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雑誌「本の街」とシェイクスピアギャラリー

雑誌「本の街」とシェイクスピアギャラリー

清水あつし
 昨年3月に、1980年創業の雑誌「本の街」が廃刊になると聞き、私が受け継いで発行を継続して1年3か月余が過ぎた。神田駿河台で「画廊兼古書店シェイクスピアギャラリー」を開業して7年になるので、その両輪が私の今の人生だ。これまでの68年の人生で貯めてきたもの、背中に負ってきた財産をとりわけ「本の街」には全てぶちこんで、編集発行を続けている。だから「本の街」について話すときには、このシェイクスピアギャラリーの説明からまず、せねばならない。

 そもそも、シルビア・ビーチという女性が1920年代パリで始めた英語の本の貸本屋が当方の名の元になった「シェイクスピア&カンパニー書店」だ。ヘミングウェイや多くの芸術家が出入りし、ジョイスの「ユリシーズ」を出版した、という事は皆さんならご存知の方も多いだろう。今もセーヌ川沿いの一等地で、世界からの若い本好きが集まる観光名所になっている。
 このシルビア・ビーチの著書『シェイクスピア&カンパニー書店』(河出書房・1974年刊)が日本で出版されたのがちょうど私の高校2年生の時で、私はその本に影響を受けたのか、大学生の頃から本の街神保町界隈で日本版「シェイクスピア&カンパニー書店」を開くのが夢だった。一応「普通のサラリーマン?」としてお務めを十分果たした後、7年前に開業に至った訳だ。シェイクスピアギャラリーは「画廊兼古書店」と称しているが、本を売った事はまるでなく、近年は1920から30年代の日本人画家たちの滞欧作品を中心に近代洋画等を扱う「美術商」である。

主流としての「昭和文学」「戦後文学」

 そんな訳で最近よく「何故自分は古本屋になりたかったんだろう?」と自問して人生を振り返るのだが、18歳まで過ごした静岡県焼津市の家の近所には、港の周りに漁船に積み込む船員娯楽用の古雑誌そして古本を商う店が何軒かあった。とは言っても「港書店」という新本兼の古本屋以外は、漁具だの食料だのを商う店の一角に本棚もあるというだけの古本屋で、船員向け漫画やエロ雑誌等が中心で、小学生が本を探すというような店ではなかった。その唯一の古書店「港書店」もエロ本と共産党関係の棚があって、普通の古本は棚2つくらいで、それも漁船から下してきた娯楽本など状態の悪い本だらけで触ると手が汚れそうだった。中学生の頃だったかその棚に、美術評論家針生一郎の『針生一郎評論1・芸術の叛乱』(田畑書店・1971年刊)の献呈署名本があって、何故こんな所にこんな本があるのだろう、と子供心に不思議に思いつつ購入。今も手元にあって時折読む。

 話がややそれるが、当時は勿論新本の本屋にもよく行き高校生の時毎月の小遣い3000円の内の2500円をはたいて刊行されたばかりの『三島由紀夫全集』(新潮社)を買ったりした。私は中学生の頃には三島の作品のほとんどを読んでいたが、この全集本はハトロン紙の感触を毎日手で触って愉しみ、本を函から出したり入れたり何十回もやって恍惚としている、相当アブナイ、ビブリオマニアの高校生だった。とは言っても司馬遼太郎や五木寛之、伊丹十三、庄司薫何でも読んだし、芥川賞は野呂邦暢の「諫早菖蒲日記」が選に漏れ、森敦の「月山」が受賞など、文学とか本が「世の中の真ん中にあった」、良き時代だった。近くの藤枝市には作家・小川国夫もいて、周囲には信奉するオバサンもいた。
 回顧が長くなったが、この「本の街」の方向性にもし「主流」というものがあるとすれば、それは「昭和の文学」「戦後文学」ではないか。私はそれを言いたいのだ。

古本屋必勝法としての「私塾&読書会

 さて高校生の私が当時発見した「古書店とは何か」、というと「私塾」というものだった。自分の好きな本、気にいった本だけ並べて客を待つ。好きな本、自分の気に入った本、わかる本だけ並べている、「私の城」であり「私の楽園」だ。貴重な本・素晴らしい本には、それなりの値段をつけて積極的には売らない。来る客は拒まず、売りたくないような本は並べず、売らず。。。それで食っていけなければ、それは仕方ない。まあそういう生活をすれば良い。高校生の時に発見した、私の「人生の真理」である。

 まあとは言っても、家庭を持ってかみさんや子供も一緒に生活するかも知れない。それだから、子供に勉強を教える塾も併設しよう。古本屋の一角にテーブルと椅子を置いて子供たちの塾にしよう。これならば古本屋と塾が併設出来る。吉田松陰の「松下村塾」のような私塾、と思った(司馬遼太郎の幕末小説の影響だ)。
 そして子供が帰った後はお茶とお菓子を出して奥様たちと「読書会」をやろう。。。。まあ、こんな店を家賃の安い地方都市でやるには、立派な包装紙が重要だ。それで「パリのシェイクスピア&カンパニー書店」の装いで行こう!!というのが、私が若い頃考えた、いわば「古本屋必勝法」だった。これなら大丈夫!と私は確信した(今で言うブックカフェだが、それを50年以上の昔に着想した訳だ)。

そんな訳で私は嫌な就職もせずに古本屋になる筈が、入社できるならサラリーマンとして社会見学を10年間するのも悪くない、と4年生になって助平根性が芽生え、ある会社に入社したのが運の尽き? 40年もいる事になってしまった。かみさんが出版関係だったのと、子供が大きくなる頃には家の中全体が「巨大古本屋」のようになってしまい、何を今更。。。という次第。(娘が1歳の時に最初に覚えた言葉が「フルホン」だった)

 雑誌『本の街』はそもそも採算が成り立たなかった事業なので、今は家族も動員して総力戦で経費節減。画廊とともに私の年金が営業資金の全てだ。行政や大企業から、前の時代も含めこの46年間金をもらった事がないようだし、今も当然ない。そんな薄汚いマネーをもらって発行したら「世界一の神保町・『本の街』の名が廃る」のではなかろうか。だから編集方針は「シェイクスピア&カンパニー書店」のような古本屋コミュニティなのである。是非多くの店や団体に加盟店になっていただき(月額3000円20冊)、少しずつでも読者を増やしていければ幸いです。そして古本コミュニティの為に、仕事や商売でもそれ以外の内容でも是非ご執筆と寄稿をお願いします(同人誌のようなものです)。

◯「本の街」6月号
◯「本の街」7月号

 

〇筆者(自身のギャラリーにて)

書名:本の街
編集発行:清水篤
発行:本の街編集室
制作:本の街編集室

加盟店で好評配布中!
https://honnomachi.jp/

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