「カバー、おかけしますか?2」本屋さんのブックカバー集中西晴代 |
書店のレジで「カバー、おかけしますか?」と聞かれる、それを248枚載せた写真集です。
「書皮(しょひ)」という言葉があります。中国人に訊くと、カレンダーなどの紙を折って、自分で本に掛けるカバーのこと、と言います。日本では広辞苑に「書物の表紙」と載っていますが、日常的に使われている言葉ではありません。自分で紙を折らなくても、書店で買った本にカバーを掛けてくれるからでしょうか。教科書など大切に思う本に、丁寧に紙を折ってカバーを掛けた思い出があるのは、今や古い世代かもしれません。いつ、どこの書店で始めたことか、確かなことは分かりませんが、新刊書店だけでなく、以前は本を包んでいた古書店にも、オリジナルデザインのカバーを用意している店があります。 家の近くの書店で、12月に本を買ったら、トナカイの絵が描かれた真っ赤なカバーが掛けられました。もう1枚欲しくて、もう1冊本を買った、40年近く前のそれが、私の書店カバー蒐めの原点です。 私と同じように、<書店のカバー>が気になっている人達が集まって、書店で掛けてくれるカバーを「書皮」と呼んで、1983年に「書皮友好協会」ができました。初めての顔合わせの時に、たくさんある書皮の絵柄に魅せられて、「素晴らしい書皮の書店を讃えよう」と、人気投票をしました。それから30年、全国大会と称して毎年1回集まって、十人以上でぞろぞろと書店巡りをして、夜の宴会で持ち寄った書皮で投票をして、「書皮大賞・地方賞・特別賞」を決めました。 2005年に、1回~20回の「書皮大賞」と、絵柄でジャンル分けした約200枚を紹介した本「カバー、おかけしますか?」(出版ニュース社刊)を出しました。その後、書皮大賞を選ぶ全国大会は30回まで続いて、そのすべての投票に参加をした私と、30余年間の会の活動の記録として、4月に2冊めを出しました。本はどこで買っても同じ値段で、同じ商品で、違うのは書店のサービスの「皮」の部分です。そこには、書店のご主人の思いが込められています。今回は日本だけでなく、1992年頃まで韓国の書店でも日常的に使われていたカバーや、1940年代にアメリカの大学内の書店で使われていたものも紹介しました。 以前は、電車の駅前には小さな書店がありました。図書館で電話帳をコピーして、書店が記載されている昭文社の地図を持って、電車に乗ったり降りたりして書店を巡ると、コレクションはどんどん増えました。最近は駅前に書店がなくなって、地元の人達に愛された老舗書店も次々に姿を消しています。とても残念なことですが、書皮が残って、書店があったという記憶は残ります。だかがカバー、されどカバー。書店のレジでいりませんと言う方も、掛けてくださいと言う方も、しばし紙を広げて、そこに描かれた絵柄を見てみませんか? 思わぬ発見があるかもしれませんよ。 |
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