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自著を語る(77) 『日本地図史』について

『日本地図史』について

上杉和央

 お気づきの方もいるかもしれないが、『日本地図史』という題名の書籍は、すでに秋岡武次郎によるものがある。昭和30年(1955)に出されたこの本は、地図史の必読書のひとつに位置づけられるものである。それに対して、拙著は吉川弘文館の「日本〇〇史」シリーズに含まれるものであり、その枠組みに準拠したネーミングなので、奇しくも同タイトルとなってしまった。名前は企画上の問題だとして、どうかご容赦いただきたい。

 その上で、タイトルは同じでも、包含する内容については大きな違いがあることをお伝えしておきたい。秋岡先生の本は「日本地図」の「史」であり、いわゆる日本図のみを扱ったものである。それに対して、拙著は「日本」の「地図史」であり、日本図のみならず、世界図や都市図、荘園図、村絵図、さらにはカーナビまで、多種多様な地図の歴史をとりあげたものとなっている。その意味で、同音(同表記)異義のタイトルであること、ご了解いただければ、と思う。

 また、地図史の必読書は他にもたくさんあるが、拙著と同じような方向性をもって書かれたものとして、織田武雄著『地図の歴史』(講談社、初版1973年)をはずすことはできない。この本は実に多くの読者に支持され、何度も版が重ねられた。あちこちの古書店でその姿を確認できる本であり、ご存知の方も多いかと思う。現在も新書(2分冊)として刊行されるきわめて息の長い良書である。ただ、40年弱の年月を経て、やや内容に古さがみられるのも事実である。

 拙著では『地図の歴史』以降の研究の成果を取り込む形で、改めて「日本」の「地図史」を概観している。実際、この40年と言えば、古地図研究がきわめて大きな展開を遂げ、新たな視点から古地図がとらえられるようになった時期である。これらを踏まえた上で地図史を描けばどうなるのか。その小さな試みの結果が拙著である。それぞれの専門に合わせて古代・中世は金田が、近世・近現代は上杉が担当している。通読すれば、各時代の特徴も分かっていただけるのではないかと思う。

 『地図の歴史』は「日本」のみならず「世界」の地図史が語られており、その意味では二人がかりでようやく織田先生の視野の半分にしか到達しておらず、弟子・孫弟子としては恥ずかしい限りなのだが、ひとまず「今後の課題としたい」という常套句にゆだねておくことにしたい。
                                           (上杉筆)

『日本地図史』金田 章裕・上杉 和央著
   吉川弘文館刊 3800円+税 好評発売中
   http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b96127.html

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