沙羅書房 創業50周年記念誌 『古書の道』について沙羅書房 初谷康夫 |
私ども沙羅書房は、江戸、明治期に出版または書き写された和本や古地図が専門の古書店です。歴史、地誌、伝記、書誌、民俗学などの学術書も取り扱っており、とくにアイヌや北方、琉球関係資料を充実させています。平成29年4月18日に創業50周年を迎えることができました。創業20周年の折には『蝦夷紀行』影印本を、30、40周年には目録の記念号を発行しましたが、50年の節目として、これまでに支えてくださった皆様方への感謝を表し、『古書の道 沙羅書房 五十年誌』を刊行しました。創業者が長年記していた手帳をもとに資料を整理し、さらに写真を織り交ぜて編集し、約4年間の準備期間をかけて刊行に至りました。 創業者の初谷康夫は、昭和31年2月に神田神保町にある古書店・一誠堂書店へ入社し、11年間の修業を経て、昭和42年4月に沙羅書房を創業しました。本書では、「沙羅書房五十年の歩み」として、「創業者誕生~高校時代」、「一誠堂書店 店員時代」、「沙羅書房 創業」、「沙羅書房 新社屋へ」の4期にわけて年表にまとめています。各年表ごとに読み物として、「恩師の支え」、「一誠堂書店での修業」、「和本の魅力」、「作家との交流」を付し、創業者が古書業界に入るきっかけとなった高校時代の恩師とのエピソード、仕事を覚えるまでの苦労や店員同士の交流といった修業中のエピソード、和本や古地図の世界の奥深さや商売上の心構え、松本清張先生や井上靖先生をはじめとした著名な作家たちとの交流などについて書いています。また巻末には、50年間に目録に掲載した品々の中から147点を選び、解説とともに図版を収載しています。 50年の間には、オイルショックやバブル、バブル崩壊後の不況といった時代の変化がありました。今日のインターネットの普及によっても、古書を取り巻く環境は大きな影響を受けています。こうした変化に対応しつつ、知識や経験を重ねて良古書の収集に努め、ときには稀少本との出会いといった、古書店としての醍醐味を味わう機会にも恵まれています。また、お客様や同業者から学ばせていただくことも多く、ありがたい経験となっています。一古書店の記録ではありますが、古書の世界のおもしろさを感じていただければ幸いです。
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