『なごや古本屋案内』についてシマウマ書房 鈴木 創 |
この秋、『なごや古本屋案内』(風媒社)を刊行しました、名古屋の古書店、シマウマ書房の鈴木と申します。 本書は、名古屋市内を中心に愛知・岐阜・三重県の50軒の古書店を取材し、古本屋めぐりを楽しんでいただくためのガイド本として作らせていただきました。その動機の一つは、かつて名古屋古書組合が発行していた「東海古書店地図帳」が平成13年版を最後に改訂されなくなっていたこと。従来の古本屋ファンのみならず、新たなファンに振り向いてもらうためにも、現状に合った案内本が必要と考えました。 もう一つの動機は、自分自身、古書店を営む若手の同業者として、今こそ、長年この地域で古本の仕事を続けてこられた先輩方に、いろんなお話をうかがっておきたいと思っていたことでした。店主の高齢化や不況などさまざまな理由により、東海地方においては(インターネット専門の業者さんは、若い方も含めて増えているのですが)実店舗を構える古本屋が年々減ってきている現状があります。また、過去に遡っても、名古屋の古書店についての文献は限られていることから、本書を手がけるに際しては、2013年という現時点における名古屋の街の古本屋の記録、店主の方々の証言集としての意味合いも踏まえて、取材と執筆を進めさせていただきました。 実際、この本のなかには、戦前から戦後、高度成長の時代、バブル期以降の現在に至るまで、名古屋の古書店の歩みを反映したさまざまなエピソードが読み取れるかと思います。私自身、古本屋の仕事というのは、単にモノを売るだけの仕事ではなく、世の中や地域の人々との関わりのなかで、読者からまた次の読者へと本を受け継いでいく役割を担っているということを再確認できたように思います。「古本屋は文化を担っている」と、この仕事を誇りにしておられる店主の方々がおられたことも、とても心強く感じました。 なお、それぞれの古書店についての情報や地図のほかにも、本書ではこの地方にゆかりの作家さんなどによる、古本や古書店にまつわるエッセイやイラスト、対談なども多数収録しております。一部の方からは「文芸誌なみのラインナップ」とお褒めをいただきましたが、ご協力いただいた執筆者の皆様のおかげで、(名古屋の方はもちろん、それ以外の皆様にもお楽しみいただける)読み物としても充実した内容になりました。 本書を通じて、街の古本屋をあらためて身近に感じ、実際に足を運ぶ上での手がかりにしていただけたら幸いです。 ※エッセイなど |
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