古本屋ツアー・イン・ジャパンの総決算 十四年分 付・古本屋探検術古本屋ツーリスト 小山力也
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「日本の古本屋メールマガジン」誌上をお借りして、古本屋と古本に関わる調査&狩猟活動を発表し続けて、十四年の月日が経った。スタートは二〇一一年。一年の一月〜六月を“上半期”として七月に発表し、年を越した次年の一月に“総決算”と称し、一月〜六月を簡単に振り返りつつ、十二月までの総括をする形を採った、非常にスローモーな年二回の、息の長い連載である。それがこの度、東京都古書籍商業協同組合さんのご好意により、一冊の『古書の日』記念無料小冊子「古本屋ツアー・イン・ジャパンの総決算 十四年分 付・古本屋探検術」としてまとまることとなった。大変にありがたいことである。
当初は連載というつもりはなく、ただただその年に、古本屋さんが好き過ぎて起こした奇天烈で我武者らな活動を、曝け出すように、勢いに任せて力一杯書き殴って行くばかりであった。東京の、そして地方の古本屋さんを巡りまくり、何を買ったか、どんな掘出し物があったか、そして新開店するお店にマッハで駆け付け、閉店するお店にお別れを告げに行く、そんな記事ばかりであった。だがメルマガ広報担当の「とんぼ書林」さんは、『あくまで古ツアさんの私観であるが、それでも一年の古本屋さん動静の側面が記録されていて、大変に興味深い』と評してくれたのであった。ただ力の限り書いたものが、他の視点によっては、別な有意義な側面を見せる……この気付きは私に勇気を与え、古本屋界のため!など変に肩肘張らずに、自分の思い通りに書いて行けば良いのだ、と確信させてくれたのである。そしてその結果が、この全六十ページの一冊となったわけである。 しかし改めて続けて読み返してみると、これまた別な側面が浮かび上がり、残酷な現実を突きつけられた気にもなってしまうのだ。確かに古本屋さんの記述や、地方に神出鬼没する様子は痛快であるが、読み込んで行くと、段々その軽快なフットワークとエネルギーが衰えて行くのだ……つまり、自分が齢を取って行く過程が、古本屋巡りの面から読み取れてしまうのである。連載開始時は四十四才だったのだが、十四年経てば現在五十八才……よくもここまで古本屋さんに向かって走り続けて来たものだと、己を褒めるべきかもしれないが、それでも二〇一一年と二〇二五年の報告の変わり様には、思わずため息が出てしまう。まぁこれは仕方のないことであり、毎回の連載でも書いている通り、この変節は自然なこととして受け入れ、これからもそれをありのままに書いて行くことが、恐らくこの連載の役目なのであろう。ちなみに先日「とんぼ書林」さんと連載について電話していた時に「連載、もう死ぬまで続けますよ!」と宣言したら「私の方が先に死んじゃいますよ」と返されたのであった……。 しかしこの連載が始まったのが二〇一一年というのは、大変に感慨深い。この年には東日本大震災があり、特に東北の古本屋さんが甚大な被害を受けた。その消息を確認するため、まだ被害をそのまま晒している街や、避難区域がようやく解除になった街、復興途中の街などを懸命に訪れたものであるが、気になるお店をすべて回るのに、二〜三年は費やしている。また二〇二〇年から始まる、新型コロナウィルスのパンデミックにより、古本屋さんの営業が脅かされることもあった。古本屋さんを巡るのが生き甲斐の生き物としては、休業要請により次々とシャッターを下ろして行くお店の前に立つのは、悲劇以外の何ものでもなかった。この体験がかなり堪えたのか、新型コロナへの恨み節を枕に記事を書き始めるのが、何年も続いているのは、今見ると悲喜こもごもと言った感じである。 とにかく十四年という時間が濃縮して収まった、古本屋まみれの一冊である。懐かしい古本屋さんの名前を見つけるも良し、素敵で変わった新しい古本屋さんの名前を知るも良し、古本屋さんの店頭には夢が転がっているのを認識するも良し、私の愚かで驀進的な古本屋調査活動に呆れるも良し、多くの人に手に取っていただき、様々な読み方をしていただければ幸いである。 小山力也 書名:『古本屋ツアー・イン・ジャパンの総決算十四年分 付・古本屋探検術』 |
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