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『ももクロを聴け!』から眺める音楽本の地平 -版元ドットコムコラボ企画

『ももクロを聴け!』から眺める音楽本の地平

堀埜 浩二

 私の初の著書である『ももクロを聴け!』は、「自分が読みたかったものを、誰も書かないので自分が書いた」という設えの本です。気楽な読み物でありながら、充分にプロフェッショナルな音楽的知識を伴って、楽曲の中に入り込んでいくような音楽鑑賞ガイドは、ありそうでなかなかありません。またジャズやクラシックといった「初心者にはハードルが高そう」なジャンルにおいて音楽鑑賞ガイドは散見できますが、アイドルポップスの分野では見られなかったように思います。

実際には寧ろ、大人っぽいBGMあるいは教養としてジャスやクラシックを聴くよりも、最先端のアイドルポップスを楽しむ方が圧倒的に高度な音楽的リテラシーが必要であるにもかかわらず、です。私の周りの所謂音楽ファンからも、「ももクロのどこが良いのか、よく分からない」といった意見を耳にすることが少なくなかったので、せいぜいジャズやクラシックに留まっている彼らの「稚拙で狭量な耳」を、しっかりと開いてあげることも重要である、と考えました。

 一方でこの手の本の多くは、アーティストや作家の人生、楽曲の成立過程やそこにまつわるエピソードといった「周辺情報」に留まり、楽曲そのものに踏み込んで書かれることは、あまりなかったようにも思います。ゆえに本書では、そうした周辺情報とともに、アーティストの魅力の本質や鑑賞のポイント、楽典的な知識、作家・制作陣の情報、さらにはももクロから広がる他の各種の音楽や芸術文化、現代思想等についても言及することで、彼女たちが歩み、到達した「その場所」をマッピングすることも、強く意識しました。読み進めることによって「聴いているような気分」になり、未聴の楽曲については「聴いてみたく/書いてあることを確認してみたく」なる。そのような本になっていれば、企図は果たされたことになります。

 本書は言わば「ももクロ中華思想」の視座から、徹底的に褒めちぎって書くことを旨としました。私は音楽評論家ではなく、極めてヘヴィな音楽リスナーであり、同時に演奏家/作曲家でもあります。そうした軽やかな立場にある人間が、21世紀初頭の日本が生んだ、最上にして至福の音楽作品群の「本質」を書き記すことには、大きな意義があると考えます。今後おそらく、我が国の音楽及び芸術文化全般を語る上で、ももクロが最も重要な位置を占めることになるでしょう。その意味で本書は、数十年先の読者をも想定しています。以上、現場からでした。



momokuro
『ももクロを聴け! ももいろクローバーZ 全134曲 完全解説』
堀埜浩二 著
ブリコルール・パブリッシング 刊
定価:1,800円+税 好評発売中!

http://bricoleur-p.jp/product/momokuro.html

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