文字サイズ

  • 小
  • 中
  • 大

古書を探す

メールマガジン記事 自著を語る

『大宅壮一文庫解体新書――雑誌図書館の全貌とその研究活用』

『大宅壮一文庫解体新書――雑誌図書館の全貌とその研究活用』

阪本博志

 立花隆氏が4月30日に亡くなっていたことが、6月23日に報じられた。7月9日発売の『文藝春秋』『中央公論』8月号には、追悼記事が掲載されている。

 よく知られているように、立花氏が『文藝春秋』1974年11月号に発表した「田中角栄研究――その金脈と人脈」は、同年11月26日の辞任表明につながった。
 『出版ニュース』1974年12月下旬号「’74年出版界・読書界10大ニュース」の第1位は、「『文藝春秋』11月号のヒット企画」である。「『文藝春秋』11月号は「田中角栄研究――その金脈と人脈」で“マスコミが教えてくれないから”“雑誌ジャーナリズムはじまって以来の大取材”と銘うって、田中首相(当時)への疑惑を追った。/これは周知のように、田中退陣までに追い込む契機をつくった。/新聞ジャーナリズムの政府に対する弱い姿勢に対して、雑誌ジャーナリズムが、有効な機能を果しうることを実証したようなものである」。

 立花氏は「「田中角栄研究」の内幕」(『文藝春秋』1975年1月号)で次のように述べている。「取材班がスタートして、最初にやったことは、大宅文庫にいって、あらゆる関連活字資料を集めてくることだった。(略)索引で“田中角栄”をひくと、田中角栄氏について書かれたあらゆる記事がドサッとでてくる。“黒い霧”“小佐野賢治”“入内島金一”“日本電建”など、ありとあらゆる関連がありそうな項目をひいて、山のようなコピーをとってくる」。
 1976年11月刊行の『大宅壮一エッセンス 5 多角的遊泳術』(講談社)に立花氏は、「大宅文庫と私」と題したエッセイを寄稿している。氏はいう。「大宅文庫なしには、「田中角栄研究」をはじめとする私の幾つかの仕事は、ほとんど不可能だったろう」。

 財団法人大宅文庫(当時。現・公益財団法人大宅壮一文庫)は、大宅壮一(1900-1970)の蔵書約20万冊(雑誌約1000種類・17万冊、書籍3万冊)を基盤に、1971年5月17日に設立された。
 大宅は1951年ごろから古書の収集をはじめた。1956年から数人のスタッフによる雑誌記事の索引カード(サイズは縦約7センチ、横12.5センチである)の作成・整理に着手した。
 大宅文庫設立後、カードは、『大宅壮一文庫雑誌記事索引総目録』全13巻(1985年)に代表される図書、『大宅壮一文庫雑誌記事索引CD-ROM版1992-1996』(1997年)を嚆矢とするCD-ROMを経て、2002年に教育機関版のサービスをはじめた「大宅壮一文庫雑誌記事索引検索Web版」(「Web OYA-bunko」)というオンラインデータベースへと、進化を遂げていく。
 2020年4月時点で大宅文庫は、雑誌約1万2700種類・80万冊と書籍約7万冊を所蔵するにいたっている。

 この大宅文庫を活用して調査研究をおこなうための本邦初のガイドブックである拙編『大宅壮一文庫解体新書――雑誌図書館の全貌とその研究活用』(勉誠出版)を、本年5月17日の文庫創設50年にあわせて刊行した。下記リンク先の出版社ホームページにて目次をご覧になればおわかりいただけるように、本書は、国文学・社会学・メディア学・歴史学といったさまざまな領域の研究者が参加したものである。
 本書が生まれる端緒は、『幻の雑誌が語る戦争――『月刊毎日』『国際女性』『新生活』『想苑』』(青土社、2017年)などの著作で知られる石川巧氏に2018年10月、筆者が次のような相談をしたことにある。「大宅文庫には80万冊の雑誌が所蔵されている。これらのなかには、まだ光があてられていない雑誌もあるのではないか」。
 翌月石川氏から、「雑誌文化研究会」をたちあげ大宅文庫を活用しながら研究活動を推進していったらどうだろう、という連絡を受けた。
 そして石川氏と筆者が研究者に個別に声をかけ、計13名の研究者と鴨志田浩氏(大宅文庫)からなる雑誌文化研究会が結成された。2019年3月5日にキックオフミーテングを開き、同年5月15日の第1回研究会に、それぞれが各章のプランを持ち寄った。こうしてできあがったのが本書である。なお、雑誌文化研究会は現在、新規の入会希望者を受け入れる準備をしている。

 本メルマガ4月26日号(第321号)の記事「大宅壮一と古本収集」で平澤昇氏(大宅文庫)が述べていたように、本年5月17日には、公益財団法人大宅壮一文庫編『創立50周年記念 大宅壮一文庫所蔵総目録』(皓星社)が発行された。同書は、大宅文庫東京本館の80万冊にもわたる所蔵雑誌の全貌を明らかにするものである。
 「Web OYA-bunko」に加え、『大宅壮一文庫所蔵総目録』ももちいて、80万冊の雑誌にわけいっていくことが可能となった。本邦初のガイドブックである『大宅壮一文庫解体新書』を、その探究にご活用いただければ幸いである。

ooya
『大宅壮一文庫解体新書 雑誌図書館の全貌とその研究活用』
阪本博志 編 勉誠出版 定価:3,850円 好評発売中!
https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=101210

Copyright (c) 2021 東京都古書籍商業協同組合

  • コショな人
  • 日本の古本屋 メールマガジン バックナンバー
  • 特集アーカイブ
  • 全古書連加盟店へ 本をお売り下さい
  • カテゴリ一覧
  • 書影から探せる書籍リスト

おすすめの特集ページ

  • 直木賞受賞作
  • 芥川賞受賞作
  • 古本屋に登録されている日本の小説家の上位100選 日本の小説家100選
  • 著者別ベストセラー
  • ベストセラー出版社

関連サイト

  • 東京の古本屋
  • 全国古書籍商組合連合会 古書組合一覧
  • 版元ドットコム
  • 近刊検索ベータ
  • 書評ニュース