『競馬本温故知新』大久保秀雄(競馬専門古書店蓑虫屋店主) |
本書は、KADOKAWA刊行の競馬月刊誌『サラブレ』に連載したコラムをまとめたものです。連載は思いのほか長く、雑誌休刊まで6年半以上続きましたが、単行本化はこのご時世なかなかむずかしいようで出版社からは出すことは叶わず、それならばと自分で出すことにしました。
内容は簡単に言えば競馬古書に関するコラムです。ただ、ディック・フランシスや大橋巨泉、井崎脩五郎らは名前は出てきても本の紹介はしていません。出てくるのは石塚栄五郎や出羽卓次郎、井上康文といった面々です。連載中からマニアックすぎるいう声もありましたが、テーマ、取り上げる書籍は基本的にはこちらで決め、かなり自由に書かせてもらいました。 取り上げた書籍の中で一番印象深いのは石塚栄五郎著の『輸入サラブレッド種馬名簿』。石塚は戦前小岩井農場の馬産を牽引した馬づくりの名人の一人で、戦後は軽種馬生産農業協同組合(後に日本軽種馬協会)の理事として活躍しました。組合がサラブレッド資源の不足を補うため、海外から種牡馬、繁殖牝馬を一括購入し、生産者に抽選頒布する事業で英国に赴き馬の選定・購入したのが石塚でした。この本は輸入した種牡馬1頭と繁殖牝馬19頭について、血統・繁殖成績、父や母の競走成績や繁殖成績などをタタソールズ社のセリ名簿風に記載したもの。父馬などの生写真を貼り込んだものは十部程度しか作成されなかったようです。このとき輸入された牝馬の系統からはミスターシービーをはじめ数多くの活躍馬が誕生しています。 この本は、石塚と直接面識があったお客様からお売りいただきました。石塚は自身が寡筆だったこともあり、大変な業績をあげたにも関わらず書かれたものは多くありません。この方もそれを残念に思っていたようで、掲載された記事をお送りしたところ、大変喜んでいただけました。 禄に文章も書いたことがない人間が、多くはないとは言えそれなりの分量の文章を毎月書くのはとても大変で時間がかかりました。書いているうちに気になることが出てきて国会図書館まで行って資料にあたったり、時には他の古本屋さんから購入したりと随分手間暇かかりました。大変でしたが充実感もあり、あまり他の人が書かないものになったのではないかと思います。 当店ウェブサイトの販売ページで目次と1回分「有馬記念に名を残すJRA二代目理事長有馬頼寧の功績」という回を公開していますので、ご覧いただけると嬉しいです。 ![]() 『競馬本温故知新』 蓑虫屋刊 大久保秀雄著 税込価格:2,000円 ISBNコード:978-4-600-01107-9 好評発売中!! https://minomushiya.com/?pid=177730454 |
Copyright (c) 2023 東京都古書籍商業協同組合 |