『「週刊読書人」と戦後知識人』のこと植田康夫 |
出版評論家の小田光雄さんのインタービュー・構成による「出版人に聞く」というシリーズが論創社から刊行されるようになって数年になり、巻数を重ねてきたが、最新巻の17巻目に私が登場することになった。昨年、半日ぐらいかけて小田さんのインタビューを受け、テープに録音したものを文字化した原稿を小田さんが整理され、ゲラになったものに私が手を入れて本は完成した。 これまで、何冊かの著書を出しているが、今度の本は著者名が私になっていても、小田さんとの共著だと言ってよい。というのは、この本のために、小田さんはいろいろと資料を集められ、私の記憶が定かでないことも、丹念に聞かれ、私の過去が明確になったからである。 この本は『「週刊読書人」と戦後知識人』という題名になっているように、私が大学を卒業して入社した「週刊読書人」という書評新聞の編集を通して体験したことや、編集の仕事で出会った人たちのことを語ったものであるが、それは私の人生を語ることでもあった。 全体は5部で構成され、第1部は私が1968年、文研出版から刊行した書下ろしの処女作である『現代マスコミ・スター』の話から始まる。というのは、この本を小田さんが高校生時代に読んでおられたので、この本をイントロダクションにしようと思われたからである。 私は1962年に読書人に入社しており、本を書いたのは入社して6年後のことで、私がまだ二十代の頃であった。この本は副題が「時代に挑戦する6人の男」となっており、当時、マスコミで売出し中の野坂昭如・五木寛之・永六輔・いずみたく・梶山季之・草柳大蔵氏らがどのようにして世に出て、どういう仕事をしてきたのかを追跡した人物ドキュメントであった。この本を書くきっかけとなったのは、私が67年に読書人に勤めながら「大宅壮一東京マスコミ塾」に通ったことである。この塾を通してノンフィクションに関心を持つようになり、大宅氏の仕事に学びながら、マスコミの世界に生きる人たちのことを紹介するようになった。そして「週刊読書人」では三島由紀夫氏などにもインタビューしたが、『「週刊読書人」と戦後知識人』では、それらの経緯を詳しく語っているので、お読みいただきたい。
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