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『新天理図書館善本叢書』について

『新天理図書館善本叢書』について

天理図書館貴重書室 岡嶌偉久子

【はじめに】 
 この度、天理図書館では高精細オールカラー版の影印複製叢書『新天理図書館善本叢書』(全5期36巻・製作発売八木書店)刊行の事業を開始することとなりました。
 各期の編成は次のようになります。

第1期 国史古記録 全6巻
第2期 古辞書 全6巻
第3期 源氏物語 全10巻
第4期 奈良絵本 全8巻
第5期 連歌俳諧 全6巻

 本館はこれまで、所蔵する稀覯書の更なる利用・活用を願って、同時に、後世に原本を永く伝えるための「保存」ということを意図して、種々の影印複製事業を進めてまいりました。
この度の『新善本叢書』もそうした事業に続くものですが、先に、昭和46年から刊行を開始した旧『善本叢書』既収書目のうちの幾らかを含んでの編成となっております。この、再収録書目とその意図について、また、多くの新収録書目類について、更に、この度の最新の製版印刷仕様について、以下に概略します。

【旧『善本叢書』からの再収録書目について】
先の旧『善本叢書』は、今から40数年以前、古典籍の影印複製出版がまだ一般的ではなかった時代に、オフセット網目版印刷による正確な影印を実現した出版でした。その後、古典籍影印出版はオフセット印刷による時代となって現在に至っています。
しかし、近年、この度採用の高精細フルカラーによる影印複製が購買可能なものとなってきました。やはり、いかに精緻とはいえ白・黒で表現された紙面と、フルカラー印刷による紙面とでは、その情報量の差異・多寡はいうまでもないことです。

旧『善本叢書』では、当時における最新のオフセット印刷技術を開発して印刷を行ってきましたが、しかし、白・黒ではいかにしても再現できない原本の情報というものが、やはりありました。それがことに顕著に認められたものが、この度の、旧『善本』書目から再収録した国宝『類聚名義抄』・重文『和名類聚抄』を始めとする古辞書類であり、国宝『日本書紀乾元本』等の史籍類です。これらの本文には、朱墨両用による訓点・傍訓・句読点・声点等があり、細字による行間注記においても同様です。こうした分野の、しかも最も貴重な典籍については、朱墨の各濃淡・墨色や筆致の差異が一目瞭然となるフルカラー影印をやはり出版しておかなくてはならないという判断がありました。また同時に、既収の古辞書・史籍類の多くは、すでに品切れとなっており、復刊を求められてもおりました。

 また、現在の研究水準からは、フルカラー影印でなくてはならないものに奈良絵本類があります。旧『善本』に収めた奈良絵本類は、この分野で最も初期にあたる室町時代後期のものが大半でした。淡彩の、あるいは極彩色の美しい紙面の数々は、この機会に是非、フルカラーで再収録しておきたいものでした。
以上が、再収録書目の概略です。

【新収録書目について】
 新収録書目についても、選択の基準は、各分野における最も重要な伝本の一つであると共に、高精細フルカラー印刷ということが極めて重要な意味を持つ資料であること。すなわち彩色があってそれが原本情報として不可欠であるもの、また摺消し・重ね書き・墨色の差違までが問題となるもの、名家の自筆、といった類いのものです。
以下、全5期の各新収書目のいくらかをご紹介します。

 第1期国史古記録篇全6巻には、新たに重文『古事記道果本』を加え、また、藤原定家自筆の日記『明月記』、同自筆の古記録類6点に『定家小本』『古今名所』『藤原定家消息』等を加えて編成しています。

第2期古辞書篇全6巻は、すべて旧『善本叢書』既収のもの。


第3期源氏物語篇全10巻には、新たに『源氏物語伝二条為明筆本』(池田本)を収録しています。源氏物語の伝本は鎌倉期のものを最古写としますが、鎌倉期成立当初のままの54巻揃いのものはなく、当初の巻々が大部にまとまった形で残されている伝本も極めて稀少です。本池田本は48巻が鎌倉期成立当初の揃い本で、同時に、本文はすべて青表紙本、巻によっては巻末に「奥入」があり、鎌倉期当初の巻々が最も大部に揃った青表紙伝本として収録するものです。

第4期奈良絵本篇全8巻には、旧『善本叢書』既収14点に、新たに11点の奈良絵本『八幡大菩薩御縁起』『舟のゐとく』『常盤の嫗』『あま物語』『大古久まい』『磯崎物語』『さゝやき竹』『しやうるり』『宝月童子』『虫妹背物語』『山海異形』を収録しています。いずれも既収分に同じく室町後期から江戸初期までのもので、各作品中、最も古い奈良絵本の一つです。

第5期連歌俳諧篇は全6巻。内、2巻は『連歌巻子本集』一・二として、能阿・三条西実隆・紹巴・昌叱等の、いずれも自筆の連歌百韻15点に初学用捨抄(紹巴筆)を加えています。また『西鶴自筆本集』としては、『西鶴独吟百韻自注絵巻』他、画賛・短冊・書簡類等25点を収録。『芭蕉集』には、芭蕉真蹟として確かな地位を占める鯉屋伝来物35点すべてに、『奥の細道行脚之図』『幻住庵記』『梅雀桐蹊両吟歌僊俳諧』また書簡3点を加えました。西鶴・芭蕉両者の確かな真筆は稀少であり、この機会に館蔵品を網羅しておくものです。また『蕪村集』一・二として、蕪村社中の句会記録原本『夏より 三菓社中句集』『高徳院発句会』『月並発句帖』、及び、約200首の蕪村新出句を含む『夜半亭蕪村句集』を収めています。

【製版印刷仕様について】

この度の製版は、高精度デジタル撮影によるRAWデータから、ハイブリッドスクリーニング(AGFAスブリマ240 線)という仕様で行います。最終校正では全頁について色校正をとり、原本と照合の上、厳密な色合わせを行います。

印刷は、本館担当者および八木書店担当者が立会い、速乾性のUVインキ対応の最新印刷機で行います。この印刷システムによって、印刷時の抜き取り検査と濃度調整も極めて効率化し、瞬時に最終的な仕上がりを確認することができます。

これらの最新技術の導入、及び、本館の旧『善本叢書』以来、製版印刷を担当している天理時報社が長年培ったノウハウを駆使して、最高度の再現性を目指しています。
今月刊行の第1回配本「日本書紀乾元本一」で、その仕上がりをご覧いただければと思います。



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『新天理図書館善本叢書』 第1期 国史古記録 全6巻
八木書店 4月刊行開始
http://www.books-yagi.co.jp/pub/index.htm

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