『銀幕に愛をこめて ぼくはゴジラの同期生』のむみち |
ほこりまみれの小さな古本屋でバイトしている(@最低賃金)私が、どうして映画スター・宝田明のインタビュー本を筑摩書房から出版することになったのか。 話は2011年秋まで遡る。当時私は、2009年からハマり始めた旧作邦画熱がピークでせっせと名画座へ足を運んでいた。そして、神保町シアターで「千葉泰樹監督特集」が開催された折、たまたま『二人の息子』を観たところ、なんと主演の宝田さんが観にいらしていたのである。 さらに別の日にも観に行ったところ、またもや宝田さんのお姿が。そして、映画が終わり劇場の外に出ると、目の前にその宝田さんが歩いているではないか!ここで声を掛けなかったら一生後悔する、そう思った私は宝田さんの背中に向かって走り出していた。 一方、本書の担当編集者・青木真次氏は、元々特撮少年で、地元の映画館のスクリーンで宝田さん主演特撮作品のリバイバル上映を観て大きくなった。同社で実相寺昭雄や岡本喜八などたくさんの映画本を手がけてきたそんな青木氏の夢は、いつの日にか小さい頃からのヒーロー・宝田明の本を作ることだった。 その後筆者が発刊した月刊無料名画座情報紙「名画座かんぺ」が氏の目にも触れることとなったり、縁あって両者とも内藤誠監督の『酒中日記』に「出演」していたり、そもそも氏が筆者の職場の古書往来座のお客様だったり、となんとなくの接点はあったのだが、我々を決定的に繋げてくれたのが、当メルマガでもおなじみ、古本ライターの岡崎武志さんである。氏は岡崎さんの同社担当編集者でもあるのだ。 「のむみちが宝田明と仲えェらしいで」 こうして本書は生まれた。 本書は、俳優・宝田明の幼少期(満洲からの壮絶な引揚げ体験……)からその後の60年にわたる俳優人生をまとめたもので、基本的には宝田さんのひとり語り形式で、適宜筆者の「地の文」が合間に入る形をとっている。地の文を書くため大量の資料の海に身を沈めるのは、大変ながらも至福のひとときだった(特に日本映画全盛期の章)。資料といえば、舞台『北海の花道』(1973年/明治座)で森繁久彌・三國連太郎と共演した時の傑作失敗談があるのだが、まさにこの「日本の古本屋」で入手した同作のパンフレットが非常に役に立ったのでした。ありがとうございます。 さて、宝田さんの近況だが、先日まで有楽町スバル座で公開されていた新作『明日にかける橋 1989年の思い出』でも出番は少ないながら印象的な重みのある役を演じており、さらには秋口にもうひとつ新作の撮影を控えているとのこと。解禁前なので詳細は明かせないが、小耳に挟んだ役どころによると、「伊丹十三作品における宝田明」をしのぐ「後期宝田明の代表作」になるような気がして密かに期待している。 朝日新聞の書評で横尾忠則さんが書いてくれたように、「『宝田明物語』の夢はまだまだ終わりそうにない」のだ。 ※『明日にかける橋 1989年の思い出』は、来月以降、大阪・静岡・名古屋、と回るらしいです。お近くの方々は是非お運びくださいませ~☆ ![]() 『銀幕に愛をこめて ―ぼくはゴジラの同期生 』 宝田 明 著 のむみち 編集 筑摩書房 定価:本体2,000円+税 好評発売中! http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815439/ |
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