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『たまさかの古本屋 シマウマ書房の日々』


『たまさかの古本屋 シマウマ書房の日々』

鈴木創(シマウマ書房)
 
 名古屋でシマウマ書房という古本屋を始めてから、この春でちょうど20年になります。
 新刊書店のように出版社や取次から仕入れるのではなく、買い取りによって集まってきた本を販売しています。誰かが手放した蔵書を引き受けて、ほこりを払い、必要ならば補修をする。あらためて値段をつけて、店のなかでその本に相応しい場所を選び、さりげなく棚に並べておく……。
 そんな一冊ずつの本を、たまたまそのタイミングで読みたいという人に引き合わせることが、この店の仕事です。一期一会、偶然の出会いによって、古本は読者のもとに渡っていく。タイトルの「たまさか」は、そんな「偶然」とか「たまたま」という意味の言葉です。

 2013年に『なごや古本屋案内』(風媒社)を出版して以来、久しぶりの著書ということになります。今回の本は、朝日新聞の東海地域面で連載している「本の虫」というコラムから選んで加筆した文章と、新たに書き下ろした文章を編んだ、エッセイ集です。
 いくつかのテーマのうち、ひとつは、シマウマ書房の日々の仕事のことを書いています。古本屋という職業は、さまざまな本を扱うとともに、広くいろんな人と接する仕事でもあります。とりわけ、それぞれの場所で暮らす人たちの生活上の変化と、町の古本屋の仕事はつながっている。本書で描いているのは、ささやかなエピソードばかりですが、こんな出来事もあるんですよ、古本屋という場所からは、こんな風に世の中が見えてますよ、というスケッチとして、楽しく読んでいただけたらと思います。
 それから、もうひとつ。最近はネットやAIが発展するなか、本を読む人が減っている、ということがあります。本などなくても、デジタルのツールがあれば十分という感覚の人が増えている。そんな時代だからこそ、本書ではときに歴史的な事柄なども顧みながら、こんな側面もありますよねと、いろんな角度から、本の存在意義について考える内容にもなっています。

 私自身としては、言葉の器としての本のあり方に興味を持っています。人の言葉や考えというのは、かたちがなく、そのままではどこかに消えてしまうものです。けれど、本という器があることで、古今東西のさまざまな人たちの言葉や考えが、いまも消えることなく残っている。「言葉は空を舞い、書はとどまる」というラテン語のことわざは、そのことを表しています。
 残すことができる、ということは、その上にまた積み上げられる、ということでもある。そのようにして、これまで人は歴史を歩んできたし、古い文献に学びながら、新しいものを生み出していくのが、本の文化です。
それに対して、いまどきの新しいメディアは、リアルタイムの限られた時間のなかで、水平方向にいかに情報を広めるか、拡散するかというツールが主流です。それはそれで便利ですが、その先に積み上がっていくものがあるのかどうか、という点では、やはり本には及ばないという気がします。

 よく「失われた30年」といいますが、いまの世の中を、手放しで良い方向に向かっていると考える人は、それほど多くないのではないでしょうか。なぜ、このような状況になってしまったのか、という重い課題に向き合うためには、ネット動画はもちろん、テレビや新聞も、最近はなんとも頼りない。それだけに、本という昔ながらのメディアが持っている特性は、むしろこの時代に欠けている要素として、いまからでも見直されるべきものだと私は思っています。
 本というのは、立ち止まって物事を考える、きっかけを与えてくれるものです。読むという行為は、自問自答の時間を過ごすことでもあり、新たな自分にも、他人にも出会わせてくれる。ぜひとも生活の身近なところに、何冊かの本を置いてみてほしい。それだけできっと、あなたの人生にとっての味方が増えるはず。「日本の古本屋」を利用されている方々には言わずもがなのことですが、これからの若い世代の人たちにも、この本を通じてメッセージを届けられたらと願っています。




書名:『たまさかの古本屋 シマウマ書房の日々』
出版:亜紀書房
価格:2,200円(税込)
判型/頁数:四六判/256頁
ISBN:978-4-7505-1900-5
cコード:C0095

好評販売中!
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前著『なごや古本屋案内』もメルマガでご紹介しました!
こちらからぜひご覧ください。

自著を語る(107)『なごや古本屋案内』について(2014年11月11日号)

https://www.kosho.or.jp/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=1036

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