吉田健一の交遊錄展西村 義孝 |
6月7日(土)から14日(土)まで、神保町東京古書会館で『吉田健一の交遊錄展』を開催します。吉田健一は、吉田茂元首相の長男で英文学者、文芸評論家、小説家、随筆家、翻訳家として知られています。
吉田健一の著作に『交遊錄』があり、その目次に並ぶ河上徹太郎、中村光夫、横光利一、 トーク・イベントも2回、開催を予定しています。1回目の6月7日(土)は、角地幸男氏(『ケンブリッジ帰りの文士 吉田健一』の著者)と西村との対談、2回目の6月14日(土)は西村の講演で、蒐集にまつわる裏話などを公開する予定です。申し込み詳細は、告知のフライヤ、SNSをご参照下さい。 蒐集のきっかけは、小学館の雑誌サライの特集「吉田健一の食文学入門」(1991年4月18日発行)でした。辻調理師専門学校校長の辻静雄が「これだけの教養人」と書いている この文章がきっかけで、吉田健一の蒐集は、著作本、翻訳本、寄稿雑誌、書簡、草稿、色紙他へと、次第に深みにはまって行きました。 著作本、翻訳本を蒐集する中で、帯付き、美本を求めていくことを古本の世界で知り、同じ本ですが、より状態のいいもの、刊行当時の状態として帯付きのものへと買い替えて行きました。さらに署名のないものから署名本へ、さらに献呈先が違うものが見つかると新たに買い求めました。満寿屋の原稿用紙に書かれた草稿を手に入れ、吉田健一の原稿の特徴である、最後の升目まできちっと埋まっていることを確認しました。書簡では結びの一句、「先は御禮旁々右まで」といった言い回しを真似るようになりました。 『葡萄酒の色』の革装17部限定本が初めて現れた時、箪笥貯金でなく本棚貯金である草稿、書簡が購入資金となりました。欲しい本は予告なく突発的に現われ、待ったなし、資金は潤沢ではなく、蒐集した草稿、書簡、署名本等を古書店へ買取り依頼し、もしくは物々交換で手に入れておりました。欲しいものが現れるたびに手放すものが増え、何度も目の前を通り過ぎていきました。あとで買い戻した本も少なからずございます。ある時、古書店ご主人から「いい加減にしてくれ」的な注意を受けたことがございました。同じ本を何度も売り買いしていたからです。 欲しい本の金額に見合う買取り依頼本に、何度も同じ本が入ってしまうのは、買取り金額が、およそわかっていたからかもしれません。限定本は数十部同じ本があり、回りまわって再度 当方の蒐集対象には、吉田健一以外に佐野繁次郎がございます。時には、佐野繁次郎に出物があり、吉田健一の蒐集品が購入資金となって手放したものも多くございます。そうした中で、コレクションとして継続所蔵しているものを展示します。普段は本部屋の本棚に前後2列に収納しておりますものが、ガラスケースに入り展示されます。展示会開始の前日に、いろいろ展示の設営を考えるのも、また楽しみのひとつです。 展示会の告知ポスター、フライヤ、DMと図録のデザインを、デザイナーの水戸部功氏に |
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