文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大

古書を探す

メールマガジン記事 自著を語る

『佐野繁次郎装幀集成 増補版』作成について

『佐野繁次郎装幀集成 増補版』作成について

西村義孝

 『佐野繁次郎装幀集成』は2008年11月に刊行されました。佐野繁次郎装幀本の蒐集の
きっかけは、『sumus』2号(2000年1月発行)特集「画家の装幀本」の中のひとつ林哲夫氏
「佐野繁次郎」でした。

 佐野繁次郎が装幀した辻静雄の著作は既に所蔵しておりました愛読書として。佐野の文字を使用した作品である装幀本をもっと見たくなり、画集がないこともあり装幀本だけでなく雑誌の蒐集が始まりました。

 当時、宰相吉田茂の息子、吉田健一の著作本、翻訳本を蒐集しておりました。その時に身についた探索要領が役立ったようです。蒐集した結果が、2008年6月にアンダーグランドブックカフェのイベントで「佐野繁次郎の装幀モダニズム展」が神保町の古書会館で開催され、同年3月に「spin03 佐野繁次郎装幀図録」が作られました。その図録がきっかけで『佐野繁次郎装幀集成』となりましたものです。昨年、増刷のお話がありました際、神保町の古書会館で
佐野繁次郎の展示会が6月開催と決まっており、それに合わせて増補版の作成・発行をお願いしたものでした。

 増補版の画像は、2008年の発行以降に新たに蒐集できた装幀本、雑誌は自宅のスキャナで取りました。大きいサイズの装幀本(『フランス料理研究』、『ヒロシマ』他)、パピリオ
化粧品のパッケージ、レンガ屋のメニュー、灰皿、トランプ、クッキー缶、マッチ他、
『ヒロシマ』の装幀画稿、『巴里風物誌』の挿画を版元のみずのわ出版柳原氏へお送りし、
カメラ撮影とスキャナに振り分けられ、撮影は柳原氏が、スキャナは印刷の山田写真製版所が担当されました。更新されたリスト含め校正と印刷立ち合いを柳原氏が対応されました。

 増補版のブックデザイン、前回と同様に林哲夫氏が担当され、出来上がった増補版は、前回と同じタイトルながら構成、レイアウトが違う別な本となっております。カバーの表は前回を踏襲していますが、カバー裏、表紙、裏表紙は増補版用に新しく作って下さいました。
 カバー用紙の余白が出ることから、柳原氏と林氏とで相談され『裸のデッサン』という佐野の画文集の冊子も作られました。

 そして印刷の凄腕が見られます。具体的には、表紙、裏表紙に使われた『ヒロシマ』の装幀画稿の切り貼りされた凹凸が見えるように印刷され、書簡の薄い文字もハッキリ読めます。
画像がクリアです。

 佐野の文字が、デザインを意識された装幀の文字、普段の文字で書かれた草稿(『ヒロシマ』の内容見本用他)と書簡(山内金三郎宛)と見比べることができます。特に書簡では印刷のお願いが詳細に綴られています。

 もともと蒐集が好きでしたが、佐野が携わった印刷物の作品は、あの独特の文字、色使い、描かれている人物・風景といずれも佐野繁次郎と分かる技、印刷のもとになる装幀画稿、原画も手に入れて印刷物となるまでが反映出来ました。
 今後ももっと見たくなる更に深みの世界へ散策が続きそうです。増補版から紙の本を直に
見たい、触りたいきっかけになれば幸いです。
 
 
〇カバー表紙(左:前回本、右:増補版本)
IMG1
 
〇カバー裏表紙(左:前回本、右:増補版本)
IMG2
 
〇佐野の画文集の冊子『裸のデッサン』
IMG3
 
 
※6/28キャプションの一部を修正いたしました
 
 
cover_sanoshige-zoho

 
 
『佐野繁次郎装幀集成 増補版
―西村コレクションを中心として』
西村義孝 著
みずのわ出版 刊
6,930 円(税込)
ISBN:978-4-86426-053-4
 
好評発売中!
https://mizunowa.com/pub/845/
 

Copyright (c) 2024 東京都古書籍商業協同組合

  • コショな人
  • 日本の古本屋 メールマガジン バックナンバー
  • 特集アーカイブ
  • 全古書連加盟店へ 本をお売り下さい
  • カテゴリ一覧
  • 書影から探せる書籍リスト

おすすめの特集ページ

  • 直木賞受賞作
  • 芥川賞受賞作
  • 古本屋に登録されている日本の小説家の上位100選 日本の小説家100選
  • 著者別ベストセラー
  • ベストセラー出版社

関連サイト

  • 東京の古本屋
  • 全国古書籍商組合連合会 古書組合一覧
  • 版元ドットコム
  • 近刊検索ベータ
  • 書評ニュース