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『本屋な日々 青春篇』

『本屋な日々 青春篇』

石橋毅史

 最近の書店は、本を扱うだけでなく、カフェを併設し、雑貨を扱い、トークイベントを積極的に開催する。それぞれの資金力、アイデア、キャラクターを活かして、続けられる店になるための経営努力をしている。

 そうした書店の風景を、快く思わない人もいる。本だけでは利益を確保できない、そもそもあまり売れないという書店の事情はわかるが、肝心の本がたんなるお飾りになってきている、なんのために本を売ってるんだ、まさに本末転倒、というわけだ。
 そう思うのはたいてい、本に親しんできた人であろう。書店に見せてほしいのは充実した棚である、本の奥深さを知る店主やスタッフによる気の利いた品揃えである、原点のところをしっかりやってくれ、ということだと思う。

「充実した棚」や「品揃え」だけが書店のチャームポイントだった頃、そのための「経営努力」は見えにくかった。いまは「経営努力」のほうが前面に出ている書店も増えていて、それがある種の人たちを辟易させるのかもしれない。だが、書店の風景は時代を反映する。現代の消費者が、それを望んだともいえる。ただ腹を立てるだけではもったいない。表出している「経営努力」の後ろには、客のために本と真摯に格闘している本屋がいるはずだ。どの店にも絶対に、とまではいわないが。

『本屋な日々 青春篇』にも、「経営努力」が表出している書店の風景が出てくる。僕は、未購入の本の持ち込みOKのカフェが併設された店内で、漫画も持ち込んでいいんでしょうか、とスタッフに訊ねて困惑させてしまっている。全体としては、登場するのは「本屋」を突き詰めようとしている人たちである。なぜ、この時代に本屋をやるのか。日々、店を開け、客の相手をしながら、自問自答し、闘っている人たちである。

もちろん、彼らも生き残るために工夫をしている。僕は、その工夫とあわせて、彼らが「本屋」としてどうあろうとしているのかを、書こうとしてきた。それは、僕自身が「書く者」としてどうありたいのかを問うことでもあった。

本屋な日々、というやや奇妙な響きのタイトルは、2013年から続けている連載のタイトルからとっている。青春篇、となっているが、年齢の若い本屋ばかりが登場するわけではない。今後も、いくつかの「〇〇篇」の刊行を予定している。デザイナーと編集者のアイデアで、本のデザインと造形には多くの遊びが施されている。これは具に説明するよりも、どこかで現物を触って、表紙カバーやオビを外してみたりして、確認していただきたい。



honyana
『本屋な日々 青春篇』 石橋毅史 著
トランスビュー 価格:1,800円+税 好評発売中!
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784798701677

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