『アプリで学ぶくずし字 くずし字学習支援アプリKuLA(クーラ)の使い方』飯倉洋一 |
くずし字を読める人を増やしたい、もっと手軽に学習できるようにしたいと思い開発した、スマートフォン・タブレット用の初心者向けのくずし字学習支援アプリ“KuLA”(Kuzushi-ji Leaning Application)をリリースしたのが2016年2月18日。それからほぼ1年を経て本書を刊行できたことは感慨深い。“KuLA”は5万ダウンロード回数を超え、多くのくずし字学習者に支持されている。昨年末のバージョンアップの改良点のひとつとして英語版も出来、国際的くずし字教育に、より貢献できるようになったと思う。「かわいい」「楽しい」と感想を言ってくださる方も多い本書だが、れっきとした科研(挑戦的萌芽研究)の研究成果の一部である。その正式名称は「日本の歴史的典籍に関する国際的教育プログラムの開発」。つまり学術研究を社会還元したものとお考えいただきたい。 “KuLA”を設計・開発したのは橋本雄太さん。人文情報学という分野を専攻していて、プログラムが書けるSEであるが、くずし字もある程度読める方である。くずし字習得の過程で、どんなことに苦しむかを経験的に知っていることが、学習しやすいアプリを作ることに役立っている。文理融合を体現しているような橋本さんの存在がなければ、“KuLA”の開発は不可能だった。 また、本書12ページから15ページにかけて掲載した「アプリ収録仮名一覧」「アプリ収録漢字一覧」は、国語学を専攻する久田行雄さんをはじめとするスタッフが、江戸の版本(はんぽん)のひらがなの使用字母(じぼ)と漢字を調査し、その出現頻度をデータにとった上で、版本を読んでいくのに最低限必要な文字を厳選したものである。これによって非常に効率的にくずし字学習ができる仕組みである。収録漢字の一覧はアプリでは出来ないので、アプリと合わせて活用していただけると思う。 アプリの「よむ機能」に載せた「しん板(ぱん)なぞなぞ双六(すごろく)」は、実践練習教材だが、なぞなぞを解く楽しみもある。江戸時代のなぞ解きだけに、「心は…」と明かされる答えがピンとこないものもあろうが、アプリで解説しきれなかった。そこで本書では、それを丁寧に解説する注釈を付けた。日本近世文学を専攻する有澤知世さんの執筆である。これもアプリで勉強しながら参照していただきたいコーナーである。 本書に寄せられたエッセイの多くは、科研主催の国際シンポジウムに登壇した方の発表内容と、くずし字教育の実践報告であり、これも研究成果を反映したものである。 このように本来はおカタい内容のはずの成果報告を、楽しい本に仕立ててくれたのは、笠間書院の西内友美さん。アプリのマスコットキャラで、本書でも大活躍する「しみまる」と「しばのすけ」の生みの親でもある。スタッフのおかげで素敵な本が出来て、とても嬉しい。本書がくずし字を学ぶ皆さん、教える皆さんのお役に少しでも立てればと願っている。 ●アプリのダウンロードはこちらから(無料) ■iOS版はこちら。 https://itunes.apple.com/jp/app/kuzushi-zi-xue-xi-zhi-yuanapurikula/id1076911000?l=en&mt=8 ■Android版はこちら。 https://play.google.com/store/apps/details?id=yuta.hashimoto.kula
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