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とにかくスゴいのヨ

とにかくスゴいのヨ

稲垣書店 中山信行

 二年がかりの仕事、なにがなんでも今年中には出すぞとシャニムニ追い込みにかかって書きまくっていたら、手で書くしか能のない究極のガラ系人間のこの私、指から肩から腰まで痛くなって、やっと仕上げた現在もうヘロヘロのヨレヨレ、一行だって書けやしない。仕方なくここはいちばん、ひとさまの作った文章と本の中で書いた己れの文章を切り貼りして、任を果たすとする。ゴメン。

 稲垣書店記念本 堂々の完成!
 『一頁のなかの劇場-「日本古書通信」誌上映画文献資料目録全107回集成』

 「日本古書通信」に1982年6月から2013年4月まで32年間にわたって掲載された、
 稲垣書店・中山信行渾身の映画文献販売目録を巡る全データの総決算。目録107
 回分の復刻と、各回の特集テーマ、掲載点数、売価総額、注文人数、売上金額、
 重複点数、最高重複品、全点外れ人数、誤記誤植の各データに添えて、当時の
 反応や人気商品、顧客の思い出などを克明に記録。
  また、第二部には本誌掲載分を中心に、達意の文章で書かれた映画文献屋の記
 録を収録。本書は、映画文献の発掘販売に半生をかけた前代未聞の一古本屋の記
 録であると同時に、古書的価値をも加味した映画文献目録ともなっていて圧巻。

  カラー口絵 16頁
  第一部 目録と解説  140頁
  第二部 文章あれこれ 60頁
   専門店やれやれ、稲垣書店中山信行さんのお話、九島興行資料の来し方行く末、
   今だから話そう全9回、稲垣書店目録21のなぜ
  お客様一覧
  目録データ一覧(折込)
  限定私家版 非売品 B5判 216頁

 上記はこの12月号の古書通信に、編集部が書いてくれた宣伝コピーである。本書の特色を過不足なくとらえていてうまいから、紹介はこれに譲る。ちょっと不足があるとすれば、「稲垣書店目録21のなぜ」ってやつの紹介で、この中身を本体の目次から引き移せば以下の通り、稲垣書店目録のスタンスと方法論が網羅されていて、興味深いこと請け合いだ。

  1 なぜ古本屋になったのか
  2 なぜ専門店を目指したのか
  3 なぜ映画専門に特化したのか
  4 なぜ目録作りを始めたのか
  5 なぜ1月おきの発行なのか
  6 なぜ活字のみの目録なのか
  7 なぜ特集形式にするのか
  8 なぜ目録を編集するのか
  9 なぜゴチックを使うのか
  10 なぜ別行解説を付けるのか
  11 なぜ別刷り目録を作るのか
  12 なぜ掲載料にこだわるのか
  13 なぜ売価にこだわるのか
  14 なぜ抽選制を採るのか
  15 なぜ目録のコピーをとるのか
  16 なぜ売り込もうとしないのか
  17 なぜ外れた人にも詫状を出すのか
  18 なぜ売上結果を公表してしまうのか
  19 なぜ目録販売以外やらないのか
  20 なぜ二つの雑誌を掛け持ちしたのか
  21 なぜ二つの名を使うのか

 肝(きも)は「なぜ売上結果を公表してしまうのか」あたりで、業界のタブーに挑戦した瞠目の主張と言えよう。その具体例として、第二部「文章あれこれ」に載せた「今だから話そう」全9回あたりが、仕入れから仕分け値付けまで逐一具体的な数字を明示していて、部外者ののぞき見ごころを刺激し、抜群におもしろい。「九島興行資料の来し方行く末」も、そんな古本屋稼業の始めから終りまで活写したドキュメントとして、我ながら何度読んでもおもしろい。
 結果、本はなんとか無事仕上がった。著者が附記と称したあとがきから取れば、以下のような感じである。

   おととしより丸二年もかけ、客に売るための仕事は一切せず、市で不良在庫を売
  っては喰いつなぎながら、回収するつもりのない金を百万も叩き、売るつもりもな
  いこんな本を出すなんて、オレってつくづくバカじゃなかろうかと思った。
   それでも、これで、この三十有余年、店売りだけでは立ち行かなくなった、当店
  の土台を支え続けてくれた目録販売の全容が、結果的にせよ、明らかとなった。
   ほかの多くの同業方のように、自前の目録ひとつ出せなかった私だが、「稲垣書
  店目録21のなぜ」の中でも書いたことだが、これを一冊の自家目録ととらえれば、
  三十年もかかってしまったが、これが最初にしてたぶん最後の、「稲垣書店古書目
  録」と言えるのかもしれない。

 そして非売私家版としてお客320、同業180、出版関係60などお世話になった方600名ほどにいっせいに送った。添状で返礼は口頭は避け、くれぐれも書面でと釘をさしておいたら、電話はなく、そのかわり三日目あたりからドッと郵便が舞い込みはじめた。
 そのほとんどが凄い、スゴいのオンパレード。いまだにパソコンなどさわったこともないあるじになり代わり、古女房がツイッターだかブログだかのぞいてみても、やはり凄いスゴいのオンパレード。でもこの本が画期的でスゴいってことは、書いた当人がいちばんわかっているんだから、本当はどうスゴいと思ったかが知りたいんだけれど、まァ仕方ない。そのスゴさを前代未聞、空前絶後と自らもっと喧伝してやりたいんだけれど、もう指も腕も肩も痛くて一行も書けやしない。それどころか疲労コンパイ、風邪までひいてしまって今やせんべい布団の中。これ以上無理して、これが絶筆なんてことにでもなったらシャレにもならないから、終りとする。あとは古書通信社でいくらか頒布するそうだから、それでも手に入れて、各自現物にあたってもらおう。あとは同じ12月号の後記で古書通信編集長が書いているコメントを、以下に書き写して、おとなしく寝るとする。ゴメン。

 稲垣書店さんの記念本がようやく完成した。私共はお手伝いした程度だが、編集
 作業に入ってからでも二年を要した。私的なものだからと非売品にされたが、少
 部数のみ当社直販で頒布することになりました。完璧主義の稲垣さん故、編集中
 も打ち込み過ぎて体調を崩さねば良いがと心配したが、無事完成した。
 他に例を見ない古本屋の記録となっています。お早目のお申し込みをお待ちして
 おります。

                       

gekijyo

『一頁のなかの劇場-「日本古書通信」誌上映画文献資料目録全107回集成』

本書は、非売品ですが、当社のみの直販として若干部数、
一部3800円(消費税別+送料360円)でお頒けします。
葉書、またはEメールでお申し込みください。
取扱・日本古書通信社 101-0052 東京都千代田区神田小川町3-8 駿河台ヤギビル5F
Eメール kotsu@kosho.co.jp
http://www.kosho.co.jp/kotsu/

Copyright (c) 2015 東京都古書籍商業協同組合

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