『まっ直ぐに本を売る――ラディカルな出版「直取引」の方法』(苦楽堂)石橋毅史 |
これから出版社や書店を始める人。本に関わる仕事をする可能性がある人。 まずは、そうした人たちに知ってほしいと願いながら書きました。 新本の流通に問題があると感じている人。 本が生まれ、読者に届くまでの過程に関心のある人。 そうした人たちにも、読んでほしいと思っています。 2001年に創業した出版社・トランスビューを主な取材対象とし、「出版社―書店間の直取引」について、その方法をできるだけ詳しく、わかりやすく紹介することを目指しました。 直取引。馴染みのない人が多いと思います。(ちょくとりひき)と読みます。 なぜ、単行本1冊を費やして伝える必要があるのか? 多くの出版社は、「取次(とりつぎ)」と呼ばれる出版専門の卸業者を通じて、自社の本を書店へ送ります。書店の仕入れ代金も、取次が回収しています。物流と精算を頼めることは、とても便利だからです。 長所がある以上、どうしても短所が発生します。 短所とは、たとえば「書店のうけとれる利益が少ない」「書店が注文してもなかなか届かない」「書店が望む部数が入らない」といったことです。 書店にとってのマイナスばかりを挙げました。それがなぜ、出版社にとってのマイナスになるのか? 書店がじゅうぶんな条件の下で営業できなければ、それによって書店が世の中から減り続けてしまったら、全国各地で1冊1冊、読者に売ってくれる人がいなくなってしまうからです。 トランスビューは、この問題の解決を前提にした取引条件を設定し、取次を使わない流通を基本としてきました。書店の利益率を取次から仕入れるよりも10%ほど上げ、書店から受けた注文はすべて要望どおりの冊数で送っています。しかも、すべてを当日のうちに配送しています。 トランスビューは、なぜそうした流通を15年にわたって実現できているのか? 小さな出版社だからできるのだ、という意見があります。たしかにトランスビューは、常に2、3人の人員で運営しており、小回りの良さを活かしているところがあります。 だが、小さな個人や組織だからこそ実現できるのだとしたら、それは「誰にでもできる」という可能性をもつことになります。一人ひとりの「私」や「あなた」の実行の集合が、「出版流通」という巨大な問題の解決につながるのだとしたら、なかなか愉快なことです。 あくまでも「有効な方法のひとつ」なのだと思います。 自分はどうするのか? どのような方法をもって本の世界と関わるのか? その答えを、読んでくれた一人ひとりが見つけてくれることを楽しみにしています。
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