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『仙台あらえみし日和』ドタバタ記

『仙台あらえみし日和』ドタバタ記

古本あらえみし 土方正志

 なんだかとてつもなくあわただしい、いそがしい。

 3月1日に仙台市一番町アーケードのど真ん中に聳えるファッション・ビル「仙台フォーラス」の3階に〈ブックスペースあらえみし〉をオープン。新刊と古本に古道具、それにカフェまで揃った来年2月までの期間限定営業の本屋である。新刊はつきあいのある各地の版元にだいたい月毎にブックフェアをお願いしている。いままでに河出書房新社、国書刊行会、KADOKAWA、平凡社、偕成社、ボーダーインク、書肆侃侃房、寿郎社の各社が、そして仙台からは河北新報出版センター、東北大学出版会、プレスアートが参加してくれた。これに新潮社、ちくま書房、柏書房、東京創元社、苦楽堂などが続く予定となっている。古本はといえば、仙台からは私たち〈古本あらえみし〉のほかにジェイルハウスブックと阿武隈書房、山形から香澄堂書店、そして東京から西荻・盛林堂書房が集結、新刊・古本共にさまざまにトークイベントも繰り広げた(いとうせいこうさん、京極夏彦さん、若竹千佐子さん、南陀楼綾繁さん、そして盛林堂の小野純一さんなどなどをゲストお迎えした)、かと思えばよせばいいのに、仙台イービーンズ古本まつり、泉中央セルバ古本市、戸田書店やまがた古本まつりにまで出張って、本店たる〈古本あらえみし〉をまわしながらのコレなのだから堪らない。

 だけではない。ご存じのみなさんもいらっしゃるかと思うが、私たち〈古本あらえみし〉は実は零細出版社〈荒蝦夷〉でもある。新刊も出さなければならない。今年に入って東北学院大学『震災学vol.13』に加屋本正一『波照間島』と寺崎英子写真集刊行委員会『細倉を記録する寺崎英子の遺したフィルム』の3冊を刊行している。新刊を出せば出したでそれだけでは済まない。営業もあれば宣伝もある。新刊イベントもやらなければならない。『細倉を記録する寺崎英子の遺したフィルム』では写真評論家の飯沢耕太郎さんに〈ブックスペースあらえみし〉でお話しいただいたりもして、新刊もまたたいへんあわただしい。

 さらにいえば毎年この季節は「仙台短編文学賞」の受賞作決定発表と授賞式がある。河北新報社とプレスアート、そして私たち〈荒蝦夷〉が結成した実行委員会の許に、仙台市市民文化事業団、仙台市、東北学院大学、エフエム仙台、宮城県古書籍商組合、図書館流通センター、東北大学災害科学国際研究所、関西学院大学災害復興制度研究所が名を連ねて第6回を迎えたこの賞、なんと極小零細出版社の私が実行委員会代表を務めさせていただいている。いかにもオミコシとはいえ、オミコシにはオミコシのいそがしさがある。今年は注目度も高かった。第3回大賞受賞者の佐藤厚志さんが『荒地の家族』(新潮社)によりこの1月、芥川賞を受賞されたのである。折しも河北新報で連載が始まった「常盤団地第三号棟」が受賞第1作となったのだが、実はこの作品、編集は私たち〈荒蝦夷〉が担当して、芥川賞フィーバーにモロに巻き込まれた。

 そんなこんなのモーレツな本年前半、私を含めて社員ふたりと頼りのアルバイト諸氏諸嬢とともになんとか乗り切ったわけだが、それにしてもあれやこれやと重なるにもほどがある。タマにキズはそのワリにもうかっていない。ビンボーひまなしとはよくぞいったもので、我れながら不憫になったりもする。おまけにさらにあわただしくもなんと自らの本まで出してしまった。河北新報日曜読書欄に「仙台発出版こぼれ話」と題して2019年6月から4年余りにわたって連載してきたエッセーを『仙台あらえみし日和 杜の都で本と暮らす』としてプレスアートが1冊にまとめてくれたのである。私にとって12冊目の著書だから、いかにいそがしすぎる日々とあっても、まあ、ライターとしては手慣れた仕事、なんとかなるだろうと、これがなんとも甘かった。なにせ4年間の連載、総ページ400超のゲラをあっちへこっちへ持ち歩いては目を通す羽目に追い込まれ、やっとこ刊行なったその内容はといえば、仙台の零細出版社のどたばた、コロナ禍まるかぶりの新米古本屋の悪戦苦闘、仙台短編文学賞の舞台裏、新古問わずの本の豆知識、東北マタギのクマ狩りやアフガニスタンへシベリアへと過去の取材の打ち明け話、仙台文学館の夢野久作書簡新発見や『週刊河北』掲載の横溝正史戦後第1作と好きな作家のエピソードなどなど、本まみれの日々の雑談小話あれやこれやがずらり。なにせ日曜日朝刊読書面掲載のエッセー、肩の凝らないのんびり楽しんでいただける読みものをめざしたのだが、世はコロナ禍にウクライナ戦争、ばかりか健康を損ねての3度にわたる入院手術に故郷の母の死や実家の整理まで、連載中に還暦を迎えた私の個人的な騒動もあって、いやはやなんとも。

 そんな編んで書いて売る怒濤の日々にじたばた綴ったエッセーがさてもおおいそがしのこの6月末に刊行なったわけだが、おかげさまでご好評いただけているようである。各紙誌でご紹介いただき、売れ行きも好調、ありがたやそろそろ増刷の声も聞こえる。というわけで本稿をお読みのみなさんにも『仙台あらえみし日和』をお手に取っていただければこの上なきシアワセ、よろしくお願いいたします。仙台にいらっしゃる機会があれば〈古本あらえみし〉と〈ブックスペースあらえみし〉にぜひお立ち寄りを!

 
 
土方正志/ひじかた・まさし
◎宮城県仙台市の出版社〈荒蝦夷〉代表取締役。編集者・作家・エッセイスト。1962年、北海道生まれ。東北学院大学卒業後、東京でフリーランスのライター・編集者に。2000年に仙台市に別冊東北学編集室を、2005年には有限会社荒蝦夷を設立、現在に至る(荒蝦夷は東日本大震災後の出版活動により2012年出版梓会新聞社学芸文化賞受賞)。2019年4月、仙台市宮城野区に〈古本あらえみし〉オープン。2023年3月、同青葉区に〈BOOK SPACEあらえみし〉オープン。著書に『ユージン・スミス 楽園へのあゆみ』(偕成社/産経児童出版文化賞)、『日本のミイラ仏をたずねて』(晶文社/天夢人から新編同題)、『瓦礫の風貌 阪神淡路大震災1995』(リトルモア/奥野安彦と共著)、『てつびん物語 阪神・淡路大震災 ある被災者の記録』(偕成社/奥野安彦と共著/産経児童出版文化賞推薦)、『震災編集者 東北の小さな出版社〈荒蝦夷〉の5年間』(河出書房新社/河出文庫改題『瓦礫から本を生む』)など。2017年から2年間、読売新聞読書委員会委員。仙台短編文学賞実行委員会代表。宮城県古書籍商組合理事。日本文芸家協会会員。日本災害復興学会会員。東北工業大学非常勤講師。
 
 
 
 


『仙台あらえみし日和 杜の都で本と暮らす』
プレスアート刊
土方正志著
税込価格:2,750円(税込)
ISBNコード:978-4-9912938-1-8
好評発売中!
https://kappo.machico.mu/books/8367

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