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古本屋さんへの感謝状

古本屋さんへの感謝状

南陀楼綾繁

 高校生で東京に行ったとき、神保町の古書店街で両手に持ちきれないほどの古本を買い、両手に重い紙袋を持って集合場所まで駆けつけて以来、どこに出かけても、まずは古本屋に入らないと落ち着かない。国内だけでなく、ソウルや台北などでも同じで、プラハでは毎日、古本屋と郵便局(日本に発送するため)の往復ばかりしていたような気がする。

 そんな私が、2005年から谷根千に住む仲間たちと始めたのが、「不忍ブックストリートの一箱古本市」。段ボール箱ひとつに詰めた古本を、お店などの軒先を借りて販売するイベントだ。「一日だけの本屋さんごっこ」に反応してくれる人が多く、テーマを決めたりディスプレイを工夫したりと熱中している。このイベントに参加したことがきっかけで、古本屋の店舗を開いた人も出ている。

 一箱古本市は、本好きならだれでも参加できる点が受けて、地方に広がっている。いま、何か所で開催されているのか、私もよく把握していない。一回でも開催した場所は90以上になると思う。一度も開催されていない県は7、8県ぐらいか。そのすべてに参加するのは無理だが、声をかけてくれたところには足を運び、一箱古本市の店主として本を売ったり、トークをしたりしている。

『ほんほん本の旅あるき』は、そうやって各地を巡った旅の記録だ。14県の20の町が登場する。秋田〈板澤書房〉、仙台〈book cafe 火星の庭〉、富山〈古本ブックエンド〉、松江〈ダルマ堂書店〉、鹿児島〈つばめ文庫〉……どこに行っても、いい古本屋を見つけるとホッとする。鳥取の松崎という田舎町では、小屋を改造して〈汽水空港〉という古本屋をオープンしようとしている青年に出会い、高知では〈かたりあふ書店〉さんを囲む古本屋仲間の固い友情に感動した。

 古本屋のほかにも、新刊書店、図書館、ブックカフェ、マイクロライブラリーなど、「本のある場所」なら、匂いをかぎつけて訪れている。
 一箱古本市は一日だけのブックイベントだが、そこで生まれた本好き同士のつながりが、別の場所での活動に発展し、そこで新しい古本屋ができるかもしれない。イベントをきっかけに、「本のある日常」を、町の中にゆるやかにつくり出していってほしいと思っている。私なりのその実践例が、宮城県石巻市の中心商店街にある〈石巻 まちの本棚〉だ。今年も7月25日に、この場所を中心に町なかで一箱古本市が行なわれる。

 若いころから古本屋さんに教えられ、導かれ、鍛えられてきた。もちろん、カネもつぎ込み、増える本に泣かされてもきたが……。今度は、私なりのやりかたで、次の世代に向けて、古本と古本屋さんの魅力を伝えていければとおもう。



aruki

『ほんほん本の旅あるき』 南陀楼綾繁 著
株式会社産業編集センター刊 定価 1,600円+税 好評発売中!
http://www.shc.co.jp/book/detail/000865.html

 

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