昭和初期、エログロ雑誌ひいてはエログロの風潮そのものをリードしたのは、『グロテスク』だった。主宰は梅原北明、逮捕・入獄歴では西の横綱・宮武外骨をしのぐと言われた男である。大正後期に「デカメロン」「ロシア大革命史」で出版界にデビューした北明は左翼傾向の雑誌『文芸市場』とエログロ雑誌『変態資料』を発刊。2つの傾向を使い分けながら、そのどちらでも検閲当局と華々しくぶつかった。しまいには中国・上海から指令をだして日本で秘密出版、昭和3年夏東京に戻ったところを逮捕、2ヶ月後保釈された。その直後・昭和3年11月号が『グロテスク』の創刊であった。
私と『グロテスク』の出会いは古く、古本漁りをしていた頃何度も出会っていたが、意識して探し始めたのは『グロテスク』に渋谷修の絵を発見してからであった。謎の前衛画家・渋谷修の作品など、大正・昭和の絵画専門雑誌などを見てもそう簡単には見つからないのだが、それが『グロテスク』のある号を見たら、てんこ盛り状態だった。そうなれば『グロテスク』を片っ端から、出来れば全てを見つけなければならなくなった。しかし、探してみると『グロテスク』は簡単には見つからない。昭和3・4年はともかく、5年・6年のものなど、存在するものやらどうやら、雲を掴むような話。何軒もの古本屋さんの協力の結果、目下のところ20冊ということになった。
そうして出来上がったのがこの『与太雑誌・グロテスク』である。梅原北明・渋谷修はもちろんのこと、前衛画家・酒井潔や峰岸義一を知りたい方にもご一読をお勧めする。
私のような素人の美術愛好家にとっては、美術館・博物館などは敷居が高い。頼りになるのは古本屋さんである。各種の貴重な資料をどこからか探し出してきてくれる。この本のそこここで古本屋さんの実力をご覧いただけるだろう。いつもながら、感謝。

『与太雑誌・グロテスク』 市道和豊 著 自費出版
B5判 91頁(一部色刷り有)
頒布価格 2,000円(税・送料込)
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663-8177 兵庫県西宮市甲子園七番町17-7-313 市道 和豊
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