百万塔陀羅尼からクウネルまで松田友泉 |
『BOOK5』という雑誌で「古本即売会へようこそ!」という特集を企画・編集しました。いったいなぜこのような特集を組もうと思いついたのかは、よく覚えていません。 古本即売会(古本市、古本まつり等名称があります)は、全国各地様々な場所で行われています。 今回の号では、福岡(徘徊堂×古本や檸檬)、名古屋(倉庫会)、東海地区(太閤堂書店、徒然舎、古本屋ぽらん、古本うみうさぎ堂のユニット「古本ジャンボリーズ」)を取材。鹿児島(つばめ文庫)、関東圏(古本屋ツアー・イン・ジャパン 小山力也)をレポートしていただきました。 主に登場していただいたのは、九州から東海地区までの「若い」古本屋さんです。若いと言っても、取材する私を含めて30代〜40代、世間的にはそう若くはないのかも知れませんが、古書業界の方々は基本的に死ぬまで仕事ができますので、自ずと「若い」方々となります。 皆さんの熱意、意気込みなどは強く、私も編集しながらとても刺激を受けました。 百万塔陀羅尼からクウネルまで……古本即売会ではいろんなものが売られています。売値が付いている古物という点では、ダラニもクウネルもたいして違いはありません。おそらく、クウネルを買う人にとってダラニはクリスマスツリーのさきっぽみたいなやつで、ダラニを買う人にとってクウネルはピカピカした紙の束です。売り手も買い手もみんな違う方向を見つつ、歴史も性格も滅茶苦茶なのに、同じ場所に集まってゆく。そこが、即売会の愉快なところです。 私は「店」が得意ではなく、店員さんと目をあわせるのも恥ずかしいという性格があり、生きるのに難渋しておりますが、心のオアシス店であるブックオフを別とすれば、古本即売会は、自分自身と古本とが一対一で向き合える、ほとんど唯一の場所です。 今回の特集では、他にも古本即売会の花型である(と私は思っている)「価格札(※見返し部分に貼り付けられているペラペラした値札。店名も読めないほどコピーを重ねたものが最上品。蒐集しています。)」を散髪ドームマーケティング事業部さんで制作、その過程を掲載させていただきました。 また、千代田図書館で行われた南陀楼綾繁さんらの「目録読書の楽しみ」というトークショーを再録、古書赤いドリルさんの持ち込み企画で月の輪書林さんと風船舎さんの目録対談を掲載させていただいております。 目録の話も出ましたが、「古本屋」という業種は、その「多様性(=違い)」も面白いところだと思います。 どんな形態だろうが、挟持があろうが知識がなかろうがやる気があろうがなかろうが、ブックオフも100年以上の老舗も、古本で商いしていることに違いはありません。軌を一にしないその自由さ、まとまりのなさ、とりとめのなさ……そういったところが、私が本屋さんに対してワクワクするところですし、素晴らしいところだと思っています。 しかし、その多様性がなくなってしまうと、古本の持つモチベーションを損なってしまう気がします。 古本はさながら人で、古本が集まる即売会はまるでだれでも行ける宇宙のようです。一介の客としては、嬉しい、寂しい、などと一喜一憂しながら、これからもゴミのような本を山ほど抱え込んでゆきたいです。
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