『高校野球100年を読む』ポプラ新書ビブリオ 小野祥之 |
今年、高校野球が100年目を迎え出版界ではちょっとした高校野球ブームです。 名場面、名選手、名エピソードが盛り込まれた本が多数出版されましたが多くの本にはどうしても焼き直し感がつきまといます。 何か新たな視点がないだろうかという模索の中で古書店主である私に白羽の矢が当たりました。古書店を営んでいると、そこから見えてくるものがあります。ファンとも記者とも違う独特の視点です。店でお客さまに話していると妙に感心されることも多々あり、まとめてみると面白いのではないかと常々考えていました。そこに思いがけない出版の話が持ちあがったのです。 「私は本を整理する際に一つの方針を決めています。編年体で並べること。このことによって見えてくるもの、それが古書店の視点です。学者やコレクターも文献リストは作れるでしょう。が、売れる売れないまでを把握することは不可能です」。 これは前書きに書いたことなのですが、このようなという話をしていると「それで行きましょう!」ということになりました。 全国高等学校野球選手権大会が100年目を迎えるということはこの大会にまつわる本も100年の歴史を持つということになります。100年という年月は歴史を語るに十分な時間です。多岐にわたる高校野球本を分類し直し、本を通して甲子園の歴史を振り返ってみようというのがこの本の試みです。古書を通じて一つの現象を捉えるというのは実に画期的なのではないかと思います。 しかし、出版に先だって私がとても心配していたことがありました。果たして「野球の本の本」を買う人がどれだけいるのだろうか?ということです。出版元の編集者は「絶対に売れます!」と自信満々に言っていましたが、「せいぜい500部くらいじゃないの?」と私は半分本気で言っていました。 ところが私自身の予想は大幅に外れ、出版されてから複数のメディアから取材や出演の要請があり朝日新聞・読書欄では大々的に取り上げられました。普段、何げなく仕事として続けていることがこのような形で日の目を見ることとなり古書店主という立場も悪くないと改めて思っています。
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