も子どもたちによるもの

全生図書館の時代

 ハンセン病資料館の図書室が現在のようになるまでには、多くの人たちの血がにじむような努力があった。

 全生病院に図書館ができたのは、1921年(大正9)。娯楽場内の一画だった(以下、全生園の歴史については、多摩全生園患者自治会編『倶会一処(くえいっしょ) 患者が綴る全生園の七十年』一光社 を参照)。雑誌『山桜』を創刊した栗下信策の熱意に基づくものだった。ここで所蔵されていたのは、一般教養のための書籍や雑誌が中心だったようだ。

 1936年(昭和11)には、新しい図書館が竣工。「全生図書館」となる。建材は上野の帝室博物館(現・東京国立博物館)を解体した際、一部を払い下げてもらったという(『ガイドブック 想いでできた土地』国立ハンセン病資料館)。現在、この建物は理髪・美容室となっている。「蔵書も沢山あり良く利用したものだ」(「写真で綴る思い出album」、『多磨』2010年1月号)という回想もある。

 この図書館の担当だったのが、入所者の松本馨だった。松本は「いつかは、われわれが『らい』の歴史を告発しなければ、と、そのころから考えており、そのため『らい』の文献だけの書棚を作り、貸し出しはせずに、カギをかけて保管していた」(瓜谷修治『ヒイラギの檻 20世紀を狂奔した国家と市民の墓標』三五館)。

 その後、松本は子どもの患者たちが暮らしている少年舎の寮父となり、数年後に戻ってみると、ハンセン病関係の資料を収めた書庫は無残な状態になっていた。「北条【ママ】民雄のものを集めた『北条文庫』も消え、本らしい本は残っていなかった」という。

 北條民雄の蔵書については、別の証言もある。北條とともに全生園で暮らした光岡良二は、北條の没後、形見分けとして蔵書から何冊かもらった。あとの本は全部患者図書室(全生図書館)に寄贈するつもりだった。

 しかし、病院側から「患者図書館内に『北条文庫』を作って永く記念するつもり」だから形見分けした本を返せと云われる。光岡らは生前の北條を厄介者扱いした病院当局が、死後、北條が文壇で知られるようになったことを利用しようとすることに怒った。

 「昭和二十三年、私が七年間の隔たり(引用者注:社会復帰のこと)をおいて再入院して来た時、患者図書館の書庫の『北条文庫』の棚は、どの全集もほとんど数冊の端本となり、北条の蔵書とは何の関係もない雑本が混り込み、惨憺たる荒廃の姿を曝していた。(略)当局がわざわざ設けた記念文庫にふさわしい管理の責任と誠意をそそいでいなかったことは明らかであった」(光岡良二『いのちの火影 北条民雄覚え書』新潮社)

 入所者にとって、図書館は「娯楽というより救いのオアシス」で「苦しい療養生活を支えてくれた大きな柱」だったことは間違いない(柴田隆行「解題にかえて」、山下道輔『ハンセン病図書館 歴史遺産を後世に』社会評論社)。しかしその一方で、ハンセン病関係の資料はないがしろにされていたのだ。

山下道輔さんとハンセン病図書館

 そこに登場するのが、前に触れた山下道輔さんだ。以下、『ハンセン病図書館』『ヒイラギの檻』に拠って経緯を見ていく。

 山下さんは1941年(昭和16)2月に、12歳で同じ病気だった父とともに全生病院に入った。この年7月には、全生病院は厚生省の所管となり、「国立癩療養所 多磨全生園」と改称される。

 翌年、山下さんは少年舎「祥風寮」に入る。ここで寮父の松本馨と出会う。松本は17歳のとき、ハンセン病と宣告されて自殺を決意するが、「おれは何のために生まれたのだ」という問いを解くために踏みとどまっている。それだけに、少年舎の子どもたちを熱心に指導した。小説を読み聞かせ、作文と詩を書かせた。このとき山下さんと一緒に学んだのが、のちの詩人・谺雄二だった。

 1966年、活動の停滞により自治会が閉鎖される。その後、1969年に再建されるが、そのとき中心となったのが松本だった。自治会は全生園創立60周年記念事業として、全生図書館内に「ハンセン氏病文庫」を設置することに決めた。そこにはハンセン病の資料を残すことが自分たちの責務であるという、松本の強い思いがあった。

 山下さんは当時、全生図書館の図書委員だった。
「そのとき山下が、『おとっつぁん、オレに資料やらせてくれ。資料に一生かける』と申し出て、資料室の責任者を任された」(『ヒイラギの檻』)

 その言葉通り、山下さんは谺をはじめ各地の療養所の知人に、手紙で資料の寄贈を依頼。神保町や園の周囲の古本屋をめぐり、ハンセン病関係の資料を収集した。

 1977年、創立70周年記念事業として、鉄筋コンクリート造りの「ハンセン氏病図書館」が建てられる(のちに「ハンセン病図書館」と改称)。この場所には、かつて「秩父舎」があり、北條民雄が暮らしていた。名作『いのちの初夜』が生まれた場所に図書館ができるとは、縁を感じる。

 山下さんの資料収集はここで本格化する。二代目園長だった林芳信が亡くなったときには、その蔵書を受け取りに行く。自治会長の松本が業務で各地の療養所に出向く際には付き添って、各園の本棚に同じ本が二冊並んでいると、一冊寄贈してもらうよう頼んだ。
「当時の私の頭には『ハンセン病に関する本ならどんな本でも手に入れたい』という思いしかありませんでした」(『ハンセン病図書館』)

  「ハンセン」という単語に反応しすぎて、プロレスラーのスタン・ハンセンが出てくる本まで入手したというエピソードもある(山下さんと交流の深い写真家・黒崎彰氏のインタビューhttps://leprosy.jp/people/kurosaki/)。本好きなら共感してしまう、行きすぎたハマりっぷりだ。

 林文庫と並んで同館の重要な資料が、『見張所勤務日誌』だ。園内の巡視の報告、郵便、死亡、葬式、面会、帰省などが記録されており、「当時の患者がいかに園・職員の支配下にあったか、それを証明する第一級の資料」だ(『ハンセン病図書館』)。園が所有していたこの資料が処分されようとしたとき、山下さんらが駆け付け、荒縄でくくられたそれらを救出した。

 『見張所勤務日誌』はかなり傷んでいたため、製本に詳しい知人が入所者の「佐藤さん」に指導しながら、製本を進めた。その後、山下さんと佐藤さんは600冊以上を製本したという。佐藤さんが手がけた製本は、いまもハンセン病資料館の図書室にあるが、プロ並みにしっかりした出来だ。

 山下さんは司書としての教育を受けておらず、独自のやり方でハンセン病図書館を運営した。そのどれもが、ハンセン病の専門図書館という特殊性を踏まえたものであることに感心する。

 同館ではNDCに拠らず、「短歌」「俳句」「論文」「ハンセン病資料」などに分類し、それらをまず全生園を先頭に、療養所単位で並べていく。

 療養所の機関誌が重要な資料であることは前に触れたが、同館では全生園が出していた『山桜』のある年の号がごっそり抜けていた。山下さんは全生園の医局の図書館から借りだした原本を手書きで筆写した。不自由な体で根を詰めすぎて、入院するほどだった。

 資料を集めるとともに、それが活用されなければ意味がないとも考えていた。ハンセン病について調べる研究者や学生に全面的に協力し、資料の館外貸し出しも行なった。その代わり、彼らの論文が発表されるとそれを寄贈してもらう。そうやって、蔵書を充実させていったのだ。

 その後、本だけでなく、入所者の生活に関する物品も集めるようになり、二年後にそれらを収容するプレハブ小屋も建てた。
『ハンセン病図書館』には、山下さんの話をもとに同館の見取り図が描かれている。「山下の城 ここで実に多くの人と本について語りあった」という一文に胸が詰まる。ここにはたしかに、本がつないだ人の縁があった。

 「資料を集めて、保存して、そこから利用者が希望する資料を探し出しては提供する。それを手にしたときの利用者の方の喜ぶ顔が何より自分への褒美でした。人の役に立てるというのは、生きている甲斐があるというものです」(『ハンセン病図書館』)

山下さんが筆者した『山桜』

ハンセン病図書館から、ハンセン病資料館図書室へ

 1993年、全生園の隣に「高松宮記念ハンセン病資料館」が開館した。

 ハンセン病の資料を収集保存するという趣旨に賛同し、山下さんはハンセン病図書館の蔵書の一部を寄贈する。しかし、資料館が貸出に消極的な姿勢をとっていることについて不満を持ち、「資料を保存することも大切ですが、それを死蔵させてはいけないと思います」(『ハンセン病図書館』)と述べている。その後も、外部のボランティアと一緒に資料の整理に携わっている。

「当時の図書室は一階の入り口近くにありました」と、2001年から資料館の図書室で働くようになった福富裕子さんは話す。2007年、資料館が国立となり、施設がリニューアルした際に図書室はいまの場所に移る。

 資料館の国立化にともない、山下さんは自治会長からハンセン病図書館が閉鎖されることを告げられ、呆然とする。資料館とハンセン病図書館は別の組織であり、国立化は理由にならないと思うのだが、自治会の真意は判らない。

 ハンセン病図書館は2008年に閉鎖され、蔵書のうち大部分は資料館の図書室に移された。林文庫もここに含まれる。それ以外の資料は、それまでの経緯に釈然としない思いを抱いていた山下さんが、『見張所勤務日誌』のように一部の貴重な資料を親友である谺雄二さんに託した(現在は資料館が所蔵)。現在、閲覧室には、約5000冊の旧蔵書が並ぶ。

山下さんは「資料集めは、遅れてやってきた、わたしの『らい予防法闘争』だ」と語った(『ヒイラギの檻』)。ハンセン病に関する資料を集め、研究者に提供することで、国のハンセン病に関する姿勢を告発しようとしたのだ。

 それとともに、山下さんにとって若い頃から本はなくてはならないものであり、本を集めることが生き甲斐だった。そして、自分が集めた資料の価値を理解してくれる研究者を全力で応援した。

「山下さんから『ハンセン病に興味のある学生が来館したら紹介してほしい』と云われて、何人か紹介しました。あとで論文を書いた人もいます」と、福富さんは話す。若い人にハンセン病研究の未来を託したいという気持ちがあったのだろう。

 開館以来、資料館の運営団体は三度変わっている。図書室も以前は利用しにくい面があったが、現在では開かれた図書室へと変化している。

 現在は、所蔵資料のデータベース化が進み、レファレンスにも丁寧に対応する。館外貸し出しを行なうのは、国立の資料館の図書室としては異例だが、山下さんのハンセン病図書館の伝統を受け継いだと思えば納得する。

「ハンセン病に関して何かしたいという人の役に立つ図書室であってほしい」と、退職した福富さんは云う。その願いは、かつて山下さんが抱いたものでもあっただろう。そして、いま、この図書室を守る斉藤さんの思いでもある。

 ハンセン病の資料をめぐって、過去、現在、そして未来を垣間見た思いだ。

 ハンセン病療養所の人たちが、どんなに過酷な生活を強いられてきたかを、ハンセン病について何も知らなかった私が理解できたと云うのは傲慢だろう。しかし、山下道輔さんの本に対する執念だけは、自分のこととして実感できる。彼のような稀代の本好きのおかげで、多くの資料が受け継がれているのだ。

 聞けば、他の療養所の書庫にも、貴重な資料が所蔵されているのだという。せっかくだから、そこにも足を延ばそう。そうすることで、ハンセン病との距離を少しでも縮めたい。

【追記】国立ハンセン病資料館の常設展示も企画展も素晴らしいので、ぜひご覧ください。また、過去の展示図録や紀要は、在庫があれば無料で入手できます。

 
 
 
 
 
南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。「一箱本送り隊」呼びかけ人として、「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)、『古本マニア採集帖』(皓星社)、編著『中央線小説傑作選』(中公文庫)などがある。

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国立ハンセン病資料館
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2022年9月26日号 第355号

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1.「私たちが図書館について知っている二、三の事柄」を読むにあたって
                          中村文孝

2.あまりにも、あまりにも底辺な      古書現世 向井透史

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━【自著を語る(296)】━━━━━━━━━━

「私たちが図書館について知っている二、三の事柄」を読むにあたって
                          中村文孝

 図書館には国会図書館から専門、大学、学校、私設の図書館まであ
るが、この本では公共図書館について述べている。

 公共図書館は地方自治体が税金を原資に運営している関連施設のひ
とつで、利用されたことのない人はほとんどいないはずだ。が、多く
の利用者は、税金で運営されている他の公共施設と同様に、図書館を
「無料」の貸本屋としてしかみていないのではないか。そこがまず最
初の問題だ。

 図書館の貸出冊数が書店の推定販売冊数を超えたのが、2010年だが、
それ以降は差が拡がるばかりだ。今や本を読むとは、本を買うことか
ら始まるのではなく、借りることからになってしまった。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=9960

『私たちが図書館について知っている二、三の事柄』 中村文孝・小田光雄 著
論創社刊
ISBN978-4-8460-2179-5
定価:本体2,000円(税別) 好評発売中!
https://ronso.co.jp/

━━━━━━━━━【自著を語る(297)】━━━━━━━━━━━

あまりにも、あまりにも底辺な       古書現世 向井透史

 久しぶりに単行本を出させてもらうことになった。
2006年にまとめて2冊(『早稲田古本屋日録』(右文書院)『早
稲田古本屋街』(未來社))出させて以来なので16年ぶりになる。
雑誌連載の単行本化で、2010年夏から2021年末までの日記で
ある。まぁ「日記」というか、毎月店先や街中で見た面白いことを書
いたり、思ったことを書いたものと言った方がいいだろうか。

 一九九一年に高校を卒業してすぐに父親の古本屋で働き始めた。店
番などの他に、卒業式の一週間後に何をするところかも知らないまま
に神保町にある業者の市場で週一回働きはじめて古本屋としての一歩
を踏み始めた。もうキャリアも三十年を超えてしまったのだなぁと改
めて思う。

続きはこちら
https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=9970

『早稲田古本劇場』 古書現世 向井透史 著
本の雑誌社刊
ISBN978-4-86011-472-5
定価:2,200円(税込) 好評発売中!
https://www.webdoku.jp/kanko/page/4860114728.html

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『全国タウン誌総覧
  ―地域情報誌・ミニコミ・フリーペーパー・8700誌』 柴田志帆 著
皓星社刊
B5判上製 632ページ
定価:15,000円+税
978-4-7744-0770-8
好評発売中!
https://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774407708/

『流木記 ある美術館主の80年』 窪島誠一郎 著
白水社刊
四六判 258ページ
定価 2,400円+税
978-4-560-09894-3
好評発売中!
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b600629.html

『増補新版 東北の古本屋』 折付桂子 著
文学通信刊
四六判・並製・312頁(フルカラー)
定価:本体1,800円(税別)
ISBN978-4-909658-88-3 C0095
10月中旬刊行予定
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-88-3.html

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