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書物という挑戦

書物という挑戦

西谷能英

 つい最近、論創社のはからいで『出版とは闘争である』という少々挑発的な名をもつ書物を刊行することができた。この本の「はじめに」で書いたように、本書は前著『出版文化再生――あらためて本の力を考える』(未來社, 1991年)刊行後に「出版文化再生ブログ」ブログ(未來社ホームページおよびココログに掲載中)で書きつづけている出版にかんする文章をセレクトし、テーマ別に再編集したものである。内容は、削除したもの以外は、書いたときの気分をそのままに生かすため、必要最小限の修正と若干の注を追加するにとどめている。

 ブログという形式は書きたいテーマを書きたいときに書いて、すぐアップできるという情報伝達上の利点がある。原則としてひとつの文章はその日のうちに基本的に書き切ること、その文章を一両日中にブログにアップすることにしている。はじめのうちは断片的なものが多かったが、しだいに長めの評論的なものが増えてきたのは自分でも意外な展開であった。本気になってブログを書こうというモードになったのであろう。未來社のPR誌「未来」の連載コラム[未来の窓]をまとめた前著にくらべて、こちらはブログ初出ということもあり(途中から一部を「未来」に掲載するようになったが)、出版人という制約を超えて一個人として相当大胆な発言をしてきたせいもあって、短期間に万を超えるアクセスがあった文章もあった。たえずフォローしてくれるひともいて励まされていることは間違いない。

 しかしながら、わたしには書物という形態にこだわりがあり、ブログであってもそこで書かれた文章を一冊の書物のかたちにすることにはやはり特別な思いがある。現に親しい友人はこんなふうに書いてくれた。《ブログなどで接していた時は「一過的な情報」として読み過ごしていたのに対し、命がけの飛躍を経て書籍となった場合はその文章が「思索の結晶」になっていて、読み過ごすことができるものではなく、「思索の結晶」を思索することが求められていることに気づいた(……)ブログの情報と書籍の表現とは、極端に言えば、別物》というわけで、そんなふうに読んでもらえることは著者としてはうれしいかぎりである。

 出版を本業としている人間にとって、最終的な審級としての書物があるということはゆるがせない問題である。本が売れない状況にもかかわらず、出版や知や書物の問題自体を問う書物を刊行するということはこういう状況への挑戦なのである。そしてそこに著者と読者との新たな関係が見えてくるという厳然たる事実こそ、書物という〈命がけの飛躍〉の帰結であり、そのことこそが書物を刊行することのほんとうの意味なのかもしれない。



tousou

『出版とは闘争である』 西谷 能英 著
 論創社 本体2,000円+税 好評発売中!
 
http://www.ronso.co.jp/index.html

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