『東京 わざわざ行きたい街の本屋さん』 について和氣正幸 |
BOOKSHOP LOVERという活動を始めて7年目にして活動の成果ともいえる本を上梓することができた。元々は出版業界とは縁もゆかりもないメーカーのサラリーマンだった私が、何を思ったか独立した、そのすぐ後に出版社のGBからお声がけいただいたのがキッカケだ。 そもそも私は本屋になりたかった。2010年の夏、このまま会社勤めを続けるのは嫌だと思い、本屋になることにした。そこで、自分がやりたいと思える小さいけれども個性的な本屋を調査したのだが、その内容が膨大になったので、せっかくだからとそれをブログとして公開することにしたのだ。当初は私的ブログに過ぎなかったものだったのだが、不思議なもので、気づいたら現役の本屋の店主も読んでくれるようになり、読者も増えていった。周囲を見渡してみると、出版業界以外の人間で同じような活動を行っている者もおらず、嬉しいことにお仕事をいただくことも増えた。本業との両立が成り立たなくなったので独立した次第である。 BOOKSHOP LOVERは本屋を応援する活動だ。その活動範囲は本屋紹介ブログ「BOOKSHOP LOVER」やSNSでの交流、イベントの主催・運営、書評サイトの運営、書籍の販売など多岐に渡る。本書『東京 わざわざ行きたい街の本屋さん』はそうして活動していく中で、「東京で本屋めぐりをするならどこが良いか?」と編集者と話し合って生まれたものである。 荻窪・西荻窪、谷根千、下北沢など、あらためて数えてみると約130もの店を取り上げることになった。この中には巡るには難しいような点在している本屋の掲載数は少なく、神保町の本屋も僅かしか掲載していない。さらに、紀伊國屋書店のようなナショナルチェーンを除いてもこれだけの数の本屋があることには驚いた。 ほとんどの本屋に直接赴いて取材した。一店一店にストーリーがあった。1時間以上もの時間をかけて話を聴いたが、ページ数の関係で掲載できなかったエピソードは山ほどある。それでもそれぞれのお店の魅力を過不足なく伝えることが出来たと思う 出版記念イベントをいくつか開いているが、5人にひとりくらいの割合で20代の若者が参加してくれているのがとても嬉しい。出版不況と言われて久しいが、そういった若者が本屋を巡り、本の世界の奥深さを知り、やがては本屋になっていってくれればと思わずにはいられない。本書がその一助になれればと思っている。
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