2019年4月25日 第273号

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☆INDEX☆
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1.『明治出版史上の金港堂』    稲岡 勝
2. 『古書古書話』        荻原魚雷
3.増補改訂版『日本アナキズム運動人名事典』 川口秀彦

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━━━━━━━━━━━【自著を語る(221)】━━━━━━━━━

『明治出版史上の金港堂』

                        稲岡 勝

金港堂と聞いて明治時代の巨大出版社と言える人は何人いるだろう
か。相当な出版通でも《最古最大の教科書肆》と知る人は余りいな
いだろう。それもその筈金港堂は完全に忘れ去られた存在で、従来
の近代出版史では業界伝説の対象でしかなかったのである。

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/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4806

稲岡勝(いなおか・まさる)

1943年、上海生まれ。すぐ近くに商務印書館があった。早稲田大学
政治学科および図書館短期大学別科卒業、1972年から東京都立図書
館勤務。1999年から都留文科大学国文学科教授情報文化担当、専攻
は明治の出版文化史。10年勤めて退職後は図書館、文書館、古書展
に通い埋もれた出版者を手掘り中。執筆予定としては「教科書トラ
スト帝国書籍の成立と崩壊」、また山梨県の地方新聞『甲陽新報』
(印刷は内藤伝右衛門)も取りあげたいテーマである。

『明治出版史上の金港堂 社史のない出版社「史」の試み』
著者・編者 稲岡 勝 皓星社刊 価格 8,000円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/kinkodo/

━━━━━━━━━━━【自著を語る(222)】━━━━━━━━━

『古書古書話』

                       荻原魚雷

『小説すばる』二〇〇八年一月号から二〇一八年三月号まで十年ち
ょっと「古書古書話」という見開き二頁のエッセイを連載していた。
十年ちょっと分なので、四百六十頁超??わたしがこれまで出した本
の中ではいちばん分厚いです。ただし一篇一篇は短い文章なのでパ
ラパラ読むには適しているのではないでしょうか。

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荻原 魚雷(おぎはら ぎょらい)

1969年、三重県鈴鹿市(東海道庄野宿)生まれ。1989年秋から高円
寺(青梅街道)に在住。著書に『古本暮らし』『閑な読書人』(晶文社)、
『活字と自活』『書生の処世』『日常学事始』(本の雑誌社)、
『本と怠け者』(ちくま文庫)。編著に梅崎春夫著『怠惰の美徳』など。
町の歴史と文学館を二本柱に街道をたどる「街道文学館」を連載中。
http://www.webdoku.jp/column/gyorai_kaidou/

『古書古書話』 荻原魚雷 著
本の雑誌社 定価:2,376円(税込)好評発売中!
http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860114275.html

━━━━━━━━━━━【自著を語る番外編】━━━━━━━━━

増補改訂版『日本アナキズム運動人名事典』

                  同書編集委員 川口秀彦
                   (古書 りぶる・りべろ)

 2004年に本事典の元版を刊行した時の立項者数は三千余名。それ
でもジャンルを絞った人名事典としては少なくないのだろうが、今
回の増補改訂版の立項者数は六千余名。これがまず本書の特長であ
る。 とはいえ、日本にアナキストが三千ないし六千人いたという
ことを主張している事典ではない。書名を「アナキスト」ではなく
「アナキズム運動」としているからなしえた幅広く多彩な人名の収
録、これが本事典の特色である。

続きはこちら
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『増補改訂 日本アナキズム運動人名事典』
日本アナキズム運動人名事典編集委員会編
ぱる出版  定価:32,000円+税 好評発売中!
http://pal-pub.jp/?p=5131

━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『雑誌渉猟日録 関西ふるほん探検』 高橋輝次
皓星社 価格:2,000円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/zassisyouryou/

『新・よくわかる出版流通のしくみ 2019-20年版』
メディアパル発行 頒価540円(本体500円+税) 好評発売中!
https://www.mediapal.co.jp/book/519/index.html

古本乙女の独り言③
愛しの古本との共同生活、その喜びと葛藤
カラサキ・アユミ

古本乙女の独り言② はこちら
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五文庫連携展示

東京・神奈川の五つの特殊文庫で東洋の叡智に触れる千年の旅
──知の宝庫をめぐり、珠玉の名品と出会う 特殊文庫の古典籍

大東急記念文庫(五島美術館)・慶應義塾大学三田キャンパス
(斯道文庫)・東洋文庫・静嘉堂文庫・金沢文庫と「五文庫連携
展示 特殊文庫の古典籍」と題して、同時期に書物に関する展覧会
を連携して開催します。

詳しくは
https://www.gotoh-museum.or.jp/classic.html  をご覧下さい。

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

4月~5月の即売展情報

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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日本の古本屋メールマガジンその273 2019.4.25

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
編集長:藤原栄志郎

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anaki

増補改訂版『日本アナキズム運動人名事典』

増補改訂版『日本アナキズム運動人名事典』

同書編集委員 川口秀彦
(古書 りぶる・りべろ)

 2004年に本事典の元版を刊行した時の立項者数は三千余名。それでもジャンルを絞った人名事典としては少なくないのだろうが、今回の増補改訂版の立項者数は六千余名。これがまず本書の特長である。

 とはいえ、日本にアナキストが三千ないし六千人いたということを主張している事典ではない。書名を「アナキスト」ではなく「アナキズム運動」としているからなしえた幅広く多彩な人名の収録、これが本事典の特色である。運動に直接関わった人、アナキズム的な生き方を志向し発信した人、文学者や芸術家などでもアナキズム的な思想や運動に影響を与えた人、影響を受けた人など、アナキズム周辺の人々まで含め、アナキズムとの関わりという視点で捉え、事実に基づく基礎情報を重視して立項しているのである。

たとえば俳句関係では西東三鬼、鈴木六林男、高柳重信、富澤赤黄男、永田耕衣、平畑静塔らがいる。その他では、高橋和巳、谷川雁、花田清輝、埴谷雄高、吉本隆明らだけでなく、赤瀬川原平、大島渚、澁澤龍彦、寺山修司、中西悟堂、前川國男、前田夕暮、マキノ雅弘、水木しげる、若松孝二等々、さらには大前田英五郎や国定忠治も収録立項しているのだ。

 もちろん収録人名の多くは日本でのアナキズム的な労働運動や社会運動に関わった人のものだが、朝鮮、台湾、中国などの活動家へも目配り収録し、運動と思想に影響を持った欧米系の人名もあるという、日本限定でないところも本書の特色として強調できる。

 増補改訂版のみの特色として、1920年設立の社会主義者同盟の加盟者名簿を巻末資料として収録したことがあげられる。未公刊だったこの名簿を附録としたのは大きな特色といえる。また元版でも好評だった関連機関誌紙リストを、1941年まで対象だったものを1968年まで収録とし、誌紙名索引を加えたことも増補改訂版の特色である。人名索引については、元版同様立項人名だけでなく本文記載の人名を収録し利用者の便を計っている。

 本事典元版の企画が成立し編集委員会が動き出してから元版刊行まで6年かかった。その刊行時に資料が乏しく立項できなかった人物が多数存在するという認識を共有していた編集委員会は、一層の内容の充実を図って10年後に改訂版を出すことを期し、そのための研究・発表の場として年2回刊の雑誌『トスキナア』(皓星社、2004-2014)を発行した。ちょうど10年20号で終刊した同誌は埋もれていた人物や資料発掘の原動力となった。加えて読者カードや元版執筆者へのアンケートなどを参考に増補改訂版の編集に取り組んできた。

「近代日本の歴史の中で自由と平等を求めて闘った有名・無名の活動家の足跡発掘と業績の顕彰にこの増補改訂版が役立つことを願うばかりである。(刊行にあたって・末尾)」というのは、編集委員共通の思いである。さらには”自由と平等を求める”新しい動きの糧としていただければ望外の喜びである。


anaki
『増補改訂 日本アナキズム運動人名事典』
編:日本アナキズム運動人名事典編集委員会
ぱる出版  定価:32000円+税 好評発売中!
http://pal-pub.jp/?p=5131

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koshokosho

古書古書話(本の雑誌社)

古書古書話

荻原魚雷

 『小説すばる』二〇〇八年一月号から二〇一八年三月号まで十年ちょっと「古書古書話」という見開き二頁のエッセイを連載していた。十年ちょっと分なので、四百六十頁超??わたしがこれまで出した本の中ではいちばん分厚いです。ただし一篇一篇は短い文章なのでパラパラ読むには適しているのではないでしょうか。
 横井庄一、平野威馬雄、辻潤、トキワ荘、野球、将棋、音楽、予言の本、家事の本、実用書、日記。登場する本がバラバラなのは、そのときどきの自分の興味、関心に抗わなかった結果である。

 一九八九年の春、十九歳で上京。その年の六月からライターの仕事をはじめた。その後、大学を中退し、定職につくことなく、四十九歳まで、平日の昼間に古本屋をまわり本を読んで原稿を書いて酒を飲んで寝て……という日々を送ってきた。
「趣味を仕事にする」のが夢だった。「趣味が仕事になると楽しくなくなる」という意見はたくさん聞いた。その意見に半信半疑だった。「古書古書話」の連載中はずっと楽しかった(今も『小説すばる』で「自伝の事典」という連載を続けている)。

 JR中央線沿線の高円寺に暮らし、三十年ちかく西部古書会館にも通っている。古書会館に並ぶ本の雑多さは、まちがいなくわたしの思考にも反映されている。
『古書古書話』は中央線の「古本屋濃度」の高い「古本本」といえるだろう。「古本屋通いの楽しみは、単に目当ての本を早く安く見つけることではない。
 自分の知らないおもしろそうな本を探すこと。本そのものが醸し出している雰囲気や時代性を感じとること」

 そんなことも書いた。わたしは本を探す時間が好きだ。本を読むことよりも好きかもしれない。本そのものについて調べるのも好きだ。
 本の内容はどうでもいいとはいわないが、どんな本でも作者の横のつながり、縦のつながり、その本の刊行時の時代背景などを探っているうちに、いろんなことが見えてくる。点と点がいつの間にか知らないうちに線になるように関係ないとおもっていた本と本がつながっていく。

『古書古書話』の中には、漫画の中に出てくる架空の古本について調べた回がある。藤子不二雄の『まんが道』で主人公のふたりが神保町ではじめて買った古本(のモデル)を探したのだ(「ヒマラヤ謎の雪男」の回)。
 寄り道と脱線も古本趣味の醍醐味である。行き当たりばったりに読み耽ってきた本について書いたエッセイ集だが、古書の世界の渾沌とした雰囲気は味わえる本になっているのではないかとおもう。

荻原 魚雷(おぎはら ぎょらい)
1969年、三重県鈴鹿市(東海道庄野宿)生まれ。1989年秋から高円寺(青梅街道)に在住。
著書に『古本暮らし』『閑な読書人』(晶文社)、『活字と自活』『書生の処世』『日常学事始』(本の雑誌社)、
『本と怠け者』(ちくま文庫)。編著に梅崎春夫著『怠惰の美徳』など。町の歴史と文学館を二本柱に街道をたどる
「街道文学館」を連載中。http://www.webdoku.jp/column/gyorai_kaidou/

koshokosho
『古書古書話』 荻原魚雷 著
本の雑誌社 定価:2,376円(税込)好評発売中!
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kinko

『明治出版史上の金港堂』

『明治出版史上の金港堂』

稲岡 勝

 金港堂と聞いて明治時代の巨大出版社と言える人は何人いるだろうか。相当な出版通でも《最古最大の教科書肆》と知る人は余りいないだろう。それもその筈金港堂は完全に忘れ去られた存在で、従来の近代出版史では業界伝説の対象でしかなかったのである。せいぜい文学好きなら文芸雑誌の嚆矢『都の花』、二葉亭四迷『浮雲』、永井荷風『地獄の花』の版元と答えるか、教育学者なら教科書疑獄事件の主役を連想する程度であろう。それらは確かに金港堂の一面を語ってはいるが、全体像からすればごく小さなパーツに過ぎない。一世を風靡したと言われる巨大教科書出版社は長く顧みられることなく放置されてきた。

誰もやる人がいないという単純な動機から、社史のない出版社「史」の解明に取り組んだのはもう40年も昔のことになる。明治8年岐阜の人原亮三郎が横浜に創業した金港堂は翌年東京日本橋に移転するが、その後どのように出版活動を展開し、社業を発展させていったのだろうか。参考になる先行研究は皆無なのだから、まず散在する関係史料の発掘から始めるより手段はなかった。

金港堂発行の書籍雑誌の観察と記録を手始めに、同時代の新聞雑誌記事や広告類を広く捜した。しかし活字文献だけでは出版の実態解明には限界がある。出版者の私文書は理想的な実証史料であろうが、その出現入手は僥倖を俟つに等しい。それに代わるものとして公文書とくに学事文書の活用を思いついて、新事実の発見や論証に厚みを加えることができた。本書は全て原史料を用いて金港堂の歴史を論述したものだが、偶然にも同時に明治出版文化史の核心を明らかにする結果にもなった。

史実とお話の区別もつかず、また現代の事情を過去に投影して少しも怪しまない俗流出版史の蔓延は一向に止む気配がない。既存の活字文献を無批判に切り貼りした出版物の羅列史、出版者の興亡史に留まっている限り、新しい近代出版史は生まれようがない。

たとえば伊藤整『日本文壇史』には、文壇史の遠景として各時代の出版事情が点綴されている。このため俗流出版史家は今も同書を引用して得々としているようだ。確かに第2巻には金港堂が登場するが、残念ながらその記述は全く不正確である。これは伊藤整の責任というよりは、執筆当時に参照し得た出版史文献にロクなものがなかったことの反映と見るべきであろう。滑稽にも彼らは高名作家の作品を引用すれば箔が付くと錯覚し、史料批判の必要性には気付きもしない。何の根拠もない俗説をあたかも通説としてきた近代出版史は、このようにして無自覚のままに今日までひたすら砂上の楼閣を築いてきたのである。

こうした弊風を打破するためには、若くて意欲溢れる研究者の出現を俟つよりほかはなさそうだ。先行者としての拙著が後進たちへの良きガイドとなり、近代出版史の再構築に向けて多少お役に立つならばこれ以上の喜びはない。 

 

稲岡勝(いなおか・まさる)
1943年、上海生まれ。すぐ近くに商務印書館があった。早稲田大学政治学科および図書館短期大学別科卒業、1972年から東京都立図書館勤務。1999年から都留文科大学国文学科教授情報文化担当、専攻は明治の出版文化史。10年勤めて退職後は図書館、文書館、古書展に通い埋もれた出版者を手掘り中。執筆予定としては「教科書トラスト帝国書籍の成立と崩壊」、また山梨県の地方新聞『甲陽新報』(印刷は内藤伝右衛門)も取りあげたいテーマである。

kinko
『明治出版史上の金港堂 社史のない出版社「史」の試み』
著者・編者 稲岡 勝 皓星社刊 価格 8,000円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/kinkodo/

 

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2019年4月10日 第272号

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 古書市&古本まつり 第74号
      。.☆.:* 通巻272・4月10日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛け下さい。

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━━━━━━━━━━【シリーズ 古書の世界】━━━━━━━━

古書目録「堀紫山伝」のこと(一)

                  高橋 徹(月の輪書林)

 二年前、古本屋の大先輩の身にあまる好意で、明治時代の新聞記
者・堀紫山(文久3年~昭和15年)宛の書簡・ハガキ200通を
手に入れることが出来た。
 うれしくて手紙の束を胸にだきしめると、「堀紫山伝」というタ
イトルが浮かんだ。
 紫山宛に届いた手紙を写真に撮り、解説を書き、値段をつけてし
まえば小粒だが、ぴりりと光る素敵な古書目録がすぐにでも発行で
きると思ったのだが、二年がたつのに未だ書簡の「解読」もままな
らぬていたらく、一体どこで道を迷ってしまったのか?

続きはこちら
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高橋 徹(たかはしとおる)
1958年、岡山県の山奥、柵原鉱山に生まれる。日本大学芸術学部文
芸学科を2か月で中退。鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」
の美術助手として映画製作に関わるも挫折、87年に大田区蒲田の古
本屋・龍生書林の店員となる。
3年半の修業の後、90年、東急池上線の蓮沼駅近くに「月の輪書林」
を開く。
特集古書目録に「私家版 安田武」、「古河三樹松散歩」、
「美的浮浪者・竹中労」、「寺島珠雄私記」、「李奉昌不敬事件予
審訊問調書」、「三田平凡寺」、「太宰治伝」などがある。
著書には『古本屋 月の輪書林』(1998年/晶文社)がある。

━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

古本マニア採集帖
第4回 松﨑貴之さん 噴水の歴史に魅せられたひと

                      南陀楼綾繁

 世の中には、普通の人の目に入っていながら見過ごされているも
のがある。そういったものに執着し、調べたり集めたりするのがマ
ニアという存在だ。今回紹介する松﨑貴之さんは、「噴水」に関す
る資料を集めている人である。
 松﨑さんは1979年に長崎市に生まれる。父は長崎駅近くで酒屋を
営んでおり、店内の立ち飲みスペースには多くの客が入りびたって
いた。

続きはこちら
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南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

ツイッター
https://twitter.com/kawasusu

『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【4月10日~5月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

立川フロム古書市ご案内

期間:2019/04/11~2019/04/27
場所:立川駅北口徒歩5分フロム中武(ビッグカメラ隣)
   3階バッシュルーム(北階段際)

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書窓展(マド展)

期間:2019/04/12~2019/04/13
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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大均一祭

期間:2019/04/13~2019/04/14
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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平成31年 五台山古本まつり(高知県)

期間:2019/04/13~2019/04/14
場所:高知市五台山展望台1階イベントスペース
   高知市吸江210-1

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第36回 古本浪漫洲 Part 4

期間:2019/04/13~2019/04/15
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2 TEL03-3354-6111

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第36回 古本浪漫洲 Part 5(300円均一)

期間:2019/04/16~2019/04/18
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場)
新宿区歌舞伎町1-2-2 TEL03-3354-6111

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MM駅ナカ古本&ワインフェスタ(神奈川県)

期間:2019/04/18~2019/04/24
場所:横浜高速鉄道みなとみらい線みなとみらい駅構内催事

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京都マルイ春の大古本市(京都府)

期間:2019/04/18~2019/04/21
場所:京都マルイ1階店頭

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フリーダム展

期間:2019/04/19~2019/04/20
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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本の散歩展

期間:2019/04/19~2019/04/20
場所:南部古書会館  品川区東五反田1-4-4

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春の古本掘り出し市(岡山県)

期間:2019/04/24~2019/04/29
場所:岡山シンフォニービル1F 自由空間ガレリア

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2019/04/25~2019/04/28
場所:JR浦和駅西口さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前

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ぐろりや会

期間:2019/04/26~2019/04/27
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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第17回 「四天王寺春の大古本り」(大阪府)

期間:2019/04/26~2019/05/05
場所:四天王寺 大阪市天王寺区四天王寺1-11-18

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有隣堂イセザキ本店ワゴンセール(神奈川県)

期間:2019/04/27~2019/05/26
場所:有隣堂伊勢佐木町本店

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第37回 春の古書大即売会(京都府)

期間:2019/05/01~2019/05/05
場所:京都市勧業館「みやこめっせ」1F第二展示場
   京都市左京区岡崎成勝寺町9-1

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「名古屋骨董祭」 第1回 古書即売会(愛知県)

期間:2019/05/02~2019/05/04
場所:吹上ホール
   愛知県名古屋市千種区吹上2丁目6-3

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反町古書会館展(神奈川県)

期間:2019/05/04~2019/05/05
場所:神奈川古書会館1階特設会場
   横浜市神奈川区反町2-16-10

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早稲田大学青空古本祭

期間:2019/05/06~2019/05/11
場所:早稲田大学10号館前=大隈重信候そば

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第4回 上野広小路古本祭り

期間:2019/05/06~2019/05/12
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36
   台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階

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城北古書展

期間:2019/05/10~2019/05/11
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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杉並書友会

期間:2019/05/11~2019/05/12
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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第15回 東京蚤の市

期間:2019/05/11~2019/05/12
場所:大井競馬場 品川区勝島2-1-2

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新橋古本まつり

期間:2019/05/13~2019/05/18
場所:新橋駅前SL広場

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日本の古本屋メールマガジンその272 2019.4.10

【発行】
 東京都古書籍商業協同組合:広報部・「日本の古本屋事業部」
 東京都千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
 URL  http://www.kosho.or.jp/

【発行者】
 広報部:二見彰
 編集長:藤原栄志郎

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古書目録「堀紫山伝」のこと(一)

古書目録「堀紫山伝」のこと(一)

高橋 徹(月の輪書林)

 二年前、古本屋の大先輩の身にあまる好意で、明治時代の新聞記者・堀紫山(文久3年~昭和15年)宛の書簡・ハガキ200通を手に入れることが出来た。
 うれしくて手紙の束を胸にだきしめると、「堀紫山伝」というタイトルが浮かんだ。
 紫山宛に届いた手紙を写真に撮り、解説を書き、値段をつけてしまえば小粒だが、ぴりりと光る素敵な古書目録がすぐにでも発行できると思ったのだが、二年がたつのに未だ書簡の「解読」もままならぬていたらく、一体どこで道を迷ってしまったのか?

 解読とは大げさなようだが、流れるように書かれた達筆な毛筆の文字が、くやしいかな読めない。九十歳、百歳といった老人の手が読めないのならさほどくやしくはない気がするが、堀紫山宛の手紙の主(ぬし)のほとんどが二十代、三十代の若者なのだ。
 なかでも小栗風葉にいたっては十八歳、だけど惚れ惚れするような美しい字を書く。しかも酸いも甘いも知り抜いた大人(おとな)の字だ。どうしてこの若さでこんな字が書けるのかと、『評伝小栗風葉』(岡保生著/昭和50年/桜楓社刊)をひもとき、なるほどと感心する。一事が万事この調子で、ますますもって古書目録の発行が遠くにかすむ。
 堀紫山は、明治23年10月から数か月、尾崎紅葉と本郷区森川町一番地で共同生活をしたことがある、「紅葉第一の門人」(徳田秋聲)とも言われた男。だから、硯友社周辺の凄玉の男たちからの手紙が多い。

  小栗風葉 18歳(明治26年/封書5通 葉書3枚)
  巌谷小波 26歳(明治29年/封書9通 葉書3枚)
  川上眉山 27歳(明治30年/封書3通 葉書1枚)
  石橋思案 30歳(明治30年/封書10通 葉書3枚)
  柳川春葉 20歳(明治31年/封書3通)
  長田秋濤 26歳(明治31年/封書3通)
  尾崎紅葉 31歳(明治33年/葉書2枚)
  斎藤松洲 33歳(明治36年/封書2通 葉書3枚)
  徳田秋聲 31歳(明治36年/封書3通)
  後藤宙外 36歳(明治37年/封書3通)
  江見水蔭 34歳(明治37年/封書5通 葉書1枚)
  泉 鏡花 31歳(明治38年/年賀状2枚)

 ちなみにこの中で読みやすかったのは江見水蔭と泉鏡花の二人だけ。
 それはさて、今、堀紫山の名を聞いてピンとくる人が一体何人いるだろうか?
 百二十年前には新聞界きっての美文家とうたわれた紫山の名は一体いつ忘れ去られてしまったのか?
 堀紫山とはそもそもどんな男なのか?
 そう問われたらこう答えたい。

 堀紫山には妹が二人いて、一人は美知といい、堺利彦と結ばれ、もう一人の妹は、保子といい、明治39年8月24日、大杉栄の熱烈な求愛をうけ結婚した。
 つまり、堀紫山は、初期社会主義者の巨頭の一人と無政府主義者のスーパースタアの二人を「義弟」に持つ極めて稀な男なのだと。
 古書目録「堀紫山伝」の目玉は、堺利彦と大杉栄をおいて他にない。

高橋 徹(たかはしとおる)
1958年、岡山県の山奥、柵原鉱山に生まれる。日本大学芸術学部文芸学科を2か月で中退。鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」の美術助手として映画製作に関わるも挫折、87年に大田区蒲田の古本屋・龍生書林の店員となる。
3年半の修業の後、90年、東急池上線の蓮沼駅近くに「月の輪書林」を開く。
特集古書目録に「私家版 安田武」、「古河三樹松散歩」、「美的浮浪者・竹中労」、「寺島珠雄私記」、「李奉昌不敬事件予審訊問調書」、「三田平凡寺」、「太宰治伝」などがある。著書には『古本屋 月の輪書林』(1998年/晶文社)がある。

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『古本屋 月の輪書林』
晶文社 定価:本体1900円+税 好評発売中!
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第4回 松﨑貴之さん 噴水の歴史に魅せられたひと

第4回 松﨑貴之さん 噴水の歴史に魅せられたひと

南陀楼綾繁

  世の中には、普通の人の目に入っていながら見過ごされているものがある。そういったものに執着し、調べたり集めたりするのがマニアという存在だ。今回紹介する松﨑貴之さんは、「噴水」に関する資料を集めている人である。
 松﨑さんは1979年に長崎市に生まれる。父は長崎駅近くで酒屋を営んでおり、店内の立ち飲みスペースには多くの客が入りびたっていた。
「ぼくが子どもの頃はまだ三公社(専売公社、電電公社、国鉄)の時代で、そこの職員がよく来ていました。店のお客さんによく遊んでもらいました」
 祖母と両親と妹の5人家族。亡くなっていた祖父、それに母も父も本好きで、家の中には本がたくさんあった。当時全盛だったファミコンはなかなか買ってもらえなかったが、本なら買ってくれるので、近所の〈メトロ書店〉によく行っていた。

 小学4年生で、地方に残る珍説・奇説を集めた『歴史読本』の増刊号を買い、歴史に興味を持つ。長崎は少し歩くと古いものがいくらでもあるので、見て回った。
「石碑をインスタントカメラで撮影して、その写真や郷土史からのコピーをルーズリーフに貼り、数ページのコピー本をつくっていました。『カステラの由来』とか。それを店のお客さんに50円で売りつけた。3、4号は出したかな。もちろん友だちには判ってもらえませんでした(笑)」

 小学6年生のとき、クイズにハマる。1991年に長崎で日本テレビ系の放映が開始され、そこではじめて『アメリカ横断ウルトラクイズ』を観た。番組のクイズ本を買うにとどまらず、公務員試験の本をもとに自分で問題をつくるようになった。「新鮮な遊びでしたね。自分が調べることが好きなんだと気づきました」と元少年は当時を振り返る。
 高校1年のとき、『高校生クイズ』に出るも、予選で落ちる。しかし、クイズ熱はおさまらず、東京大学に入ると、クイズ研究会(クイ研)に属した。

 東京では大きな書店があり、どこでも本が買えることに興奮した。住んでいた自由が丘には〈西村文生堂〉〈東京書房〉の2軒の古本屋があり、毎日のように通っては歴史やサブカルチャーの本を買った。
クイ研のメンバーも本好きで、面白い本を教えてもらった。
「当時のクイ研は、クイズ大会に出場するヤツより、面白い問題をつくるヤツの方がえらいという風潮がありました。誰がどんな話題を振っても、かならず乗っかってくれる人ばかりなので、毎日が楽しかったです。後輩の結婚式では二次会がクイズ大会で、新郎が新婦をほっといて出場してました(笑)」
 2年留年するが、最後の年に聴いた美術史家の木下直之教授の授業が、その後の松﨑さんに決定的な影響を与えた。

「日比谷公園にあるものから、何かを取り上げてレポートをするという課題があって、ぼくは鶴の噴水を選んだんです。子どもの頃からなんとなく噴水を見るのが好きでした」
日比谷公園は1903年(明治36)に開園するが、2年前の新聞記事に「蝦蟇仙人の噴水ができる」という予告を見つけた。
「これはなんだ! と驚きましたね。その時は調べきれず、レポートも出せませんでしたが、あとになって中国の仙人だと判りました」

 卒業後、就職してしばらくして、ヤフーオークションを見ていたら、噴水の絵葉書を見つけた。気になって、「噴水」で検索するとぞろぞろ見つかった。社会人になり、自分の金が使えるようになったこともあり、片っ端から買った。ヤフオクで買いつくすと、古本市や骨董市に通う。絵葉書を扱う店に名刺を渡し、「噴水ものがあったら取っておいてください」と頼んだ。噴水だけの絵葉書の束をのけておいてくれた店もあるという。これまでに集まった噴水の絵葉書は約5000枚。

 そして、集まってきた絵葉書がいつ撮影されたものか、手さぐりで調べはじめた。キャプションと一緒に写っている建物がわずかな手がかりだ。国会図書館で、明治から昭和の読売新聞のCD-ROMを検索して、噴水に関する記事を一件ずつ調べた。噴水の歴史に関しては唯一、佐藤昌『噴水史研究』(環境緑化新聞社)という本があるが、そこに書かれていないことが多かった。

「2010年から『ずっと噴水が好きだった』というブログをはじめ、調べて分かったことを書いていきました。それを見たテレビ局から依頼され、噴水をテーマにした番組にも出演しました。調べると知らないことが次々に出てきて、それについての資料を古本屋で探し、そこで入手した本をもとに図書館で調べるというように、探し物のアンテナにしたがってぐるぐる回って隙間を埋めていくということを繰り返しています。欠けていたピースがピタッと埋まったときは快感ですね。調べ物についてはクイ研時代の経験が生きていて、ウラをとることの大切さを実感しています」

 のちにツイッターをはじめ、生き人形の研究家である伊藤加奈子さんや観覧車を研究している福井優子さんらと知り合いになった。恩師である木下直之さんの研究会にも参加する。噴水は建築、美術、企業史などさまざまなジャンルにまたがるので、調べていくうちにいろんな方向に興味が飛び火していくのだと、松﨑さんは笑う。
「いまは戦後のキャバレーに設けられた噴水のことを調べています。昭和30年代の〈ミカド〉のパンフレットには、ロビーやステージにあった噴水が載っています。また、当時はキャバレーを回るバスツアーもあり、バス会社のパンフレットにキャバレーの噴水が見つかることもあるんです。それらの噴水はドイツのキャバレーを参考につくられたもので、今度は海外のパンフレットも探しています」

 そうやって調べていくうちに、噴水とは直接関係ないヘンなネタも集まってくる。
「上野の西郷隆盛像に紙くずが貼りついている絵葉書を見つけて調べてみると、昭和20年代の新聞小説に、西郷像に紙をぶつけると英雄にあやかれるということが書かれていました。これは仁王像への信仰と関係があったのではないかと考えています。ところが、浅草寺にある社会事業家の瓜生岩子の像が紙くずまみれになっている絵葉書も見つけたんです。こちらは裁縫がうまくなると言われていたそうです。仁王像とは関係なさそうですが(笑)」
 平日は会社勤務のため、土曜日は朝から国会図書館に行き調べ物をしたり、神保町の古本屋を巡ったりするのが楽しいと松﨑さんは云う。

 ちなみに、最近できた噴水のことも調べているのだろうか?
「いや、そっちはあんまり詳しいわけじゃないですね。旅行で行ったら立ち寄るぐらいです。僕は時間が経って鮮度が落ちて、歴史の範囲に収まったぐらいの対象が好きみたいです」
 そう謙遜するが、それでも一通りの知識や見聞はあるに違いない。いろんな方向に興味が飛び火していく一方で、本拠地である噴水については発言する範囲を明確にするというのが、噴水史マニアたる松﨑さんの真骨頂なのだろう。
 このひとが書いた噴水史の本は、絶対面白いに違いない。それが世に出るのを楽しみに待とう。

松﨑貴之 ツイッター
https://twitter.com/gelcyz

南陀楼綾繁
1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人をつなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』(ちくま文庫)などがある。

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『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
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2019年3月25日 第271号

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☆INDEX☆
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.『目録学の誕生 劉向が生んだ書物文化』 古勝 隆一
2. 古本乙女の独り言②      カラサキ・アユミ

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━━━━━━━━━━━【自著を語る(220)】━━━━━━━━━

『目録学の誕生―劉向が生んだ書物文化』

                       古勝隆一

 中国の伝統学術では書物が重視されるが、主に分類の面からそれ
ら書物を研究するのが目録学である。「目録の学は、学中第一の緊
要の事」(王鳴盛、18世紀の中国の古典学者)とまで言われ、近代
的な中国学においても基礎の学として強調されていて、日本の大学
で中国古典を学ぶ学生は、おそらく耳にタコができるほどその重み
だけは聞かされるはずだ。十分身につくまで学び続けるかどうかは、
人によるとしても。

続きはこちら
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『目録学の誕生 劉向が生んだ書物文化』 古勝 隆一 著
臨川書店 定価 3,000円+税 好評発売中!
http://www.rinsen.com/linkbooks/ISBN978-4-653-04376-8.htm

━━━━━━━━━━━【古本乙女の独り言②】━━━━━━━━

古本乙女の独り言②
見つけて小走り、漁って小躍り、楽しくって仕方がないのよ古本はッ

                    カラサキ・アユミ

幸運なことに相方の実家が北関東方面ということもあり、この絶好
のチャンスを逃してはならんと昨年末に念願叶って茨城県はつちう
ら古書倶楽部に訪問することが出来た。土浦駅から歩いて数十秒も
しないうちに、あの、およそ古書店に似つかわしく無いポップな巨
大建物が遠巻きに目に入った瞬間、思わず小走りしてしまった童の
ような私であった。

続きはこちら
/wppost/plg_WpPost_post.php?postid=4681

古本乙女の独り言① はこちら
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カラサキ・アユミ
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━━━━━━━━━━━━━【次回予告】━━━━━━━━━━━

『明治出版史上の金港堂 社史のない出版社「史」の試み』
著者・編者 稲岡 勝 皓星社刊 価格 8,000円+税
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/kinkodo/

『古書古書話』 荻原魚雷 著
本の雑誌社 定価 2376円(税込)好評発売中!
http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860114275.html

━━━━━━━━━【日本の古本屋即売展情報】━━━━━━━━

3月~4月の即売展情報

⇒ https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

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日本の古本屋メールマガジンその271 2019.3.25

【発行】
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【発行者】
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2019年3月10日 第270号

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 古書市&古本まつり 第73号
      。.☆.:* 通巻270・3月11日号 *:.☆. 。
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メールマガジンは、毎月2回(10日号と25日号)配信しています。

初旬に(10日前後)全国で開催されている古本展示即売会など、
イベント情報をお送りします。お近くで開催される際は、ぜひ
お出掛け下さい。

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━━━━━━━━━【シリーズ 古本マニア採集帖】━━━━━━

古本マニア採集帖
第3回 佐藤正浩さん ネットに頼らず本屋を回るひと

                       南陀楼綾繁

 新潟県長岡市。新潟市に次ぎ、県内2位の人口を擁する。江戸時
代は長岡藩の城下町で、戊辰戦争では奥羽越列藩同盟に加わって新
政府軍と戦ったが敗北。疲弊した長岡藩に贈られた百俵の米を、大
参事の小林虎三郎が学校設立の費用に充てた逸話は有名だ。

続きはこちら
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南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)

1967年、島根県出雲市生まれ。ライター・編集者。早稲田大学第一
文学部卒業。明治大学大学院修士課程修了。出版、古本、ミニコミ、
図書館など、本に関することならなんでも追いかける。2005年
から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」
の代表。各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。
「一箱本送り隊」呼びかけ人として、石巻市で本のコミュニティ
・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。本と町と人を
つなぐ雑誌『ヒトハコ』(書肆ヒトハコ)編集発行人。著書に
『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、『一箱古本市
の歩きかた』(光文社新書)、『町を歩いて本のなかへ』(原書房)、
『編む人』(ビレッジプレス)、『本好き女子のお悩み相談室』
(ちくま文庫)などがある。

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『蒐める人 情熱と執着のゆくえ』 南陀楼綾繁 著
皓星社刊 価格:1,600円(+税) 好評発売中!
http://www.libro-koseisha.co.jp/publishing/atsumeruhito/

━━━━━【3月11日~4月15日までの全国即売展情報】━━━━━

https://www.kosho.or.jp/event/list.php?mode=init

イービーンズ古本まつり(宮城県)

期間:2019/02/08~2019/03/17
場所:仙台駅前 イービーンズ 9階特設会場
宮城県仙台市青葉区中央4-1-1

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フジサワ古書フェア(神奈川県)

期間:2019/02/28~2019/03/13
場所:有隣堂藤沢店4階ミニ催事場

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第2回 上野広小路古本祭り

期間:2019/03/04~2019/03/17
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36  
   台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階

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第2回 御茶ノ水ソラシティ古本市

期間:2019/03/11~2019/03/17
場所:御茶ノ水ソラシティプラザ 
   千代田区神田駿河台4-6 JR御茶ノ水駅 徒歩1分、
   東京メトロ新御茶ノ水駅聖橋方面改札直通

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第10回 水の都の古本展(大阪府)

期間:2019/03/12~2019/03/15
場所:大阪市中央公会堂 3階 小集会室 
   大阪市北区中之島1丁目1番27号
URL:http://osaka-koshoken.com/

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第21回フジサワ湘南古書まつり(神奈川県)

期間:2019/03/14~2019/03/17
場所:有隣堂藤沢店イベントホール(フジサワ名店ビル6階)
   神奈川県藤沢市南藤沢2-1-1
URL:http://www.yurindo.co.jp/store/fujisawa/

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紙魚之會

期間:2019/03/15~2019/03/16
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

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五反田遊古会

期間:2019/03/15~2019/03/16
場所:南部古書会館 品川区東五反田1-4-4 

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第175回 神戸古書即売会(兵庫県)

期間:2019/03/15~2019/03/17
場所:兵庫県古書会館 一階・二階 神戸市中央区北長狭通6-4-5

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第46回 鬼子母神通りみちくさ市

期間:2019/03/17
場所:雑司が谷 鬼子母神通り
URL:https://kmstreet.exblog.jp/

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第87回シンフォニー古本まつり(岡山県)

期間:2019/03/20~2019/03/25
場所:岡山シンフォニービル1F 自由空間ガレリア
   岡山市北区表町1-5-1

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趣味の古書展

期間:2019/03/22~2019/03/23
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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中央線古書展

期間:2019/03/23~2019/03/24
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9  

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新橋大古本まつり

期間:2019/03/25~2019/03/30
場所:新橋駅前SL広場

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BOOK & A(ブック&エー)

期間:2019/03/28~2019/03/31
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9  

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浦和宿古本いち(埼玉県)

期間:2019/03/28~2019/03/31
場所:JR浦和駅西口さくら草通り徒歩5分マツモトキヨシ前
URL:https://twitter.com/urawajuku

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和洋会古書展

期間:2019/03/29~2019/03/30
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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さくらみちフェスティバル 春の古本まつり

期間:2019/03/29~2019/03/31※雨天中止
場所:神田神保町古書店街 靖国通り歩道

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青札古本市

期間:2019/04/04~2019/04/07
場所:西部古書会館 杉並区高円寺北2-19-9

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小江戸川越 ぺぺ古本まつり(埼玉県)

期間:2019/04/04~2019/04/15
場所:西武新宿線本川越駅前ペペ広場

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第36回 古本浪漫洲 Part1~5

期間:2019/04/04~2019/04/18
場所:新宿サブナード2丁目広場(催事場) 新宿区歌舞伎町1-2-2
URL:https://kosho.co.jp/furuhon_romansu/

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下町書友会 ※今回のみ目録発行しません(3/6 更新)

期間:2019/04/05~2019/04/06
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22 

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第5回 小倉駅ナカ本の市(福岡県)

期間:2019/04/05~2019/04/14
場所:小倉駅ビル内・JAM広場 (JR小倉駅 3階 改札前)

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第3回 上野広小路古本祭り

期間:2019/04/08~2019/04/14
場所:永谷お江戸上野広小路 ギャラリー+スペース36
   台東区上野1-20-10 お江戸上野広小路亭1階

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立川フロム古書市ご案内  

期間:2019/04/11~2019/04/27
場所:フロム中武(ビッグカメラ隣) 3階バッシュルーム(北階段際)

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書窓展(マド展)

期間:2019/04/12~2019/04/13
場所:東京古書会館 千代田区神田小川町3-22

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大均一祭

期間:2019/04/13~2019/04/14
場所:西部古書会館  杉並区高円寺北2-19-9

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平成31年 五台山古本まつり(高知県)

期間:2019/04/13~2019/04/14
場所:高知市五台山展望台1階イベントスペース
高知市吸江210-1

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『目録学の誕生―劉向が生んだ書物文化』

『目録学の誕生―劉向が生んだ書物文化』

古勝隆一

 中国の伝統学術では書物が重視されるが、主に分類の面からそれら書物を研究するのが目録学である。「目録の学は、学中第一の緊要の事」(王鳴盛、18世紀の中国の古典学者)とまで言われ、近代的な中国学においても基礎の学として強調されていて、日本の大学で中国古典を学ぶ学生は、おそらく耳にタコができるほどその重みだけは聞かされるはずだ。十分身につくまで学び続けるかどうかは、人によるとしても。

 しかし、この目録学、一般の読者にはやや馴染みが薄いのではないか。倉石武四郎氏『目録学』、井波陵一氏『知の座標』といった、十分な内容の手引きがすでにあるが、どうもそれほど広くは読まれていないようで、ビブリオフィルの諸氏も、目録学固有の理論やその歴史にまで精通しているとは限るまい。

 私が勤務する京都大学人文科学研究所で、所員が一人一冊、東方学の一般書を執筆して叢書にしようと計画を立てたのが数年前のことで、お鉢が回ってきて、目録学のことを書くと決めたのだが、いまさら概説を書いても仕方ないという気もして、あれこれ考えた末、目録学の礎を築いたとされる前漢時代の人、劉向(りゅうきょう)に焦点を当てることにした。

 劉向は、中国の書物史上、きわめて重要な人で、その人物と学問を日本の読書界に紹介しようではないか、というわけである。劉向は、漢の皇族の一員として生まれ、衰退してゆく前漢王朝を何とか立て直そうとした。国政の中枢に近い官僚であり、かつ経書に通じた大学者であった。重要な人物であるにもかかわらず、日本語で読めるこの人物の伝記はまだなかったから、なるべく詳しく書いたつもりである。

 しかし、劉向の人物紹介だけではつまらない。伝えたいことの核心は、中国の書物史にどれほど大きなインパクトを劉向が与えたのか、という点であった。彼は皇帝の命令を受けて、同僚たちとともに、皇室図書館の全蔵書を系統的に整理し、すべての書の定本を作り、皇帝に向けて解題を書き、目録を作ったのであるが、この一大事業が後世の書物の歴史に大きな影響を与え、「目録学」と称される独特な学問分野の基礎とされた。その意味で、劉向は「目録学の祖」なのである。本書では、その事業の詳細と意義に関してある程度の紙幅を割いた。

 中国の書物史は、その後さらに発展を遂げ、ついには四庫全書という大叢書を生み出したが、その基礎は劉向の「目録学」にある。そして、私の見るところ、この目録学は、歴史学やその他の方法論には回収も還元もできない、独自の視点と思想を持っている。その礎を置いたのが他ならぬ劉向、というわけである。本書を手にとっていただき、この目録学の世界に身をゆだねていただければ、というのが、著者の願望なのである。

 なお、私は「学退筆談」と題するブログ記事を数年前から書いており、目録学を含む中国古典の話題を様々提供している。別に「オープン・サイエンス」を気取るわけではないが、学問的な興味を新鮮なうちに、考えを記事にして公開してきた。本書とあわせ、本を愛する多くの方に読んでいただきたい。

学退筆談(中国古典に親しむ) https://xuetui.wordpress.com/



mokuroku
『目録学の誕生 劉向が生んだ書物文化』 古勝 隆一 著
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