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一演目周辺たより(『海出刃恋魚(うみでばれんぎょ) 下地はるお戯曲選』)

『一演目周辺たより』(『海出刃恋魚(うみでばれんぎょ) 下地はるお戯曲選』)

下地はるお(川添 健次・天心堂)
 戯曲には、一つ一つ人の歴史があり、その歴史を垣間見る芝居があります。古本も本の歴史を垣間見る職業であるとすると、私は、今、古本屋天心堂を、日常演じているのかも知れません。 学生時代に劇集団を立ち上げ、十数年間活動して来たなごりが、下地はるお戯曲選「海出刃恋魚(うみでばれんぎょ)を書かせているのです。

 時は。民主化を掲げた盧泰愚政権下の韓国。首都ソウルで国際芸術祭(1989年頃)が開かれ、当時在日問題の芝居を書いていた私の作品が参加する事になりました。在日二世と韓国との出会い日本代表の一員として、稽古は熱を帯びていました。
渡航10日前の事です。私の作品に目を通した向こうの偉い高官から、メッセージが届きました。

 「何を考えているのです。混乱させる気ですか。今のこの国の情勢では貴殿の作品の内容は相応しくありません。時期尚早です。早急に止めなさい。」と云う通告です。今更、取り止め。社会問題を扱った芝居は駄目なのか。それは、国とは、民主化とは、表現の自由を改めて考えさせられる強烈な出来事でした。
時期尚早とは何だ。・・・複雑な気持ちのまま。結局、日本を思わせる出し物、鳥笛を使った(祖国をを訪ねる少女と鳥笛)を三日の稽古で仕上げ、参加する事となりました。

 祖国現地では、鳥笛の評判は良かったものの、国力を示す工場巡り。銃を持った兵士の見回り。米国オフオフ・ブロードウェーの代表者の抗議もままならず、インド、フィリピンなどの当たり障りのない芝居を二、三観て終わると云う寂しいものでした。
 別れの日。こちらの芝居でも使ってみたいという関係者の申し出があり、友好の印にと笛を差し上げて来ましたが、私自身、その笛の音を聞くこともなく帰国。今、韓国でその鳥笛が啼いているかは、定かではありません。

 今回、六ある演目の一つ「水(ムル)」は、韓国で出来なかった作品ではなく、同じ在日問題を扱った中の「父娘笑話」となります。
この芝居には、いい突っ張りと、いい音楽があれば良い。と作者が申しております。




書名:『海出刃恋魚(うみでばれんぎょ) 下地はるお戯曲選』
著者:下地はるお
編集発行:川添健次
発行所:天心堂出版部
判型・ページ数:A5・285ページ
価格:1,000円(税込)

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こちらからぜひご覧ください。

自著を語る(332) 「わがスーヴェニール 下地はるお戯曲選」(2024年9月25日号)

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