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古本屋ツアー・イン・ジャパンの2018年上半期活動報告

古本屋ツアー・イン・ジャパンの2018年上半期活動報告

古本屋ツーリスト 小山力也

 あっという間に七月も終りとなり、嘘みたいに高速で月日が過ぎて行く。2018年になったばかりの感覚をまだ引き摺っているので、どうにも納得のいかぬ夏である。だがそうは言っても、たくさんの古本屋さんに行き、たくさんの古本を買って来た半年は、歴然と残されている。

 ここ最近の主な活動は、特定の『定点観測店』に依拠した古本買いなのであるが、その観測パターンは大きく三つに分けられる。『短周期観測店』は、それこそ日を置かず訪ね歩く近場のお店で、荻窪「ささま書店」高円寺「古書サンカクヤマ」吉祥寺「よみた屋」阿佐ヶ谷「古書コンコ堂」&「千章堂書店」などが挙げられる。続いて月に何度か訪れる『中周期観測店』は、下北沢「ほん吉」武蔵小山「九曜書房」神保町「日本書房」武蔵境「浩仁堂」経堂「大河堂書店」仙川「文紀堂書店」高円寺「アニマル洋子」早稲田「古書現世」中村橋「クマゴロウ」東村山「なごやか文庫」川崎「朋翔堂」などが主であろうか。

普段はこの短周期と中周期を縒り合わせて、古本を買い集めていることになる。これだけの良質なお店を、取っ替え引っ替え日々訪ね歩き回れるのは、東京に住む者の、大きな古本的アドバンテージであろう。そしてさらには、一年に一度行けるか行けないかの『長周期観測店』が存在し、飯倉「クルクル」県立大学「港文堂書店」出町柳「善行堂」静岡「萬字亭」足利「秀文堂書店」松本「松信堂書店」鶴岡「阿部久書店」長岡京「ドニカ文庫」六甲「口笛文庫」などなど、長周期と言うよりは、行きたくてもなかなか行かれぬお店と言った方が正しいかもしれない…本当は短期に入れ込みたいほど毎日顔を出したいお店ばかりなのだが、いかんせん遠いのでなかなか…というのが現状である。

 そんな毎度の古本ライフを送りながらの、今年一月からの私的な流れを俯瞰してみると、まず“凶”のお神籤を引くことから始まり、落ち込みながらも吉祥寺の写真集専門古書店「book obscura」を見付けたり、早稲田に新しく開店した文学古書に強い「古書ソオダ水」に駆け付けたりした。二月には千葉県大久保の名店「キー・ラーゴ」閉店の報に接し、さらに高円寺の古着も売るお店「七星堂古書店」がもぬけの殻になっているのを目撃する。早稲田からいつの間にか「谷書房」と「文英堂書店」が消えていたのに気付いたのも、この月であった。三月は西調布に“旅する本屋”の「古書玉椿」が「folklora」として、北欧や刺繍&洋裁に特化した棚造りで帰って来た。中村橋には二百円均一の本が良質な「古書クマゴロウ」が開店し、西武池袋線の古本屋地図を新鮮に塗り替えてくれた。阿佐ヶ谷ではなかなか開かない休業日の方が多い「雨前」に、五ヶ月越しでようやく入ることが出来た。

また竹ノ塚「永瀬書店」の最終営業日を見に行くが、営業開始が夕方遅くからと変則的になっていたので、泣く泣くその最後の勇姿を見届けずに帰る羽目となった。四月は茅ヶ崎「洋行堂」の閉店セールに遠征し、悲しみながらも安過ぎる良書をドッサリと買い込む。取材で出かけた京都の出町柳では、『コミックショックチェーン』のニューウェーブ店「El camino」に立ち寄り、映画館も出来て小さな商店街が文化的盛り上がりを見せ始めているのを肌で感じ取る。池袋の老舗店「八勝堂書店」が閉店したのもこの月であった。閉店後にお店の前を通りかかると、不要になった本棚の棚板を無料で配る光景が、チクリと胸を刺した。五月は新しく出来た、追浜の町の古本屋さん「おっぱま ぼちぼち書店」と、東陽町の「古本と肴 マーブル」を探索。「マーブル」は奥に立ち飲みカウンターのある“小さな古本酒場”と言った趣である。

六月は、次々と店を閉じ続ける「ブックセンターいとう」の分倍河原店の閉店と、名前は「古本市場」だが実は独立店舗の大和店の閉店に立ち会う。雑司が谷では移転した「JUNGLE BOOKS」を訪れ、前より一層お店らしくなった空間を言祝ぐ。また、ウカウカと知らずに過ごしていた、横浜・本牧の住宅街にある、住宅の一部を店舗に改装したお店「古書けやき」にたどり着き、古本屋と言う営業形態の奥深さを改めて知る。何はともあれ東京近郊の出来事中心であるが、このように、開くお店もあれば閉まるお店もある、いつもの出来事が、この早い流れの六ヶ月間にも起こっていたのである。古本屋の世界も、停滞することなく、良い方にも悪い方にも全方位に振れ、常に色々動いているのだ。私が飽きずにこの世界に耽溺しているのも、そのおかげなのであろう。

 古本屋さんで常に蠢き這いずり回っているご褒美としては、月曜書房「ある晴れた日に/加藤周一」(100円)東都書房「白鳥座61番地/瀬川昌男」(100円)目黒書店「剃刀日記/石川桂郎」(200円献呈署名入り)などが、特に目立った、“どひゃっほう”と叫びたい収穫である。そして西荻窪「盛林堂書房」の貸し棚「古本ナイアガラ」に参加している、本棚探偵・喜国雅彦氏の「ひとたな書房」の探偵小説的吸引力は相変わらず絶大で、今年に入ってから「黒い東京地図/蘭郁二郎」「自由酒場/ジョルジュ・シメノン」「女食人族/香山滋」「人工怪奇/九鬼澹」などをすでに購入してしまっている(値段は嬉しいことに&恐ろしいことに、相場の半額〜三分の一ほどなのだ)。いったい後何冊買うことになるのだろうか…。

 恐らくは今年の後半も、ある一冊の古本旅本を岡崎武志氏と共同制作したらあっという間に過ぎ去り、来年初頭にまたここでみなさんに、極私的な古本屋と古本に関する駄文をお目にかけることになるのだろう。それまでまた楽しくいつものように、古本屋を訪ねまくり古本を買いまくり日々を過ごすつもりである。


小山力也 2008年5月からスタートした、日本全国の古本屋&古本が売っている場所の、全調査踏破を目指す無謀なブログ『古本屋ツアー・イン・ジャパン』管理人。「フォニャルフ」の屋号で古本販売に従事することも。古本屋に関する著書ばかりを出し続けており、それらの出版社や形状は違えど、全部を並べたらいつしか“日本古本屋大全集”となってしまうよう、秘かに画策している。「本の雑誌」にて『毎日でも通いたい古本屋さん』連載中。http://furuhonya-tour.seesaa.net/

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