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『世界史の中の日本国憲法』-立憲主義の史的展開を踏まえて

『世界史の中の日本国憲法』-立憲主義の史的展開を踏まえて

京都大学名誉教授 佐藤幸治

 『世界史の中の日本国憲法 ——立憲主義の史的展開を踏まえて』は、2015年6月6日に東京大学で行われた「立憲主義の危機」と題するシンポジウムの基調講演をもとに加筆したものです。昨年暮に講演依頼があったとき戸惑ったのですが、その頃『立憲主義について』を書いていたこともあって、何かのご参考になればと思い、お引き受けしました。当日は私の予想をはるかに超える方々にご来場いただき、論題への国民の皆さんのご関心の強さを痛感させられました。


 本書の中心課題は、終戦70年を迎えて今われわれは「日本国憲法」をどう受け止めるべきかということです。日本国憲法が占領軍の強い指導の下に制定されたことへのこだわりと、内容への不満が重なって、日本国憲法への否定的態度が政治の世界などで根強く存続し、そのことが日本国憲法、ひいては日本という国家の真の安定化に暗い影を落としてきました。終戦70年を迎えて、われわれはこうしたことに区切りをつけ、日本国憲法を日本という国の「土台」としてより明確に位置づけ、様々な立場において善き社会を築いていくことを改めて誓う契機として欲しい、と私は強く思います。特に二つのことに言及しておきたい。


 一つは、これまで政府・国民は様々な困難・問題に直面しつつも、日本国憲法を施行後70年近くにわたって支持し、その真面目な運用に努め、戦後の復興と繁栄を築いてきたという事実を重く受け止めるべきであるということです。そこには、明治憲法下で一時的にせよ立憲主義の成果(大正デモクラシー)をみたにもかかわらず、容易に軍国主義・全体主義にからめとられてしまったことへの深い反省があったはずです。


 二つには、日本国憲法は、政治権力の恣意的行使を抑え自由で公正な社会を実現しようと自覚的に取り組んだ古代ギリシャ・ローマを起源として現代に至る立憲主義の歴史の成果を最もよく具現している憲法の一つであるということです。世界の定評のある第一級の立憲国家は、国の「土台」としての憲法の根幹に敬意を払いつつ、時代に柔軟に対応してきた国々です。「立憲主義」憲法こそ国家の持続的繁栄の要(かなめ)であるといえます。
 本書を通じて、悲劇と苦難に充ちた世界にあって、自由と公正(正義)を求めて苦闘してきた人類の歴史と人間のドラマの一端に触れ、将来に立ち向かう何かを得ていただきたいと願っています。


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