昨年9月出版した『遅れ時計の詩人』の「続」きです。「遅れ時計の詩人」とは、大阪十三の蒲鉾屋さんで詩人の清水正一さんのこと。「続」の、『やちまたの人』とは、足立巻一さんのことです。足立さんは、本居宣長の子・盲目の国学者・春庭の伝記を自身にからめた独自の手法で書いた大著『やちまた』(芸術選奨文部大臣賞受賞)を残しています。
「やちまた」とは、春庭の文法の研究書『詞(ことば)のやちまた』からきています。
「言葉は八方に分かれる道のようなもの」から、足立さんは、「人生そのものが「やちまた」である。人と人のつながりもいくつにも分かれながらつながっている」(好きな言葉「やちまた」)と書いています。
「続」で追悼しているのは、足立巻一、佐谷和彦、庄野英二、川崎彰彦、島田陽子、宗秋月、杉山平一、塔和子、大谷晃一、鶴見俊輔、伊勢田史郎、松廣勇、東秀三、三輪正道の方々です。
帯文は、前著は、流通の「地方・小出版流通センター代表」川上賢一氏にもらいましたが、今回は文学から、山田稔さんにおねだりしました。自分で写すのは気恥ずかしいのですが。
「著者の涸沢純平によれば、出版とは本をこしらえて売るだけでなく、著作を敬愛し著者を家族と思うことである。その著者たちとの、人生の「やちまた」でのめぐり会いから永の別れまでをつぶさに描いた本書は、前著『遅れ時計の詩人』同様、いわば「ノア」一族の家族アルバムであると同時に、関西の文学界にとって貴重な人間記録ともなっている」。全文です。
本書では、特に杉山平一さんのことを書いています。ノア「海鳴り」他誌追悼号に書いたものも、重複はあるが、収録。その中で、杉山さんが足立さんのことを書いた文章を引きました。
「集りなどで、足立さんの顔を見かけると、急に心がなごんで、近づいてゆく。そこにはいつも、ふあーとした風が吹いている感じだった。…ヒューマニズムというのは、ああいうものだと思った」。「ふあーとした風」は杉山さんそのものでもあったのです。
文は人なり、文章と人の魅力、出版とは「やちまた」なり。の思いです。

『やちまたの人 編集工房ノア著者追悼追悼記続』涸沢純平 著
編集工房ノア 定価2000円+税 好評発売中!
〒531-0071 大阪府大阪市北区中津3-17-5
TEL 06-6373-3641
FAX 06-6373-3642
|