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日本文化を愛した男たち

日本文化を愛した男たち

映画監督 金髙謙二

 今年の2月、企業VPのためインドへ撮影に行った。うだる暑さの中、オールドデリーの町中をリキシャに揺られ、カメラを回していると、目に飛び込んできたのが、ずらりと並んだ本。本屋だった。それも相当数の店が軒を並べている。行けども行けども、両側に並ぶ本屋。時間がなかったので、リキシャを降りて、一軒一軒見ることはできなかったが、運転手の話では、分野の違う色々な本があるということだった。

 人類は、ある時、伝達手段の言葉を覚え、それがやがて、文字という残るものを発明し、人から人へのコミュニュケーションを加速させていった。そして、自分の思いや、手がかりを他人へわかりやすく伝える本へと発展を遂げた。いつしか、言語は、その壁を越え、翻訳されたものが異人種にも伝わるようになった。だが、それを善としない権力者たちが現れ、焚書という蛮行に及んだ。しかし、心ある人たちは、常に本とともに暮らし、人類の進化を見守ってきたのである。

 神田神保町は、世界に類を見ない一画である。オールドデリーの本屋街もそれなりに大きいと思ったが、それ以上であると思う。規模、本の種類、数、世界一の本屋外であることは紛れもない。その神保町が、第2次世界大戦の空襲でも爆弾の被害に遭わなかった。東京は100回以上の空襲を受けているが、それらをかいくぐり、生き残ったのである。これはまさに奇跡というより他にない。4年前、そのことを八木書店の会長八木壯一さんから聞かされ驚いた。ロシア人のエリセーエフが、マッカーサーに進言をしたという都市伝説のようなことが書かれている司馬遼太郎の「街道をゆく」は事実でしょうかと尋ねられた。「そういうこともあるでしょうね」と答えた私は、即座に次の作品は、これだと閃いた。

それは本当なのだろうか?神保町は一人のロシア人によって救われたのか?調べていくと、ウォーナーというアメリカ人に行き当たった。ウォーナーは、なんと、日本の文化財を戦争の被害から救済するためのリストを書き、そこには、日本の国宝級の施設が151箇所も載せられていた。私は、さらに愕然とした。今ある日本の文化財の多くは、これら外国人たちの手によって残されたのか?そして、ようやく日本人の名前が出てきた。朝河貫一、日本人で初めて、米国の名門イェール大学の教授になった人である。これらの3人の男たちを追求していく記録が映画「ウォーナーの謎のリスト」である。



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『ドキュメンタリー映画 ウォーナーの謎のリスト』
金高謙二 監督
シネマボックス株式会社 http://www.cinemabox.jp/

●神保町シアター 10月29日(土)~11月4日(金)
http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/

●東京都写真美術館ホール 11月5日(土)~11月13日(日)
https://topmuseum.jp/


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