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『出版状況クロニクルⅥ』

『出版状況クロニクルⅥ』

小田光雄

 『出版状況クロニクル』を書き始めたのは2007年からなので、足かけ15年を閲し、現在も書き継がれている。今回の6冊目としての『出版状況クロニクルⅥ』は2018年から20年までの3年間をトレースしていることになる。

 このような21世紀初頭からの出版状況論を書く端緒となったのは、1999年刊行の『出版社と書店はいかにして消えていくか』(ぱる出版、後に論創社)であった。これは1997年の戦後初めての出版物販売金額の前年比マイナスと、パラレルで起きていた、相次ぐ出版社の倒産や書店の閉店を背景にして、顕在化し始めた出版危機の実態を浮かび上がらせようとした一冊だった。

 同書は対話形式によって構成されている。その理由は論創社の森下紀夫氏から、このような、これまでなかった出版社や書店の消滅は何に起因しているのか、わかりやすく説明してくれないかという要請を受けたことによっている。そこで彼との架空の対談形式を想定し、『出版社と書店はいかにして消えていくか』を書き上げたのである。

 しかし現在からは想像できないかもしれないが、同書に明かされている再販委託制の「悪魔的取引」と「どんぶり勘定」の実態、雑誌に相乗りする書籍の流通、取次と大手出版社に対する批判はタブーに近く、ただちに出版できるものではなかった。それでも幸いなことに、ぱる出版の英断によって、「近代出版流通システムの崩壊」というサブタイトルを付し、99年に上梓に至った。
 その出版に続いて、出版社でもある大手書店の駸々堂と取次の柳原書店が破産し、日販の経営危機も明らかになり、拙著はそれらを予測したものとして受け止められたのである。翌年にはやはり対談形式で、当時破竹の勢いであったブックオフのフランチャイズシステムによる成長の内実を探求した『ブックオフと出版業界』(ぱる出版、後に論創社)も刊行した。

 この2冊はかなり売れ、出版業界の多くの人たちに読まれたはずだが、それらが理解されたとは思われなかった。そうであれば、ここまでの壊滅的危機にまでは至らなかったであろう。私の分析は近代出版史のみならず、文学史や思想史、社会史や経済史にも基づき、また出版社、取次、書店をも横断するかたちで取り上げ、古本屋も及んでいるので、それが逆に問題を錯綜させたように考えられる。
 それらに加えて、私は1980年代の郊外消費社会成立のメカニズムに通じていることもあって、その視座から郊外型書店、レンタルを兼ねた大型複合店、ブックオフなどに言及してきている。ところが出版業界の人たちは出版社、取次、書店という限られた経験主義と思い込みから抜け出すことができず、それは21世紀を迎えても変わらないままのように見受けられた。

 だがその一方で、2000年にアマゾンが上陸し、2001年に専門取次の鈴木書店が倒産し、さらに出版社・取次・書店からなる近代出版流通システムは危機に追いやられるしかなかった。それは出版敗戦のようにも思われたし、そうした出版状況をクロニクルとして記録すべきだとのオブセッションに迫られたのである。またそれは『出版社と書店はいかにして消えていくか』を出した私の義務のようにも感じられた。

 かくして『出版状況クロニクル』は書かれ始めたのであり、『出版状況クロニクルⅥ』に至って、15年間の出版ドキュメントを形成し、それらは合計で2500ページに及んでいる。『出版社と書店はいかにして消えていくか』から数えれば、3000ページを優に超えてしまうもので、これは戦後出版史として書かれているけれど、紛れもない現代史、それも20世紀末から21世紀にかけての現代史であることをあらためて自覚する。図書館に揃っていることを願うけれど、それがかなえられていないことも承知している。だがそれでも『出版状況クロニクルⅦ』も書き継がれていくことを付記しておこう。

kuronikuru

『出版状況クロニクルⅥ』(2018年1月~2020年12月)
小田光雄著 論創社刊 定価3300円(税込)好評発売中!
http://ronso.co.jp/

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