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野暮の強みで「紙もの」特集――新刊『近代出版研究』5号(2026)の特集は【エフェメラ】


野暮の強みで「紙もの」特集
――新刊『近代出版研究』5号(2026)の特集は【エフェメラ】

小林昌樹(近代出版研究所所長)

■「紙もの」ですよ古本好きのみなさん!

 ミュージアム系で「エフェメラ」が流行りなんですよ、と聞いたのは2年前。エフェメラ? それってパンフレットやリーフレット、チラシ、切手といった「紙もの」一般のことだなぁと、30年前に大学の授業で教わっていたので知っていました。
 我ら古本者には「紙もの」も当たり前のものとして古書展などで目の前に出て来ます【図1】。「どうして今さら」と思ったのが特集のきっかけ。美術系での流行を「どうして?」というのも野暮の極みではありますが、そこはそれ、古本者の野暮もつきつめれば「研究」になるというわけです。
 2022年に創刊した『近代出版研究』も5年目。2026年の特集は「エフェメラって?――軽薄短命の紙がみ」となりました。


【図1】私が集めている情報機器のチラシ、パンフ、カタログ

■エフェメラ専門店の草分け・古書日月堂さん

 本誌の巻頭ロングインタビューは必ずしも特集と連動しませんけれど、今回は編集長がミリタリーブックカフェ「ドレッドノート」さん(現在移転中)で知り合ったエフェメラ販売の草分け、古書日月堂さんにお願いしました。これがまた。
 面白くって何時間ものロングとなりました。「日本の古本屋」利用者のみなさんには言うまでもありませんが、日月堂さんは1996年に街の古本屋として開業つつも、すぐに専門店化。ついには海外エフェメラ専門店として青山でおしゃれアパルトマンに店舗を構えるまでになったお店です(現在は大田区北千束で事務所のみ)。
 私もお店を現認して驚きましたが、全面朱色の書架や、店中央に置かれたキャビネットにエフェメラ満載でした。ここいらへんのことは本誌をお読みいただきたく。

■前代未聞・日本「紙もの」蒐集史

 今までも池田文痴庵など、紙ものの蒐集家については古本雑誌『彷書月刊』などで個別に取り上げられて来ましたが、今回、昭和B級文化研究家・串間努さんを招聘し、「蒐集趣味における「寸葉品」大概」をお書きいただきました。串間さんは日本最大級の戦前「趣味誌」(収集趣味の連絡雑誌)コレクターでもあります。そんな串間さんでしか書けない戦前「神もの」コレクター全体の流れが初めて明らかになりました。おそらく今後も同格のものはなかなか現れないでしょう。

■新知見、驚きの大発見「有袋類」も

 他にもエフェメラ特集として、我らが古書趣味誌『スムース』同人、林哲夫さんによるフランスのエフェメール論、早稲田大学で紙もの(西垣文庫)整理をしたパイオニア司書の体験談、明治始めに本のシュリンクパックがあったというを大発見(名付けて「有袋類」!)など、新知見、驚きの記事が満載です。
 さらに、どこにも残っていない明治期大阪出版社の販売カタログ、昭和初頭エログロナンセンス時代の「チラ見せ」内容見本論、明治期の裸体絵葉書の発禁について、これから作られる神保町エフェメラ・データベースなど、普通の研究者には書けないようなことばかりをお願いして記事にしました。
 このような内容であれば、私が理詰めで書いた駄文「なぜ今(いまさら)エフェメラなのか」はおまけにすぎません。

■文学好きには武藤康史さんのエッセーを

 特集以外でも渋い文学趣味家ならご存知、武藤康史さんによる作家・金井美恵子の年譜を作成した際のロング体験談。いつも秋の読書週間に神保町で配られていた『神保町が好きだ!』についての記事。「神保町のオタ」さんなる古本趣味家によるレア雑誌についての記事など盛りだくさんです。

■本好きのみなさんへ「本のエフェメラ小事典」

 書籍がらみのエフェメラについて考証と蘊蓄をコラムに書いてもらいました。書店カバー(書皮)、書店ラベル(書店票)、本のカバーを捨てる現場、蔵書票、本の帯、本屋の帯紙、本のしおり、ブック・フェアの冊子、などです。書店のブック・フェアが1970年代からだったことは私も初めて知りました。これを読めば本の業界でちょっと物知りになれる?!

■【緊急掲載】紀田順一郎先生・追悼小特集

 昨年夏の先生急逝を受け、前号で大特集を組んだ紀田順一郎先生ゆかりの方々に追悼文や追悼アンケートを寄せてもらいました。涙なしには読めませんが、なかでもフランス文学者・鹿島茂先生がお寄せになったアンケートで、紀田先生の謦咳に接し、新刊書は人類知のごく一部でしかないと痛感、「ならば、われわれの力の許す限りゴミを救え」(p.319)と紀田先生のスタンスを自分のタスクとして継承したといいます。紀田先生の精神は今回のエフェメラ特集にも通じています。


小林昌樹(こばやし・まさき)
 1967年東京生まれ。1990年と92年、慶應義塾大学文学部を2回卒業。2021年国立国会図書館を早期退職し、近代出版研究所を設立。近代書誌懇話会代表。現役時代の秘伝テクニックを盛り込んだ『調べる技術』がヒット。それを応用して書いた前代未聞の『立ち読みの歴史』は五大新聞紙すべてで紹介。専門は図書館史、近代出版史、読書史。
執筆リスト




書名:『近代出版研究』第5号
特集「エフェメラって?――軽薄短命の紙がみ」
発行:近代出版研究所
発売:皓星社
発売日:2026年4月7日
ページ数:368ページ
定価:3,300円
判型:A5判並製
ISBN:978-4-7744-0882-8
好評発売中!
https://libro-koseisha.co.jp/publishing/9784774408828/

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